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夢幻酷法  作者: SOR
第三の反乱

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第二十九話:女子高生と焼きそばパン

前回までのあらすじっ☆

ジュゼッペが勝手なことをしたせいで、大怪我をさせられちゃった!?

女の子相手に本気でケンカするなんて男としてダサすぎ。

しかも治るまで最低3日もかかるなんて…

一生に一度しかない女子高生生活を無駄にしたくない!謳歌したい!!

レッツエンジョイ青春!!!!






「む、むつき?どうしたの?」

「なんでもないわ」


ゴホンッと咳払いをする。

むつきってこんな感じじゃなかったかしら。やっぱちょっと違う??


「なんかケガしたって優から聞いたけど大丈夫なの?」

「優が言ってたの?もう大げさだなあ、りゅうさんに治療してもらってすぐ回復したよ」

「そう、なら良いけど…」


零はチラッと下を見る。どうしたんだろう。


「如月さん今日スカート短くない?」

「確かになんか違和感あると思ったら…。いつもは膝下守ってるもんね、真面目な人だし」

「そうそう。いつも隠れてるから分からなかったけど、如月さん結構綺麗な足してるよな。細くもなく太くもなく色白でさ……」

「はいはーい、邪魔になるからドア塞いで話すのは辞めてな〜」

「おっ師走じゃん、ごめんごめ…!!?」

「優、睨みすぎだって」


教室から入ってくるあの二人組は…卯月優と師走竜!!

まずい、ボロが出たらマズいから接触は避けたかったのに!!


「よっむつき、今日はミロック行くよな?俺部活休みだから一緒に行こうぜ」

「てかなんで今日そんなスカート短いんだよ、伸ばせ」


なぜか卯月優はイライラしながら言う。

さっきドアの前にいた生徒にもめちゃくちゃガンを飛ばしていた。

ああ、むつきはもうちょっと長かったのか。


「ごめんごめん、伸ばすね」


私は3回折り込んだスカートを元に戻す。


「さ、3回も折ってたの…?」

「えっみんな折ってるものじゃないの?」

「いや別に…」


しまった、浮きそうだ。


「ちょ、ちょっと丈確認しにトイレ行ってくる!」

「いってらっしゃい、授業までには戻るようにね……」

「あれ、なんか俺無視されてね?ミロック行くよね?むつきー???」


必殺、何かあったらトイレ。

高校生あるあるの連れションはないと踏んでいたが正解だった。

零はあまりそういうのを好まないタイプだ。予習しておいてよかった。


しかし問題は卯月優だ。あいつは気をつけなければいけない。

以前むつきになっていた時も違和感に気づいていた。

まあたぶん好きだからすぐ分かるんだろうね。たぶんというか絶対そうだけど。


あいつにバレるのだけは避けたい。めちゃくちゃ厄介なことになる。

最後の方で師走竜がなんか言ってたけどそんなの無視無視。

学校終わりに一緒にミロックになんて行けるはずがない。

なんならさっきもちょっと危なかったし。

スカートひとつで疑問視されるの…?如月むつきって何者…??


でも私も甘かったかもしれない。もっとむつきらしく振る舞って、勘付かれないようにしないと……






3時間目、数学。


「それじゃここの問題を〜、如月さんにやってもらおうかな」

「は、はいっ!」


先生に名前を呼ばれ席を立つ。

如月さん、如月さんかあ。私は今むつきになってるんだなあ。


この前入れ替わった時は、ここまでしっかり授業は受けていなかった。

別にむつきらしくする理由はなかったから。でも今回は違う、完璧にこなさないと…


幸い、私も勉強は好きだ。

むつきは学級委員をしていて賢いという情報もある。

この程度の問題ならスラスラ解けるはずだ。私のむつきなら間違いない。

…あっ、今失言した??


私は黒板の前に立ち、証明問題を解いてみせる。チョークを置くとみんなポカンとしていた。


え、もしかして間違えた…!!?


「せ、正解です。お見事、綺麗な模範解答ですね。

分からなかった人はノートに写しておくように。ありがとう如月さん、席に戻りなさい」

「はい、ありがとうございます」


正解してたのになんだろうこの違和感…

席に戻る途中で梅崎零に声をかけられる。


「むつき数学苦手って言ってたのに克服したの?

