仲直り
どのくらい時間がたったのか、朝の涼しさが昼の暑さに変わり、やっと物陰から動き出した。
ウキハとミコはもうどこにもいなかった。
水進船は何事もなく進んでいるのに、動けなくなりそうだった。
その場を振り切るように、船内に向かおうと踵を返して、船内から出てくる赤髪を目にした途端、呼吸が止まった。
知らぬ間に目からとめどなく涙が溢れ出す。
「っ……エルドッ」
「な……」
たじろぐエルドに構わず、彼の腕を掴んだ。
「……友達がっ……いなくなるのは、辛いですッ」
「んだよ、泣くなよ」
彼の言葉が耳に入らない。
「お願いですから……一緒にいてください……っ」
舌打ちが聞こえて、肩が揺れた。
「分かった!」
エルドの腕を掴んでいた手が引き剥がされて、ますます涙が止まらなくなった。
「分かったって言ってんだろーが! 泣くなよッ」
怒鳴られて、涙が止まった。
喉を鳴らしながら、目を擦る。
「でも……他の人探せって。もう僕と海を探してくれないって」
「あのな。俺にも目的があんだよ」
エルドが眉間を揉んだ。
「知ってます。……エルドの名前を世界に刻みたいんですよね……。僕は海を見つけるまで世界を旅するんです。だから、エルドの名前も世界に刻めます」
どうにか納得して貰えないかと言い募ると、彼が自身の髪を乱暴に乱して叫ぶ。
「あーっ、やめろ! そーじゃねー! お前の親父だ親父! 死ぬまで芽吹かせてやらなかったら、共倒れだろーが!」
──共倒れ。父さんに神木として芽吹いて欲しい。だけど、海を見付けるまでは、父さんと離れたくない……。
「父さんは……多分怒らないと思うんです。旅が好きな人だったから。だから、何年かかっても父さんが見たがっていた海に連れて行きたいんです」
エルドが額を押さえて深いため息をつく。
「……しゃーねぇ。お前の親父だからな……好きにしろや。めんどくせーし、これ以上は言わねー」
「ありがとう……ございます」
ぎこちない笑みが口元に浮かぶ。
夜あまり眠れなかったせいか、猛烈な眠気が襲ってきて、そのまま体が傾き、意識が飛んだ。




