3,紹介
二人が戻ってくるまでの時間を有意義に過ごそうと、俺は席を立つが、クロアに睨まれた。仕方なく、俺はまた木製の椅子に座った。
せっかくの時間を無駄にするのもあれだから、自己紹介でもしょう。
俺の名はレイド・ジングリム。
この酒場にいるほとんどの奴等と同じ、冒険者だ。職業は戦士だが、昔のくせで盗賊の技術も持つ変わり種だ。まぁ、そのお陰で専門外の依頼も受ける事が出来るから良しとするか。
俺の右隣で黙々とケーキをつっついているのは、魔導士のクロア・ツェレ。
深緑の長い髪と、翡翠の瞳が特徴の小柄な少女だ。メンバー内では最年少だが、どんな時でも冷静な判断が出来る事から、路銀の管理を担当している。
普段から無口で無表情な為、何を考えているのかは俺達でも分からない。俺が知っている事といえば、無類の甘党である事くらい。
今も滅多に見る事の出来ない笑顔でケーキを味わっている。この時だけは歳相応の少女になるのがクロアだ。
武器屋に行っている為、今はいないが、町に着く前に何度もポールアームで俺に切りかかってきたのは、吟遊詩人のナーダ・アルマン。
蒼く、長い髪を一本の三編みに結っている長身の青年。クロアとは違い、いつも微笑んでいるような顔をしている。詩人なのに、楽器を奏でるよりも、ポールアームを振り回す事が多いのが日課だそうだ。
依頼での交渉を担当するが、会話術に長けている為、買い物での値切り担当でもある。
最後に、ナーダに付き添って、武器屋に行った、武道家のキルギス・ツェレ。
薄紫が混ざった緑の髪と、翡翠の瞳の青年。クロアとは瞳の色以外似ていないが、れっきとした兄妹である。冷静沈着なクロアとは違い、感性豊かなキルは実年齢より幼く見られるが、本人は気にしていない。温厚な性格なので、モンスターとの戦闘や依頼の時以外はその拳を使わない。お人よしともいうが、そこがキルの良いところだ。
しかし、極度の迷子症な為、目が離せない。今回はナーダの付き添いで出掛けたが、まさか、二人が帰って来ないのは……。考えるのを止めておこう。本当だったら困る。
そんなマイナス思考を打ち切ると、クロアが席を立った。
「……キルが迷子になった」
俺は何で分かるのかは、あえて聞かない事にした。