勉強の中で唯一ダメなんだって嘆いてなかった?すごいわね」


それは無理!!!そこまで追うのは無理だって!!!!

難しいよ如月むつき!!!


「じ、実は証明問題だけ得意でさ」

「そうなんだ。次のテストは証明問題がメインって言ってたから今回は赤点大丈夫そうだね。

前のテスト25点だったらしいけど」


ごめん如月むつき、証明問題頑張れ。

でも25点はあまり良くないぞ、もっと勉強しろ。






四時間目が終わりお昼の時間。

ここの高校は給食はなく、みんなお弁当か購買で何か買うそうだ。


「焼きそばパン買えた〜?」

「今日はもう売り切れだって、学食のおばちゃんが言ってた」

「マジか、じゃ今日は諦めようかな…」


通りすがりの学生の話し声が聞こえる。…まあ、私も今は学生なんだけど。


「あっむつきじゃん!お昼どうする?」


げっ、師走竜。


「別に何も決めてないよ」

「なら購買行ってみる?焼きそばパン売ってるかもよ」

「さっき売り切れてるかもって話してた人いたけど」

「とりあえず行ってみようぜ!なんでもトライトライ!」


この人、こっちでもミロックでもこんな感じなんだ。愉快だなあ…


「おばちゃーん!焼きそばパンある?」

「あら師走くん、ちょうど後一個なのよ。買ってく?」

「まぁじ!?ラッキー!買う買う!」


あれ?さっきの生徒は売り切れたって言ってたのに…

ぽかんとしている私をよそに、師走竜は会計を済ませた。


「ほい!あげる!」

「えっ私に?」

「うん、なんだかんだまだ食べたことなかったよな?零ちゃんが真っ先に買うからさあ。やっぱミロックにはない味なんかな」


渡された焼きそばパンを見つめる。いや、そんなことより。


「どうしてさっきの生徒はあんな嘘をついたんだろう。焼きそばパンないって言ってたのに」

「あれ、むつきそんなに疎かったっけ」

「疎い?」

「そう、千両(せんりょう)高校の焼きそばパンは人気すぎていつも人狼ゲーム状態なんだぜ。

売り切れたって嘘ついてるやつもうじゃうじゃいる。人を信じたら痛い目見るよ」


怖すぎる、何よそれ。


「あっ!そういえば俺、昼休みに部活のミーティング入れてるんだった!!ごめんむつき、また放課後ね!」

「え?あ、ああ…」


展開が早すぎて陰キャのような返事をしてしまう。 

あの人、何しに来たんだろう…

それにしても、焼きそばパンひとつにここまでドラマがあるなんて。

この世界は面白い。こんな戦場でむつきたちはいつも戦っているのね。


…ま、まあ?せっかくだし?焼きそばパンを嗜んでも良いかも??







なんとか1日が終わり下校時間になった。

この後、卯月りゅうのところへ行って報告をする予定だ。おそらくジュゼッペもいるだろう。


なので全員を振り切って最速でミロックへ行かねばならない。

梅崎零はお手洗いで不在なので今がチャンスだ!

…そう思っていたのだが。


「ごめんね如月さん。さっき集めたノート、職員室に持ってきてくれない?先生ちょっと荷物が多くて」

「わ、分かりました…」


学級委員って何!?クラスの面倒事を全部引き受ける人!?

教室を出るところで担任に捕まってしまい、クラス全員分のノートを持っていかなければならなくなった。お、重い……


「…お前、前見えてる?」

「見えてるよ」

「あっそう。なら俺が誰か分かるか?」 

「うわっ!!!卯月優!!!!」

「なんでフルネーム?」


ノートタワーで微妙に前が見えず、話しかけられてそのまま返事をしてしまった。

ここで卯月優に出くわすのはまずい。


「ああ、もしかしてあれか。

俺が名前で呼べとかまた卯月になってるとかいろいろ言ったから分かんなくなったのか。

悪いな、お前の脳のキャパをもっと理解しておくべきだった」


え、なんかディスられてる?

