罠
砦は半分朽ちかけていて、上階部分は外から見ても荒れ放題だ。
城壁は完全に崩れており、俺とリヴィアは難なく砦近くの茂みに身を隠すことが出来た。
砦の中からは人の気配と灯りが洩れてきている。
迷っている時間は無い。
「リヴィア、正面突破だ」
「おっけ~」
俺はリヴィアと目を合わせて頷くと、茂みから飛び出した。
「来い! 【聖騎士ランスロット】!」
リヴィアとの同時召喚。
光とともにランスロットの魂魄が俺の中に入り、身体能力が爆発的に高まる。
APが【188/400】に減少。
腰から剣を抜き放ちつつ、風のような速さで正面入口から砦内部に飛び込んだ。
「な、なんだ――げぶっ!?」
「ぐあっ!?」
入り口を見張っていた二人を俺とリヴィアが昏倒させる。
正面通路を駆け抜け、先にある大きな扉を蹴り開けた。
扉の先はメインフロアだった。
ぼろぼろの砦の床に、高級そうな絨毯が何枚も乱雑に敷き詰められている。
フロアには武装した野盗たちが二十人ほど。突然の乱入者に慌てて立ち上がる。
その奥に――
「……クララ!!」
絨毯の上に倒れ込んでいる彼女がいた。
すでに制服は剥ぎ取られ、下着だけを身に纏った状態だ。
気絶、もしくは眠らされているのか、反応がない。
倒れる彼女を見下ろすように配置された玉座には、ティルが歪んだ笑顔を浮かべて座っていた。
「くっく……。あっはっはっは! 本当に来たよ! ばっかじゃないの!?」
腹を抱えて笑い出す。
「このっ……!」
「リヴィア、待て」
駆け出そうとするリヴィアを止める。
罠があるかも知れない。
「ティル……。お前は、正真正銘のクズ野郎だよ。救えねぇ」
今まで生きてきて、こんな、脳が冷え切るような怒りを抱いた覚えはない。
「ひゅー。カッコいいー!」
ティルが囃し立てると、野盗たちも下卑た笑い声を上げた。
「お前と会話する気も、もう失せた」
俺がティルに向かって一歩踏み出すのと同時に、ティルが指をパチンと鳴らした。
瞬間――
――バシィ!!
「ぐあっ!?」
足元に、俺とリヴィアを中心とした大きな魔術陣が浮かび上がり、俺の身体に恐ろしいほどの重力が襲いかかった。
たまらず両膝をつく。
やはり罠か……!
『主……!』
俺の中からランスロットの魂魄が弾き出され、白銀色のカードに戻る。
「リヴィ……ア……!」
「……」
リヴィアは俺の目の前で片膝をついて重力に耐えていた。
幸い、彼女はカードに戻らないようだ。
「おぉー。さすが、超高級な『戦術級魔流体抑制陣』。魔力が高いほど効果が増すんだ。ずいぶん効くでしょ? とくに、そっちのゴーレムを壊した召喚獣にはたまらないだろうね」
ティルがリヴィアを指差す。
「親父にねだって買ってもらっただけあるなぁ。ルーン一個で庶民が一生掛かっても稼ぎきれない値段したけどね」
そう言って、心底愉快そうに手をたたいた。
「さて……。じゃあ、観客席も完成したことだし……。コージくんには、ぼく達のショーを観てて貰おうかな」
「へへ! 坊っちゃん! もういいんですか!?」
野盗たちが野蛮な歓声を上げる。
「げははは! おい、コイツもう前布にテント張ってやがるぞ!」
「お、おでも、がまんできない」
「おい、大ブタ、お前の順番は後だぜ。お前の後じゃ臭くて萎えちまうからなぁ!」
下卑た笑い声が上がる。
「やめ……ろ……!」
俺が辛うじて上げた声に、ティルは冷たく口元を歪める。
ティルは玉座に座ったまま手を伸ばし、クララの胸布の中をまさぐった。
「さぁて、この子が孕むのは、この中の誰の子かな?? 早いもの勝ち! よーいどん!」
ティルが言うと、野盗たちが自分の服を脱ぐのももどかしそうにクララの身体に群がった。




