Reappearance
「おい、来たようだぜ」
「そやな」
しかし、ドアの向こうから現れたのは金髪の人物ではなかった。
「……ヴォルフ?」
「あれ、何でな?」
狼人間が現れ、一同の頭上に疑問符が浮かぶ。
「え……あ、私です」
「私ですて、お前はヴォルフやろ?」
「いいえ、セネです」
目の前のヴォルフらしき人物は自らをセネと名乗る。
「おいおい、セネ。お前らしくねえ、つまらないジョークだな」
「その……これから話しますが、私はセネなんです」
「何な、さっぱり分かりやんやん。ヴォルフは退任になったはずやで?」
「そうだ、理由は分からねえけどいきなり辞めたんだよ。ガモット、お前も知らねえのか?」
「知らんわ。わえがやったんは、お前とセネの人事だけやご」
「つーか、ヴォルフはおれたちの目の前でハセガワとかいう男になっただろ?何で今、ここにこうしているんだ?」
「そやったわ。ヴォルフは居らんようなって、ハセガワが出てきたんやったわ」
「セーラはその過程を知らないですけど、ハセガワさんってヴォルフさん?」
「セーラは見てなかったし知らなかったな。ヴォルフの中からハセガワは出てきたんだよ」
「分かりました。それも含めてお話します。その前にもう一人、事務室に新しい仲間が加わることになりました」
狼人間はドアを大きく開け、背後から新しく加入する人物を呼んだ。
「なっ……そ、そいつは!」
「あのときの仮面やんけ!」
その人物は二人を返り討ちにした仮面の人物、かめんちゃんだった。
「あ、かめんちゃん……いえ、あの人は……」
「セーラ、あの後はどうなったんだ?」
「ジェイドが倒して、消えたはずです」
「そやけど、こうして目の前に居るが!?」
「仮面の下の人物が消えて仮面だけ残って……多分、仮面の下は別の人のはず……」
「そしたら、そいつは誰だ?」
「……ミステリオ・マスカレドです」
仮面の人物がゆっくりと名乗り出る。
「あのときの仮面の名前じゃねえか。おい、お前の本名を言え」
「ちゅーか、顔見せえよ」
「本名は……長谷川です」
「「ハセガワ!?」」
意外な正体に驚くガモットとヴァーラ。
「ハセガワ?何でお前が?」
「ハセガワさんは軍でお世話になります」
「どういうこっちゃ?」
「ハセガワさん、こちらの世界に身寄りがないものですから」
「そらそやわ。そやけど、軍によう入れたな」
「そこなんですが、ミステリオさんの籍を使います。ちょうど、仮面も転がってましたので被っていただきました」
「……否応なしに被せられました、力ずくで」
仮面の長谷川が俯いたまま呟く。
「ミステリオさん、登録はしていても軍に姿を見せなかったようでして。なので、ハセガワさんにはミステリオさんの名前を使って、ミステリオさんとして軍でお仕事をしていただきます」
「待てよ、そんなのが許されるのか?」
「大丈夫かと思います。ミステリオさんは入隊のときに素顔の写真を提出しなかったようでして、軍が把握している情報は仮面の人物ということだけだそうです」
「軍もいい加減だな」
「それやったら、ハセガワ。事務室では仮面脱いだらええやん?」
「それが……」
「素顔のままですと言葉が分からないようです」
「そうなんか?」
「ああ。他の人間の言葉が宇宙人みたいだったのが、日本語に聞こえるようになった。仮面の目を通して見ると、文字もスラスラ読める」
「不思議な仮面だな」
「あの仮面の人物の能力とかが記憶されとるんちゃうか?」
「脱いだら言葉の問題もありますし、ハセガワさんが部外者とバレてしまいますので鍵は私が預かってます。お食事のときだけ外しますね」
仮面の顎の下は真新しい南京錠によって脱げないよう細工が施されていた。
「食事のときだけって、部屋では脱がせてやれよ」
「そうしましたら、私と会話が出来なくなります」
「どういうことだ?」
「ハセガワさんは私と一緒に住むことになりました」
「なっ、同棲か!?」
「はい。ミステリオさんが住んでいたところに住まわせようとも思ったのですが、住所が不明だったそうです。住むところがなければ私のところが良いかと思いまして」
「しかし、男女が……あ!」
「ヴァーラさん、私は男です」
「忘れてたぜ」
「私もこんな姿ですし、間違いも尚更ないかと思います」
「そうだよ、その姿!ハセガワのことで忘れてたけど、何でお前が狼の姿なんだよ!?」
「いっちゃん訊きたいことやご。何でな?」
「おれたちと別れた後、一体何があったんだ?」
一同の最大の関心事に、セネはゆっくりと口を開く。




