同行者
僕の声に気付かず、街の方に出て行く二人組を追った。
「ちょっと、待って、ください!」
目前のシュンの背中を叩こうとした瞬間。
彼が流れる動きで横に逸れ、いつの間にか見下ろされていた。
「……何か?」
一瞬の突き刺されるような視線に息を飲んだ。
けれど、その気配は直ぐに霧散して、僕は手を胸元に戻した。
「えっと、突然すみません。先程の話が聞こえてしまって。今から、シオンの地に向かうんですか?」
シュンの肩口から、ゲンヤが顔を覗かせ、こちらを見てきた。
「どなたですか? いつから聞いていたんです? ちょっとあそこで話しましょう」
早口で言われ、目を瞬きながら、ゲンヤが指差す方向に視線を向けた。
そこには小さな食堂が建っていた。
◆◆◆
名前を名乗る間もなく、あれよあれよと食堂まで連れてこられてしまった。
「さて、君はここの人では無さそうですが、何が目的です?」
喉を潤していたゲンヤが、湯呑みをテーブルに置いて、細い目を更に細めて聞いてきた。
「目的? いえ、あの、僕はシオンに行きたくて」
何故だか、悪い事をしている気分になり、少し背中が仰け反った。
二人は顔を見合わせて、ゲンヤの雰囲気が見るからに和らいだ。
「そうですか。ですが、シュンは私を守るので手一杯だと思うんですよね。神木守ならともかく」
断られたら堪らない。
慌てて話そうとした途端。
「ゲンヤ。彼は神木守なんじゃないか?」
「……そうなんですか?」
それまで黙っていたシュンの言葉に、ゲンヤがこちらを見て聞いてきた。
「そうです。だから、どうかシオンまで同行させて貰えませんか?」
僕は頷いたあと、二人から目を逸らさずに頼み込む。
「力は何系か聞いても?」
「治癒系です」
ゲンヤとシュンに肩を掴まれた。
「採用です!」
「万が一、俺が腐怪にやられたら頼む」
二人の圧に瞬きを繰り返し、胸元を握り締める。
「ところで貴方のお名前は?」
「あ、ロランといいます。よろしくお願いします」
僕の肩を掴んだまま、二人は顔を見合わせた。
「それを早く言ってください……」
シュンは僕の肩から手を離してくれたのに、ゲンヤの手の力は逆に痛いほど強くなった。
「道中、色々聞きたいことがあります。いいですよね?」
彼の細い目が見開かれていて、背筋に寒気が走る。
「答えられることであれば、はい」
ようやくゲンヤの手が離れ、肩の力が抜ける。
椅子に座り直したゲンヤとシュンの自己紹介を受けた後、出発は明日だということで、僕は街で旅の支度を整えた後、神木守堂へと戻った。




