Funcy cuppa
部屋にはガモットの部下以外に、セーラ、ヴァーラ、ジェイド、アイーシャ、長谷川、ヘイネの6人が会することになった。
「人口密度が高いな」
「そうっすね、ハセガワさん」
「気付いたんだけど、全員が未婚なんだよな」
「ヴァーラさん、何言ってるんですか!」
「いや、なんとなく。気付いちゃって」
「そういえば、みんな結婚してないっすね」
「お前はメス猫も範囲内なんだろ?」
「猫はないっすよ」
「だよな、いくらお前でも猫はないよな」
「虎や豹がタイプっす。猫は小さいじゃないっすか」
「前言撤回だ、馬鹿野郎」
「前から気になってたんですけど、訊いちゃっていいですか?」
「何だ、セーラ?」
「ヴァーラさんって、男性と女性、どっちが好きなんですか?」
「今、ここで訊いちゃう、それ?いや、訊いてもいいんだけどよ、おれも答えられないんだわ」
「どういうことですか?」
「いや、おれって自分の性別もよく認めてないから、他人の性別どころじゃないんだ」
「そ、そうなんですか……その、訊いちゃってスミマセン」
「謝んなくていいよ。セーラは好きなやつとかいるのか?」
「えー、セーラですか?うーん……バトルモンクたちは既婚者だらけで年齢も合わないし……」
「同期とかでいないのか?ほら、マットとか?」
「マットはないです」
「即答だな、おい」
「セーラ、チャラいのは大嫌いなんです」
「分かる。おれも嫌いだから」
「マットくんもカッコいい顔してるんすけどね」
「お前の素顔ほどじゃないさ」
「それって、サラッと誉めてるんすか?」
「ジェイドも久しぶりだよね」
「そうっすね。前の出陣以来っす」
「何でいつも丁寧語なのー?セーラのほうがランクも歳も下なのに」
「いや、おれ、この喋り方が馴染んじゃって、タメ語とか今更キツいっす」
「そうなんだねー。さっき、ヴァーラさんが言ってたけど、カッコいいのに何で虎の頭なの?」
「おれはこういう顔なんすよ」
「はじめて会ったときは黒猫だったじゃん?」
「黒猫じゃないっすよ、黒豹っす」
「被るのって、自分で作ってるの?」
「そうっすよ。倒した相手の体で作ってるっす」
「そうなんだー」
「セーラ、そこらへんで止めとけ。こいつ、その話になると長く深くなる」
「そうなんですね。じゃあ、ここらへんで」
「酷いっすよ、ヴァーラさん」
「というよりよ、ハセガワ。お前も何か喋れ」
「そうっすよ、おれたちだけ身内の話をしていても申し訳ないっす」
「え、喋るって何をだ?何を喋ればいい?」
「お前、ガモットとは言え喋るくせに、おれたちとは喋らないのな」
「せっかく、ハセガワさんの言葉が分かるようになったんすよ?」
「いや、俺は……」
「ハセガワさん、ですか?ハセガワさんって、人見知りなんですね」
「てか、セーラ。お前もハセガワの言葉が分かるのか?」
「分かりますよ。何故か分かりませんけど」
「セーラさんも前世は一緒だったんだべな」
「そうなのか?ええと、アイーシャさん」
「んだあよ」
「というか、アイーシャさんも喋らないっすね」
「駄弁りは好きでねえだ。あだしは聞き手さ徹するだあよ」
「気付いたんすけど、ヴァーラさんとハセガワさんの話し方って似てるっすね」
「ジェイド、それは言っちゃいけねえな」
「駄目だよー」
「流石に駄目だっぺな」
「な、何すか、おれ、何か悪いこと言ったっすか?」
「ジェイド、謝れ」
「謝んなよ」
「ごめんなさいだっぺよ」
「何ですか、この流れ……ええと、ごめんなさい」
「これでよし」
「解決だね」
「めでたしめでたしだどなえ」
「ところで、おれも敢えて触れてないんすけど、ヘイネさんがおれの頭をずっと撫でてるんすよ」
「猫ちゃん、可愛いねぇ」
「お前のことを猫だと思ってるんだな」
「猫じゃないっすよ、虎っす!」
「二足歩行の虎なんか見たことねえよ」
