商人と護衛
神木守堂だけだと護衛を見つけるのは難しいのかもしれないと、ニライの地図を写させて貰った翌日から街に出てみた。
街の中で、宿屋に泊まっているような人に当たってみても、数日経た今日までこれと言った成果がなく。
アレースとは別方向の柵から出て行く商人と護衛の人たちを見ては、旅立てない自分に肩を落としていた。
柵の外、ニライの神木の境界も、アレースの神木の境界と同じように、腐敗の地と浄化されている地の間で、今日も変わらず揺れている。
新しい道ができそうな気配はない。
僕も、父さんと同じように、この力で腐怪の腐敗を浄化できれば良かったのに。
いや、できる気もするけど、やったら取り返しがつかないことになりそう。
包帯を外した左手を、陽の光に翳す。
人差し指と中指にあった斑模様は、綺麗さっぱり治っている。
僕の治癒が、浄化型治癒なら良かったとも思うけど、これはこれで使い方さえ間違えなければ、エディ君を助けたときみたいに助けることができるし。
悲観する必要はないんだけど。
「あー、ぐるぐる考えてても仕方ない!」
両頬を軽く叩く。
よし、神木守堂に戻ろう。やっぱり、街より堂内で探した方が、見つかる気がする。
腐敗の地から目を背け、街の中心地に向かって歩き出した。
◆◆◆
神木守堂に入った途端、帳場の前で二人の男性が話し込んでいるのが目に飛び込んできた。
「この地図を見て下さいよ。これは革命ですよ? 早くロランさんという方を探さないと」
「ゲンヤ、少し落ち着いたらどうだ? 周りからの視線が痛い」
背中に大きな鞄を背負った、商人風の男性の口から、自身の名前が聞こえたことで、眉根を寄せてしまう。
行き交う人に紛れて、二人組の会話が聞こえる位置の休憩場所に座り、耳をそばだてた。
「シュン。貴方はどうしてそう、落ち着いて居られるんですか! ティエラの神木なんて、一度も聞いたことないんですよ? それなのに、ここに地図が存在する! 利益独占市場の未来が見えます!」
「落ち着け。それは夢だ。どうやって行けばいいか分からないだろう。どこにある神木なのかも分からない。二人だと限界があることを思い出せ」
腰に武器を携えた護衛風の男性が、興奮気味に難しい話をしているゲンヤの肩を叩いている。
「ともかく、ロランさんを見つけて、話を聞いて、一旦シオンの地に帰りますよ!」
シオンの神木……。ニライから一番遠くに書かれていた場所だ。もしかしたら、海のことを何か知っているかも。
二人が出入口へと向かって行く。
「ま、待ってください!」
勢い良く椅子から立ち上がり、二人を引き留めるため片腕を伸ばした。




