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「ハセガワよー、おまんの出身はジパングとちゃうんけ?」

「ああ、日本って国だったな」

「何な、聞いたことあれへんわ」

「やっぱし、日本だあな。んで、あだしも日本さ居て、東京っつーとごで商売ばやってただあね」

「昔から気になっててんけど、アイーシャの喋りはこっちで聞かへん訛りやご」

「あだしが日本さ居たときの訛りだあね。直す気もねえだよ」


人形の無表情のまま、アイーシャは静かに頷く。


「わえは沿岸部の出身やさけ、ずっと訛りのままやご」

「いんやあ、中本と同じ訛りだぞ。微妙に関西弁と違うような、そんな訛りで」

「ナカモトっちゅーんも訛っとったんけ?偶然やご」

「ガモットも前世が日本だがらよ、そんときの記録がそのまんま受け継がれてんだあね」

「ほなんか?ほいで、ハセガワっちゅーんはどんな境遇なん?」

「境遇っつか、今までの成り行きば教えつくろ」

「成り行きな。ヴォルフって居るやろ?」

「居るどなえ。隊長さんだっぺ?」

「せや。ほいで、そいつの中から出てきてん。それが今朝の話や」

「なるほどなぇ。分がった」

「こんなんで分かるんけ?」

「分がるよぉ。珍しい事例だげっど、ハセガワさんは転生でなくて、転移だどない」

「転移?輪廻とか転生と何がちゃうの?」

「転生は一度死がねぎらなんねけっど、転移は死がなくても違う世界さ来られんの」

「ちゅーことは、ハセガワは死なんでわえらの世界に来たんか?」

「そうなっとなえ」

「なあ、おれたちが置き去りなんだけど?」


痺れを切らしたヴァーラは、ガモットとアイーシャに割って入る。


「そうっすよ。元ヴォルフさんの言葉で会話してて、おれたちには全く分からないっす」

「ああ、すまん」

「それで、ハセガワって何者なんだ?」

「異世界からやって来た人間やと」

「なんだそりゃ?」

「わえもさっぱりやご」

「つまりよ、ヴォルフさんの体が異世界転移の器だっただね」

「ヴォルフの体が?あの毛皮のことか?」

「アイーシャの説やとそうなるな。ほいでも、謎があんねん。ハセガワは狼の毛皮を着たら脱げんようなってヴォルフになったわけや。それはニホンっちゅー国で世界の話やろ?ヴォルフはどうやってこの世界に来たんや?」

「それはあだしでも分がんね。んでも、ヴォルフさんの毛皮が元の世界とこっちば結ぶ切欠だったっつーことには変わりねえな」

「妙な異世界転移やのう」

「ところで、いしら。日本の言葉が分がんねえだね」

「さっぱり分からねえよ」

「したっけえ」


アイーシャは左手の薬指と親指で輪を作ると、ヴァーラとジェイドに向けて薬指を弾いた。


「ハセガワさんよ、何か喋ってみせ」

「俺の言葉、分かるか?」

「あ、分かる。ハセガワ、お前もおれたちの言葉が分かるのか?」

「ああ。1秒くらいのテンポが遅れて、言っている意味の理解がついてくるような感じで分かる」

「おれもそんな感じっす」

「翻訳の術式が効いた証拠だっぺ。大したもんだあ」

「つーか、ハセガワ。お前も元がヴォルフみたいな喋り方なんだな」

「そうなのか?」

「ハセガワさん、ヴォルフ隊長だったときの記憶が本当に無いっすか?」

「俺が狼だったときの記憶……無いな」

「そっか、残念だけど仕方ないな」

「おれたちの記憶もリセットなんすね」

「10年以上も一緒に居ったのになあ、わえも寂しいわ」

「あだしでも隊長さんの記憶は取り戻せねえな。どさ行ったか分がんねえし」

「どこにあるか分かれば、ヴォルフも戻ってくるのか?」

「可能性はあっぺな。したっけ、言葉の壁が無くなったところで行ってみべや」

「行くって、どこな?」

「いしらが行くとこだっぺよ」


すっくと椅子から立ち上がると、アイーシャは右手の人差し指と中指を絡ませて一気に解いた。


『いらっしゃいませー、ごらんくださーい。今日は精力剤の特売日でーす。この機会にまとめ買いをオススメしまーす』


椅子に、ホログラムのアイーシャが現れた。何やら、満面の笑顔と甲高い声で言葉を繰り返している。


「あだしの分身に店番さすべ」

「そんな魔法もあんねんな」

「闇の魔法は底知れねえだど?」

「理の博士で良かったわ」

「んで、いしらはどさ行ぐつもりだっただ?」

「わえの部屋やご。ハセガワを匿わならんさけ」

「つーと、教会げ?あだしも行ぐだ」

「かめへん。つれもて行こら」


一行にアイーシャが加わった。

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