第一次実技試験①
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「これより、第一次試験〈実技Ⅰ〉を実施する!」
鉄の胸当てをした剣士――騎士校の試験教官が、ぞろぞろと集まった俺たち受験生にそう叫ぶ。
場所は学園の大庭園。緑の芝生の広大なスペースだ。
ここに集められたのは、両校の戦闘職系の受験生だった。
マールのような支援職はまた違う試験方法らしく、彼女はさきほど別の場所に向かっていった。
庭園には筆記の時と違って、剣や鎧を装備した者が目立つ。
「何じゃありゃ……?」
俺は庭園の中央に鎮座する物体を見て、素っ頓狂な声を上げた。
大きな鉄板の塊だ。
よく見ると、人型になっているのがわかる。
ずんぐりとした手足に、鈍色の装甲。
「試験にゴーレムを使うなんて、さすがってところね」
隣でミアが呟く。
すると、教官が再び叫んだ。
「アッテンションッ! 俺が、試験教官を務めるグレンだ!」
庭中に響き渡るような声量だ。
歳は俺とさほど変わらないか、少し上くらいだろうか。
しかし、鍛え上げられた肉体と歴戦の雰囲気は俺とは比べるべくもない。
あと、割とイケメンだ。よし、敵認定。
俺がそんな事を考えているとはつゆ知らず、グレンは話を続けた。
「いいか! 〈実技Ⅰ〉では、お前たちの基礎的な攻撃力を試す! 方法は至ってシンプルだ。この〈改良型魔導ゴーレム〉に、一人三分間、好きなだけ攻撃すれば良い!」
グレンがゴーレムの脚を『ごん』っと叩くと、
『ウゴゴ……』
ゴーレムが不思議な低い駆動音を鳴らしながら、ゆっくりと立ち上がった。
胸の部分には黒いプレートがはめられていて、そこには現在『0』とだけ表示されている。
「三分間で与えた総ダメージがこのプレートに表示される。この数字がそのまま順位になるぞ。半分から下は失格だ」
グレンはニヤリと笑うと受験生たちを見渡した。
「噂では、魔術校では筆記を白紙で提出したバカがいるようだが……。もしこれで一位を取れれば、かろうじて一次試験を突破できるぞ」
受験生の間から笑いが起きる。
「そんなヤツいたのかよ!」
「救いようのねぇバカだな」
俺はいたたまれない気持ちで顔を伏せた。
「さて、順番は決まっていない。魔術校でも騎士校でも、誰から来てもいいぞ」
グレンが言うと、受験生の一人が勢いよく名乗りを上げた。
「おうっ! 俺から行くぜ!」
モンスターの毛皮を羽織った筋骨隆々の大男だ。
背中には何か巨大生物の骨で作った大斧が背負われている。
受験生というより、冒険者……いや、山賊といったおもむきだ。
「ナンバー14。ダムラスだ! いいかい?」
グレンを見下ろしながら威勢良く言う。
グレンは圧力の強いその視線を正面から冷ややかに受け止めていた。
手に持ったクリップボードに何やら書き込んでから口を開く。
「構わんよ。では、今から三分間だ。用意…………スタート!」
開始の合図とともにダムラスは猛然とゴーレムに襲いかかった。
「一位はこの俺様よッ! ぞりゃぁぁぁ!」
背中の大斧を背負投げのように叩きつける。
盛大な金属音が響くと同時に、ゴーレムのプレートに数字が刻まれた。
【制限時間 2:57 総ダメージ 12】
ダムラスが獣のような雄叫びを上げて斧を振り回す。
ゴーレムの装甲に大斧が次々と叩きつけられるが、その表面には傷一つつかない。
「そこまでっ!」
三分間が過ぎると同時に、ダムラスは斧を地面について肩で息をした。
「はぁ……はぁ……! どんなもんよ……!?」
【測定終了 総ダメージ 156】
「ふむ……。まぁ、そこそこだな。次っ!」
「ああ!? てめぇ! 〈東の餓狼〉ダムラス様を掴まえてそこそこたぁどういうことだよ!?」
グレンに適当に流されたダムラスがグレンの胸ぐらをつかんで食って掛かる。
と、同時にダムラスの巨体がぐるんと宙を舞った。
「お……!? うげっ!?」
盛大に大地に背中を打ちつけ、ダムラスが悶絶する。
受験生がざわついた。
グレンはダムラスの手首を軽く捻り上げただけにしか見えなかったのに、あの巨体が軽々と投げ飛ばされたのだ。
まるで、日本の合気道の達人のような身のこなしだった。
『ほう……。なかなか面白い剣士がいますね』
ランスロットが呟く。
グレンはダムラスに見向きもせず、
「次。早く来い!」
と受験生たちに向かって叫んだ。




