↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
遺灰が芽吹く世界で──神木と腐敗の世界で、海を探して──  作者: ヒトミ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/71

砂の橋

腐敗の地に出る寸前。


僕たちは小さな岩場に腰掛け、四人で円になり、コハクが広げたカンナへの地図に視線を落としていた。


「何度か、行商人の砂進船(さしんせん)に紛れて他の地まで行ったことがあるけど、今思うとあれは遠回りだった。一直線に歩けば、何日かで砂漠を抜けられる」


なんて事ない様子で話すコハクに、微妙な視線を向けてしまう。


「……何度か? 砂進船……?」

「砂の上を進む乗り物。それはどうでも良くて。この地図古いし、カンナからくる人も今はいないから、もしかしたら地形が変わってるかも知れないんだよね」


コハクが腐敗の地に顔を向ける。


砂の世界に細く固められた道が跡として残っている。


砂進船が通った跡なのかもしれない。


「地形が変わっててもかんけーねぇ。場所が分かったんだ。後はカンナに向かうだけだろーが」


腕を組んで地図を見ていたエルドが、片手で肩を解して僕たちを見回した。


「うんうん。私もそう思う! 地図なんて目安だよ。昔と今の地形を比べるのも面白そう!」


サラサが飛び跳ねるように立ち上がり、彼女を見上げるコハクに訴えた。


「とりあえず、地図に沿ってカンナに向かえば、間違いはないと思います。そろそろ行きますか……?」


カンナからくる人が居ないということに、引っ掛かりを覚えたけど、向かってみないことには、何が起こっているのかも分からない。


コハクが頷いて、地図を片付けるのを見ながら、僕は小さく眉を寄せて立ち上がった。


◆◆◆


見渡す限り一面が腐敗した砂の大地。


ツキカに着くまでと同じように、暑い時間を避けて移動した。


時おり砂の中から飛び出してくる小さな腐怪や、遠くを通り過ぎていく大きな腐怪。


食べることができる腐怪を見つけると、エルドが突っ込んでいき、襲ってこない腐怪を見つけると、サラサが突っ込んで行こうとした。


エルドの動きは止められないけど、サラサの場合は三人で協力して止めに入った。


コハクはコハクで、間近に腐怪を見るのは初めてだったのか、腐りながら動いている腐怪を見て「これを生き物だとは認めない!」と叫んでいたのが印象的だった。


砂の大地を数日旅して、砂が川みたいに流れている場所で、僕は少し遠い目になっていた。


流れる砂の上にできている、自然の砂の橋。


橋の傍を群れで飛んでいる小鳥の腐怪が、橋を渡る僕たちに向かって襲いかかってきていた。


「寄ってくんな!」


コハクが舞うように手を動かすと、彼の手から微かな光が広がり、小鳥に当たる。


すると、彼を突つこうとしていた小鳥の動きが途端に鈍った。


「ちょっとエルド! さん! 見てないで助けてくんない!?」


僕の傍で小鳥を炎で浄化していたエルドが「めんどくせぇ」と呟く。


「助けて欲しけりゃ、力を貸せ」


エルドがコハクに向けて、炎を出してない方の指で合図を送ると、コハクが待ってましたと言うように、懐から笛を取り出し、奏で始める。


ツキカの遺品とは別の笛だ。


ちなみに、なぜかサラサは小鳥と一緒に空を飛んでいる。多分、浮遊輪で。


ツキカで聴いた曲とは違う、戦意を鼓舞するような音色が響くと同時に、エルドの体が淡い光で覆われる。


すると、エルドが発している炎の勢いが強まった。


「はっ……上等じゃねーか!」


荒く笑ったエルドが、強まった炎を纏う手を振りかぶり、周囲を飛び回る小鳥に向かって一閃する。


横薙ぎに広がった炎が、次々と小鳥を呑み込み浄化していく。


──今日の夕飯は鶏鍋になりそうかも……。


襲ってきていた小鳥を浄化し終えて、満足げに肉を拾い集めているエルドを見て、場違いにもそんな感想が浮かんだ。


近くに腐怪がいなくなって安堵した様子のコハクと、肉の袋を担いでいるエルドと一緒に、砂の橋を渡り終える頃、サラサがフラフラと宙を漂い、やっと僕たちの元に降りてきた。


彼女が砂の川に落ちなくて本当に良かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。