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第一次実技試験②


 すると、一人の生徒が歩み出た。


「うふふ。その木偶(でく)人形……破壊してしまってもよろしいのかしら?」


 〈蒼氷のアミスター〉だ。

 隣のミアが「げっ」と小さな声を上げる。

 自信満々のアミスターに、グレンは興味も無さそうに先を促した。


「好きにしろ。では、始め!」


 合図と共にゴーレムが再起動し、アミスターが詠唱を始める。

 ミアよりもだいぶ遅い詠唱だ。

 こっそりと〈観察〉を試みる。


【アミスター Lv:38

 HP:246/246

 マナ:372/372

 ジョブ:氷術師

 スキル:氷魔術 67 大詠唱 55 消費マナ低減 39

 装備品:静謐の長衣】


 なるほど、自身に満ちているのも頷けるレベルだ。

 その辺の冒険者の中だったら頭一つ抜けているだろう。

 制限時間が進み、呪文が完成に近づくごとにアミスターの周囲の空気が凍りつき始める。

 受験生たちから小さな感嘆が上がった。


「砕けるがいいわ! 〈アイシクルスピア〉!」


 完成された氷魔術が大きな氷柱(つらら)の槍となって地面からゴーレムに伸びる。

 高速で襲いかかった氷槍がゴーレムの胸の中心、プレートのやや下に突き刺さった。


『ゴゴッ……!』


 ゴーレムの巨体がほんの僅かに浮き上がるほどの衝撃。

 それでもその装甲には傷が付くことすら無かった。


「それまでッ!」


 同時に制限時間が終了する。


【測定終了 総ダメージ 422】


 ゴーレムの表示はダムラスの倍以上。

 受験生から歓声と悲壮感のあるため息が洩れた。


「なによコイツ! 硬すぎじゃなくて!? インチキだわ!」

「苦情は受け付けん。俺なら斬り落とせるからな。次ッ!」


 地団駄を踏むアミスターを冷静に切り捨て、グレンが次の生徒を呼ぶ。

 アミスターの強力な魔法を目の当たりにした生徒が二の次を踏んでいると、横のミアが前に進んだ。


「じゃあ、私がいこうかしら」


 ちらりとアミスターに挑発的な視線を送る。


「っ……! 見せてみなさい! 紫電のミア!」


 二人の間に火花が散る。


「おい。お前ら、これが入試だってこと忘れるなよ。では、開始」


 グレンの合図で、ミアが高速詠唱を始める。

 以前より詠唱も格段にキレが上がっていた。

 受験生の魔術師たちから「何だよあれ! 早すぎんだろ……!」などと、絶望的な声が上がる。


「〈サンダーアロー〉! 〈デュアルショット〉!」


 得意の魔術と弓術のコンビネーションだ。


「はぁぁぁッ!」


 射撃。同時に十本近くの雷弾が発射され、弧を描いて縦横からゴーレムに殺到した。

 以前は三本同時が限界だった〈デュアルショット〉の本数が、大幅に伸びている。


「エクセレント……! 腕を上げましたね!」


 隣でリヒャルトが歓喜の声を上げる。

 立て続けに発射される雷弾が雨のようにゴーレムに叩きつけられた。

 耳をつんざくスパーク音。

 閃光で視界が奪われる。


「よし。そこまでッ!」


 グレンの合図で音と光が収まった。


「はぁ、はぁ……。どうよ……!?」


 ミアが肩で息をしながらゴーレムの表示を見上げる。


【測定終了 総ダメージ 961】


「ふむ……。悪くない数値だ。よくやった」


 受験生から歓声とも悲鳴ともつかない声が沸く。


「ば、バカな……! 何かの間違いよ……。そんなはずが……」


 顔面を蒼白にして尻餅をついたアミスターを、ミアが得意気に見下ろしながら帰ってくる。


「では、続いてはわたくしが……」


 ミアとハイタッチを交わしながら、リヒャルトが交代でゴーレムの前に向かった。


「〈紫電のミア〉の仲間か……?」

「〈観察〉を……だめだ、成功しない。あいつもかなりレベルが高そうだぞ」


 受験生たちがヒソヒソと話す。

 ミアほどの知名度がないリヒャルトだが、その実力は……。


「ナンバー89。リヒャルトだな。では、スタート」


 合図と同時に、リヒャルトが両手を広げて詠唱を開始する。

 その詠唱は独特で、いくつもの呪文が折り重なって聞こえるような感じがした。

 リヒャルトの周りにバスケットボール大の火球がいくつも浮かび上がる。


「嘘だろ!? 〈ファイアボール〉は単発魔術だぜ!?」


 受験生の魔術師が驚愕の声を上げた。

 その火球の上にさらに炎の槍が二つ出現して、受験生から悲鳴が上がる。


「あれが、あいつのスキル〈重詠唱〉よ。滅多に見せないけどね」


 ミアが言う。

 渦巻く炎の魔力に、リヒャルトの身体が僅かに宙に浮かぶ。


「マーヴェラスに焼き尽くせ! 〈ファイアボール〉ア~ンド〈ファイアランス〉!」


 火球がゴーレムに殺到した。


「うわっ……」


 その熱波が俺のところまで届いて、頬をチリつかせる。

 直後、炎の槍が頭上から突き刺さる。

 リヴィアの〈炎尖牙〉が神々しいフォルムの大槍だとするとこちらはシンプルな鉄杭といったところだが、それでも爆発的な燃焼力で大気を焼いた。

 渦巻く炎が収まり始めるのと同時に、グレンが「そこまでッ!」と叫ぶ。

 リヒャルトは炎をバックに腕を胸の前に回して丁寧にお辞儀をしていた。


「ディ・モールト・グラッチェ。さて、わたくしの得点は?」


 装甲の端々が僅かに焦げ付いたゴーレムの表示を確認する。


【測定終了 総ダメージ 1299】


「ほう……。今年は粒ぞろいなようだな。よくやった」


 わっ、と歓声が上がる。

 ミアが悔しそうに舌打ちをした。


「単純な破壊力じゃやっぱり敵わないわね……」


 リヒャルトが得意気に俺たちの方に帰ってきた。


「余興はいかがだったかな?」

「あんたも、これで有名人になっちゃったわね」

「是非もないさ」


 リヒャルトが肩をすくめた。


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