食堂
『また会えるのを、楽しみにしてるよ』
ぎこちない笑顔のウキハが、境界の外側から、握手を求めてくる。
握手を返そうとして、その笑顔が遠ざかり、ふっと意識が浮上した。
──ウキハ……。
のそりと身を起こして、乾いた目で周りを見た。
水進船の部屋に寝かされていたらしい。
窓の外に視線を向けると、夜の水面が見えた。
近くに水に囲まれた小さな地面と建物があった。
カンナに着いた時、遠目に見えていた場所の一つかもしれない。
ぼんやりしていると、部屋の扉がノックされて、目を瞬いた。
返事をしながら扉を開けに行く。
「あ、ロラン。起こしちゃった?」
扉の外にはサラサとエルドが立っていた。
「いえ。起きてました。どうしたんですか?」
「一緒にお夕飯食べたいなーって思って! この水進船凄いんだよ? 遊べる場所が沢山あって」
捲し立てるように話されて、少し仰け反ってしまう。
「そう……なんですね?」
「そうそう。だから一緒に行こー!」
強引に腕を掴まれて、部屋から連れ出された。
サラサに食堂へと連れて行かれながら、後ろを振り返ると、呆れたような表情のエルドが付いてきていた。
サラサの言葉に相槌を打ちながら、目線で部屋に寝かせてくれたお礼をすると、気にするなと面倒そうに身振りで返された。
夕食を持って食堂の席に座ると、サラサがまたも話し出す。
「船の中でも泳げる場所があってね、冷たいのかなって思ってたのに、あったかくてびっくりしたんだー!」
彼女の言葉に首を傾げる。
「それって、温泉とかですか?」
「違うみたい。温泉よりは冷たくて、温水遊泳室って書いてあったー」
サラサの話に頷きながら、夕飯を食べる。
彼女は他にも水進船内のことを色々話してくれた。
音楽を聴きながらお酒を飲める場所や、景品を賭けて遊べる場所、物語を演じる人たちを見ることができる場所、行商人のお店。
他にも続きそうだったけど、一旦満足した様子のサラサに向かって口を開く。
「そう言えば、コハクさんはどこにいるんですか?」
「コハク? なんか、行商の人と仲良くなってたよー。多分、今もその人たちといるんじゃないかな?」
なんで姿が見えないのかが分かって、安堵の息をついた。
「そーだ、ねえロラン。私、行商の人に聞いたんだよね。世界の果てについて!」
「世界の果て……?」
「そう!」
首を傾げると、サラサが力強く頷いてきた。
「水進船の上で、遠目に高い山が見えなかった?」
高い山は沢山あったけど、どの山を指してるのか分からない。
顎に指を添えると、サラサが話しを続けた。
「一番高い山なんだけど、そっちの方からくる人っていないらしくて。だから世界の果てって呼ばれてるんだってさー。なんか、凄く心躍らない?」
──世界の果てからは誰もこない。だったらそこに向かえば海が見つかるかもしれない!
心が浮き立ち、サラサの方へと身を乗り出して、何度も頷いた。
「だよねー! そこに行けば海が見つかりそうでしょ!?」
「はい! サラサ、ありがとうございます!」
僕とサラサが盛り上がる横で、エルドは顔を顰めながら窓の外を見て、ため息をついていた。




