↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたの色が見えなくなるまで~名家の令嬢は、その気持ちを恋とは認めてあげません~  作者: 黎明 あかり
ガーデンパーティー編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/55

第48話 橙の目的

 澪は真人とパーティー会場の階層に戻ってきた。

 パーティー会場からエントランスへ直通のエレベーターに乗り込もうとしている夢乃の後ろ姿が見える。

 エレベーターの中には夢乃をエスコートしている腕が見えるだけだ。


「夢乃がいる」


「追いかけましょう。ホテルから出られると追いかけられないわ」


 夢乃が乗り込むとエレベーターの扉が閉まった。

 すぐに隣のエレベーターが到着し、真人と共に澪は乗り込んだ。



 ◇



 来賓用のエントランス。

 夢乃が腕を取って歩いていたのは、グレーのスーツを着た来栖アキラだった。


「来栖さま、朝倉さま、もうお帰りですの?」


 エレベーターを降りた澪は2人に背後から声をかけた。

 2人が歩みを止め、振り返る。


 笑みを張り付けた来栖と、真人の姿をみて目を輝かせる夢乃。


「まぁ! 真人さまったら、お見送りに来てくださったのですか?」


 夢乃は来栖の腕を離し、真人へと飛びつかんばかりに駆けてきた。


「ちょ、夢乃離れろ!」


 真人が腕に纏わりついてきた夢乃を振り払うように腕を動かしている。

 澪から見ても、本気で振り払おうとしていないのがわかる。

 相手が女性だからか、はたまた上流階級の相手だからか。


 澪は横目で2人を捉え、次に来栖を見据えた。


「もうお帰りですの? 綾瀬さまはよろしくて?」


「えぇ。一緒には来ましたが俺にも仕事がありますので」


 来栖が笑みを絶やさずに答える。


「お仕事ですか、それは終わらせることができましたか?」


 澪はにっこりと挑戦的に笑った。

 わずかに来栖の目が細められた。


 すぐに仮面のような笑顔を張り付けて一歩近づいてくる。


「そうですね、半分は。といったところでしょうか」


 また一歩近づいてくる。


「でも、久世様が今ここに来てくれたのでもう少し仕事ができそうです」


 来栖が澪の前で立ち止まった。

 淡いオレンジの関心が澪に向けられる。


「来栖、テメェ離れろ」


 真人が横から睨みを利かせてきても、ものともせずに来栖は澪を見つめるだけだ。


「真人さま、あちらは大切なお話をされているのですわ」


 夢乃が顔を自身の方へと向けようと、真人の頬を両手で挟むのが横目で見えた。


「よそ見とは、余裕がありますね」


 来栖の声に視線を戻す。

 来栖の右手が澪の顔の方へと伸ばされていた。


 すぐに左手でそれを制す。


 ——パチッ


 静電気が左手に走り、思わず手を引いた。


「やはり、異能をお持ちだったのですね」


 満足そうに来栖の口角が上がった。


「どういうことです?」


「俺たちが探していた人ってことですよ」


「静電気……では、ないということですか」


 以前、来栖から名刺を受け取ったときにも手に走った静電気を思い出す。

 その回答に満足をしたのか、来栖は不敵に笑うだけだった。


 その横からクスクスと笑う夢乃の声が耳に障る。


「やはり、素敵ですわ…。ねえ、久世さま? その力をわたくしにくださいません?」


 真人から手を離した夢乃が、一歩澪へ踏み出す。

 黄緑と水色の好奇心が揺れていた。


「朝倉さん、急に言うと久世様が困られますよ」


 来栖が腕を差し出せば、夢乃がその腕を取った。


 夢乃から解放された真人は澪の一歩斜め前に立ち塞がる。


「あら、いいじゃないですか。まずは……真人さまからわたくしにくださいませんこと?」


 大きな瞳で夢乃が真人を上目遣いで見つめる。

 そこにはオレンジの期待の色。


 夢乃が本気で真人を手に入れようとしているのが澪にはわかった。


「俺はお前につく気はねぇ」


 真人の紫色の嫌悪感が夢乃へと向けられている。


 ――よかった……。


 真人が久世家から離れないことにホッとしている自分。

 そのことに驚く自分が共存する。


 ――今はどうでもいいわ。


 自分のことなど、後回しだ。

 邪魔な思考と感情を追いやり、夢乃を見た。


 もう“追憶”を使うことは難しいだろう。

 目を使うことすらも限界が来ているのがわかる。


 それでも……私は久世なのだ。


 ゆっくりと目へ意識を集中させる。


 ——感情、見つけた。


 オレンジ色の期待に意識を重ねていく。



 ◇



 夢乃を見据える来栖がいる。

『朝倉さん、損はさせませんよ』

『あなたのお店も、野倉を使えばさらに大きくなりますしね』

『久世に取って代わることも簡単かと』



 ◇



 急に意識が戻された。


 目の前にはロイヤルパープルのスーツ。

 真人の大きな背中だ。


“追憶”を止められてしまった。


「完璧な動きですね、護衛さんは」


 来栖が軽く笑った。


「もう少し……、観察しておきたいですが。それは今日では無いようですし」


 来栖が軽く一礼すると、ホテルの外へと向かっていく。


「またお会いしましょう、真人さま」


 甘く弾む夢乃の声がエントランスに残った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。