夢の主と厄介事
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それから二、三日の間は、授業を受けたり、ギルドで簡単な依頼をこなしたり、ミアたちと会って近況報告をしたりする間に過ぎていった。
クララやティルの件をミアたちに話すと、ミアには「また、面倒事に首突っ込んで」と呆れられ、マールには心配され、リヒャルトは大いに称賛、という概ね予想通りな反応が返ってきた。
ミアたち〈魔術校〉の方では、校全体でクラス分けがされてクラス同士で成績で争うという、どこかで聞いたことのあるようなシステムのおかげで大忙しらしい。
なんでも、校長がかなりの変わり者なんだとか。
なんか、そっちの方が楽しそうだよな~。ずるい。
と、そんなある夜。
俺は不思議な夢を見た。
「――ったくよー。俺があんだけヒント出してやったのに、スルーしやがって」
真っ暗な空間。
眼の前に胡座をかいた男が俺に呆れるように言っている。
「……夢? っていうか誰?」
問いかけるのと同時に、その男の服装に見覚えがある事に気がつく。
紫色の滑らかなローブ。重厚な金の細工。
「……! あの、図書館で見た……!」
「気付くのがおせーよ。っていうか、俺のことすっかり忘れてただろ」
ジトッとした眼で俺を見る男に、小さく頭を下げる。
「す、すんません……。いや、でも全然意味がわからないんだけど? あなたは、何者ですか?」
「そこに名前が書いてあるだろ」
男が指差した先には、図書館で借りたあの謎の本――〈アラルガンド召喚獣総譜〉が落ちていた。
「アラルガンド……?」
俺が呟くと、男は小さく頷いた。
「俺が丹精込めて書いたこの本も、ずいぶんとボロボロになっちまったなぁ……」
アラルガンドは本を手に取り、懐かしそうな眼で一ページずつめくっていった。
長めの黒髪が頬に一筋落ちる。
その顔は端正に整っており、身に纏った『凄み』とでも言うような雰囲気も相まって、まさに年齢不詳といった感じだ。
「あなたは一体……? 召喚師なんですか?」
「ああ。あんまり長々と説明してる暇も無い。お前の周り……いや、大陸中で『潮流』が動こうとしている。お前は、お前の使命をまっとうしろ。俺の……大召喚師アラルガンドの、最後の召喚者としてな」
「――!? あんたが、俺をこの世界に!?」
俺が中腰になって問うと、アラルガンドはゆっくりと頷いた。
「……だが、俺だけがお前を呼んだわけじゃない。望んだのは、お前だ」
「俺が……望んだ?」
「そうだ。何か、この世界で成すべきことがあるんだろうな。それは、お前の過去に密接に繋がっている。……と思う。たぶん」
「最後テキトーかよ!?」
俺がずっこけると、アラルガンドは愉快そうに笑った。
「はっは。まぁ、そのうち分かるさ。それにしても、召喚された直後に【リヴァイアサン】を手懐けるとはね。さすがは俺の後継者。あのクッソ気難しい海神が、よくもまぁあんなに懐くもんだわ」
感慨深そうに頷くアラルガンド。
気難しい? あのリヴィアが?
俺にはまったく分からないが……。
「んじゃ、頑張れよ」
アラルガンドがそう言って立ち上がる。
それと同時に、視界が白くモヤがかっていった。
「あ……! 待ってくれよ!」
俺も立ち上がるが、すでにアラルガンドの姿もよく見えない。
「また会えるさ。それと……さっそく面倒事が押し寄せてきてるぜ」
どこからか響いてきた声を最後に、俺は不思議な夢から目覚めた。
勢いよくベッドから半身を起こす。
「……今のは……」
窓の木戸の隙間から月明かりが洩れている。まだ夜半だ。
「……そうだ!」
俺は慌ててベッドから出ると、〈アラルガンド召喚獣総譜〉を取り出そうと荷物置きに向かった。
しかしその途中で、すでに総譜が机の上に広げて置かれている事に気がつく。
「……アラルガンド……」
俺は開かれたそのページをゆっくりと手で撫でた。
ページにはどこかの地図らしき漠然とした絵と魔紋のようなマークが一つ。
すると、その地図の一地点に、見覚えのない筆跡で小さく【今ココ!】と書かれているのに気がついた。
「……! じゃあ、この魔紋は……!?」
そういえば、ランスロットを仲間に加えたときもレッジェーロの近くに魔紋が一つ付いていた。
「ということは……」
――コンコン。
俺が閃いた瞬間、俺の部屋のドアが小さくノックされた。
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