2,着いて早々
「……お金が無くなってる…」
焦げ茶の小さな革袋を裏返し、深緑の長い髪を持つ少女は言った。普段は驚く事が滅多に無い彼女もさすがに驚いているようだ。
「落としたのですか?」
「ううん……。…酒場に入る前は確認した時はちゃんとあったのに……、今見たら……」
少女、クロアが言い終わる前にナーダとキルの視線が何故か俺に向けられた。
「言っとくが、俺が盗ったならここにいないぞ」
「本当ですか?」
「レイド、嘘はドロボーの始まりだよ」
「勝手に断定すんな。それに、泥棒は盗るが仕事だ」
「……」
「クロア、お前信じてないだろ」
「しかし、これの支払いどうしますか?」
俺の言葉を無視して、ナーダは自分達の前に置かれたテーブルの上に置かれているモノを指差した。
それは5センチ平方くらいの小さな紙である。この紙自体には何の問題も無いんだが、紙にかかれた文字と数字が問題なのだ。
「このままだと怒られるよね?」
一人、オレンジジュースをストローで飲みながらキルは心配そうに言うが、この数字を作った元凶は俺とお前である事にいい加減気付いて欲しい。
「あー、逃げ……っが!!」
「仕方ありません。レイドの剣を担保にしてお金を作りましょう」
「……ゴメンナサイ」
「クロアのせいじゃないから、気にしちゃ駄目だよ」
クロアの放った氷の塊を見事頭上から喰らった俺が痛みをこらえている間に問題解決。
しかし、よく考えれば、剣の無い俺が一緒に依頼にいっても役立たずだ。今回はサボれる!
「そうわけなので、レイドの剣は武器屋に売ってきていいですか?」
「あぁ、いいぞ。ほら」
「……はい」
素直にナーダに剣を渡すと、その代わりにと、クロアが一本の剣を俺にくれた。
「何で魔導士のお前が剣を?」
「……護身用のストック」
「へぇー、護身用のストックにしては業物だな…って、お前剣持ってたんだ」
「……うん」
どうやら、サボる事は無理のようだ。
「それでは、今すぐ売ってきますね」
そういって、ナーダとキルは酒場を出た。




