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夢幻酷法  作者: SOR
第三の反乱

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28/29

打開策と変身

「どういうことか説明しろよ!!」

「ちょっと優落ち着いて!」

「これが落ち着いてられるかよ、ふざけんなよてめえ!!!」


俺を止めようとする白空を押し退けようともがく。

目の前には、カプセルの中で眠っているむつき。

そして逃げ出そうとしていたジュゼッペ。


「…悪いけどまだここにいてもらうぞ」


兄貴が言うと、ジュゼッペは観念したのかはあと大きくため息をついた。


「それにしてもお前らなんでここに?」

「むつきに強力な発信機をつけていた。それなのに電波が切れたから来たんだよ」

「りゅうさんちって医療道具とかたくさんあるだろ?

だから電波を通さないようにしてるって前言ってたの思い出して。

移動先的にもミロックだったからここだと思った」

「なるほど、さすが白空だ。頭がキレる」

「へへっでしょ?」

「ちょっと〜私も運転したんだから褒めてよりゅうさん!」

「はいはい、お前らは二人で兄妹だしな。よく頑張った」

「でしょ〜??」


俺はむつきがいるカプセルに近付く。傷だらけの身体から目を背けたくなる。

ひどい、何をどうすればここまでケガをさせられるんだ。


「むつき…」


目の前にいるのにカプセルのせいで触れられない。

話をしたい、一体何をやってるんだって。

なんでそんなヘマをしたのかって。そうからかってやりたい。


どんな思いで、ジュゼッペと戦っていたんだろう。

きっと怖かったろうな。

一命を取り留めているとはいえ、死は覚悟したはずだ。

尋常じゃない痛みに耐えたはずだ。


やっぱり引き留めるべきだった。一人で行かせるんじゃなかった。

たとえそれがジュゼッペからの条件であれ、むつきに内緒にしてでも尾行するべきだった。


俺の、責任だ。


「りゅうさん、むつきの容態は…?」

「死ぬことはないよ。さっき来た時よりも少し脈が安定した。大丈夫、呼吸もしっかりしてる」

「よ、よかった……」


利愛が泣きそうになりながら言う。


「ちょっとでも遅れていたら取り返しのつかないことになっていたがな」


兄貴はジュゼッペを睨む。


「とりあえずお前たちはもう帰れ。後は俺が見とくから」

「…分かった、むつきを頼む」

「任せてくれ」


そう言い、俺たちは兄貴の部屋を後にした。

本当はむつきの側にいたかった。でも、あの場にいても何もできない。

それにむつきをあんな目に遭わせたアイツとこれ以上一緒にいられない。

怒りに感情が支配されて、頭がおかしくなってしまう。

後は兄貴に任せよう。きっと上手くまとめてくれるはずだ。









「んで、まだ話があるんだろ?ジュゼッペ」

「…!なんで分かった」

「逃げるのを辞めたからだよ。優たちが来た時、振り切って外に出ることもできた。でもお前はそれをしなかった」

「はあ、そこまでバレてんのかよ。もうお手上げだ」


ジュゼッペは両手を上げて降参のポーズをする。


「むつきの容体は?」

「完治するまでかなり時間はかかると思う。

中途半端な状態で動き回るのは危険だから、ほぼ完治するまではここで療養してもらう」

「つまり、その間はミロックから出られないんだろ」

「そういうことになるな」

「こいつ学校行ってるんだよな」


そうだ、失念していた。

むつきの不在をどう説明する??

どう計算しても数日はかかる。その間学校は休むことになるだろう。

むつきの親にはなんて説明するんだ?

ここでの話をしたって信じてもらえるはずがない。


「むつき!!!」


その時、新たな来客が現れた。

そいつは部屋に入るとキョロキョロし、カプセルを見つけると一目散に飛んできた。


「ちょっとどういうことよ、何よこれ!!」


ヒステリックに叫んでいるのは霜月みなだった。

ジュゼッペは何も返さない。


「私はこんなこと望んでないわよ、誰がむつきを傷つけてなんて頼んだ!?」


みなは勢いよくジュゼッペに近寄り、思いっきりビンタをする。


「あんた、本当に何をしてんの!?」

「ごめんみな、俺は君のためを思って…」

「痴話喧嘩は後でやってくれないか」


俺は冷たく言い放つ。


「話を戻すよ。ミロックのことを話すのは正直避けたい。ただ完治するまでのむつきの不在を誤魔化しきれるかどうか…」

「だからみなを呼んだんだよ」

「わ、私?」


そこでジュゼッペの思惑を理解する。こいつ、本気で言ってるのか!?