「ちょっ、ちょっとぉ……にゃふぅ……!」
「喉を撫でられて感じてんじゃねえっての」
「一番気持ちいいところなんす……ああ、ヘイネさんはテクニシャンっすね」
「大馬鹿野郎めが」
「猫ちゃん、あたしの膝に座りなしゃい」
「えっ、ちょっと……それは」
「いいじゃん、猫ちゃんやってやれよ」
「膝枕ですねー」
「たっ、助けて!ハセガワさん!」
「なんで俺なんだ」
「というよりよ、ハセガワのためにおれたちは来たんだから、本当に何か喋れよ」
「そうだよ、喋りなよー」
「だから、喋るって何をだ?」
「ハセガワさん、ニホンというところにいたときはどんな感じだったんすか?」
「凄い体勢で切り出したな、ジェイド」
「仕方ないっすよ。ヘイネさんってば、おれを離してくれないんす」
「婆さんに膝枕されてるって、何ともいえねえ光景だな」
「俺が日本にいたとき……未だにここが日本どころか、俺がいた世界とは違うってことに合点が行っていないんだがな。何だろうか、アミューズメントパークにでも居て、時間が来れば家に帰る心地だな」
「アミューズメントパーク?何それ?セーラにはよく分かんないかなー」
「所々で外来語が日常会話に使われてるのに、アミューズメントパークは通じないのか。まあ、擬似的な空間で、それがかなり現実世界に近いって感じだな」
「つまり、ハセガワさんにはおれたちの世界が限りなくハセガワさんの世界に近いってことっすね?」
「言うなれば、そんな感じだ。今のところ、日本との大きな違いにビックリしていないし」
「ガモットの天球儀の魔法にも眉一つ動かさなかったしな」
「ああ。あれも日本のアミューズメントパークに行けば見られる。この世界らしいものに出会してないから、言葉にも困る」
「ニホンってどんな感じだったのー?」
「そうだな。俺が居たところは学生街でな」
「学生街?ということは大学校とかっすか?ハセガワさんって頭良いんすね!」
「最後の模試は偏差値47で、専修と東海の法学部落ちだけどな。色んな大学の学生がいてな、自転車やバイク、車通学とかがいたさ」
「セーラたちは養成所止まりだから分かんないけど、ニホンっていっぱい大学校があるんだねー」
「いや、大学校は防衛大学校くらいで……違いが分からん。とにかく、学生はいっぱいいた。最初に居た場所からここまで歩きと電車だっただろ?景色はそんな感じだ」
「電車と徒歩で用事が完結するのは、分隊の中央区と本隊の本部くらいだぜ?ハセガワ、お前は金持ちのところに住んでたんだな」
「んだなぁ。あだしが店ばやってたとごも、ハセガワさんと変わんないとさあっただけっどが、高級住宅街だっただない」
「俺は貧乏長屋に住んでたけどな。大学のときに一緒だったのが仲本、友里恵、詩織、松崎でさ。急に別れることになって、俺だけこっちに来た感じで」
「だから、ガモットのことをナカモトとか呼んでたのか」
「ハセガワさん、心配すっことねえよ。お友達も転生してこっちさ来てっから」
「そうなのか?ええと、アイーシャさんだったな」
「んだあ。セーラちゃんがハセガワさんの言葉が分かるのも、その証だどない」
「じゃあ、セーラも昔はニホンに居たのー?」
「んだあ。ここでこうして行き逢うのも強い縁なだど」
「ということは、俺の友人も仲本以外にいるんだな。言われてみると、セーラさん?は詩織に似ているかも」
「セーラでいいよー。そのシオリって子はどんなだったのー?」
「セーラさ、セーラみたいに明るいやつだったな。分け隔てなくて、誰にも同じような接し方で。医者志望の、賢いやつだったよ」
「そーなんだー。セーラ、お馬鹿で有名だけど」
「セーラは人見知りしないもんな」
「そして、一人称が名前なのが共通点だな」
「おう、茶が淹ったでー」
ガモットが人数分のティーセットを手に入室した。