「むつきが完治するまでみながむつきの代わりをして欲しいんだ」

「だからすぐ連絡してきたのね。私ならむつきの空白を埋められるから」

「そういうことだ」

「はあ、完全にあんたの尻拭いだけど。方法はそれしかないものね」


確かにジュゼッペの言う通り打開策はこれしかない。

ただ、みなにそれを任せて良いのだろうか。

今のミロック王はむつきだ。

その姿で好き勝手されては国が滅ぶ可能性だってある。

いつ裏切るかわからないし素性も知れない。

そんな奴にむつきを任せて大丈夫なのか?


…それでも今の状況を打開するにはこの方法しかない。痛いほど理解はしている。

ただそう簡単にイエスとは言えない。


「あんたの考えてることは分かるわ。信じられないんでしょう?私のこと。

それはそう、逆の立場なら私だって躊躇するから。

でも、今回は私に全ての責任がある。流れなくても良かった血が流れたから」

「違う、みなは何もしてない。俺が勝手に…」

「あんたは黙ってて!!」


ジュゼッペは口を閉ざす。


そういえば、むつきはあんなに重体なのにジュゼッペには傷ひとつない。

むつきは反撃をしなかった?


「これが、私の覚悟だから。信じて欲しい」


そう言うとみなはポケットからナイフを取り出し、自分の首筋に向けた。

ツーッとなぞると薄皮が剥け、血が滲み始める。


「お前、何を……」

「辞めろみな!君がそこまでする義理はない!」

「聞こえなかった?あんたは黙っててって言ったの。

師走りゅう、もしこれでも信じられないなら次は指を落とすわ」


そう言うとみなは左手をパーの形にして机の上に置いた。

先ほどのナイフを小指に添える。


「待て!!分かったから!!」


俺は思わずみなの腕を掴む。


「…痛い、離して」

「ああ、す、すまない」


まさかここまでするとは思わず少し取り乱す。 

俺が止めなければ、みなは迷いなく小指を落としていただろう。なんて奴だ…


「でもみなのその能力って入れ替わりだろ?むつき本人はカプセルの中にいるが」

「コピーもできるから問題ないわ。ただ私がむつきの姿の状態でむつきと会うことはできない。

同じ空間にむつきが二人いることになるから」


そこでふと思う。みなのこの力はなんだ?

四醋剣の能力とかまた違う気がする。もちろん四季剣でもない。

じゃあ、なぜこいつはこんな力が使えるんだ?


「本当に自分勝手なのは分かってる。ごめん」


ジュゼッペはまた土下座をする。


「はしたないから辞めて。

…それで、私がむつきに代わるということで良いかしら?

前にも言ったけど、私は絶対に周りの人を傷つけたりしない。変な行動もしないから」

「さっき覚悟は見せてもらった。他に方法はない。

一旦これまでのことは棚に上げておこう。むつきの回復が最優先だ」

「言葉が合ってるか分からないけどありがとう。あと、もうひとつお願いがあるの」

「なんだ?」

「できればこのことは、他の人には言わないでほしい。

あなたは理解がある人だからこうやって受け入れてくれてるけど、それ以外の人は違う。

今までやってきたことを考えると、きっと私のこと許せないと思うから」

「悪いけど否定はしない。そういうことならわかった、隠しておこう」


さっきの優の様子を見ても、今ここにみながいると知ったら暴走するだろう。

隠し通した方が良い。


「私もできるだけ接触しないようにするわ」

「可能なのか?」

「梅崎零とクラスが一緒なのは知ってる。他のメンバーとは極力合わないようにすぐ帰るようにするわ」

「お前、なんでそれを…」

「愚問よ」


こっわ、こいつもこいつで分からないことが多すぎる。


「それで、回復までは何日かかる?」

「そうだな、最低でも療養に3日は欲しい」

「分かった、絶対にやり遂げる」


でもむつきに執着しているからこそ、任せられるという部分もある。

みなは嘘を言っていない。むつきのためなら身体も張ってくれる。

とにかく早く良くなってくれ、むつき。


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