もしそうだとしたら私じゃなくて如月むつきの方なんだけど、なんかちょっと腹が立ってきた。


「重いなら半分持つけど」

「大丈夫!!ほなさいなら!!!」

「ほなさいなら…??」


逃げるように私はその場を後にした。

ミロックへの道のりは、長い………







無事職員室までノートを届けた後、私はダッシュで卯月りゅうの家へ向かった。

とりあえずここまで来れば問題ない。


「…どうしたみな、髪ボサボサだけど」

「疲れた」


私はその一言だけ発して、カプセルの方へ向かった。

むつきはまだ目を閉じている。昨日とあまり変わっていないように見える。


「心配しなくても大丈夫だ、見た目からは分からないかもしれないが回復はしている」

「そう」

「学校はどうだった?ちゃんとやれたか」

「当たり前でしょジュゼッペ、私を誰だと思ってるのよ。完璧にやるわ」


完璧に、やれてたわよね??


「そんなことよりもむつきの状態について教えて」

「ひぇ〜みなって本当に女王様気質なんだな。言葉の圧がすごいや」

「だろ?そういうところが良いんだけど」

「ジュゼッペ、あなたは今どういう立場で発言しているの?」


なんでちょっと仲良くなってんのよ、こいつ。


「とにかく私はあと何日むつきでいなきゃならないかって聞いてるの。こんな生活ずっとしてたら身が持たな…」

「は?なんでお前がここにいるの」

「NOOOOOOOOOO!!!!!!」


しまった、今日1日むつきをやってたせいでよく分からないリアクションをしてしまった。

今の私は霜月みな、霜月みな……


「おい!この部屋には基本的に誰も来ないって言ってなかったか!?」

「絶対なんてねえよ!!それに優は昨日むつきに会ってるんだ。あれだけ負傷してる様子を見たら来るって!!!」

「でもむつきと学校で会ってるだろ?なら様子なんて見に来るはずが…」

「ああ〜そういうこと?」


部屋に入ってきた人物は卯月優だった。最悪。

むつき本人の前ではむつきの姿にはなれないので、私は霜月みなの姿をしていた。

昨日、むつきの代わりになる話をした時にはもう既に卯月優はいなかった。事情も知らない。


それで私がここにいたらびっくりするわよね。


「兄貴、てめえむつきに何か…」

「してないしてない!ちゃんと話すから!!」


卯月優の圧に耐えられず、私たちはこれまでの事情を全て卯月優に話した。


「そんなことだろうと思った。挙動不審なんだよお前」

「みな、全然完璧にやれてないじゃん」

「そもそも誰のせいでこんなことになってると思ってんのよ」

「す、すんません…」


卯月優は私の隣に立ち、むつきを見つめる。


「そうか、まだむつきは…」


そう呟く卯月優を見て、私はドキリとする。

…こいつ、こんな顔もするんだ。

卯月優にとってむつきは大きすぎる存在なんだ。

まるで自分の身体の一部を失くしたような、悲しさと苦しさと悔しさを怒りを混ぜたような表情。

胸が、苦しくなる。


「あんたがなんと言おうと、完治するまで私は如月むつきをやるわ。それがむつきにとって最善の策だと思うから」

「別にやるなとは言ってねえよ」

「そう、ありがとう。ただ事情を知った以上、少しサポートして欲しい」

「サポート?」


私は卯月優を見て頷く。


「私は学校に行ったことがない。

授業がどうとか、スカートの折り方とか、購買のこととか何も知らない。

選択を間違えると今後のむつきの評価に関わってくる。だから教えて欲しい」


卯月優は黙り込む。

それはそうだろう、私はむつきに対してひどいことをたくさんしてきた。

今回の件も私がジュゼッペを止めていれば起きていない。そんなやつの頼みを受け入れるはずがない。


「…お前の頼みは聞かない」


低い声で私の言葉を否定する。


「俺はむつきのために動く。むつきの学校生活を維持するためにお前のサポートをする。それだけだ」


…マリックから聞いた。

ミロック王補佐の卯月優がサラ国に派遣されていると。

なぜそんなことをしたのか、いまいち意図がわからないとボヤいていたのを覚えている。

人不足でもないのにどうしてわざわざ卯月優との時間を作ったのか。


サラ国女王は強かな人だ。無駄を嫌い最高効率を優先する。

だからこそ王ではなく補佐である卯月優を迎え入れたのか不明だった。


その理由が今分かった。彼は選択を絶対に間違えない。

感情に振り回されずに正解を選び続けることができる人間だ。


卯月優の中心には、むつきに対する絶大な信頼があるのだ。


…羨ましい。そんな人が近くにいるむつきがとても羨ましい。


「あんたもこれくらいになってくれたらね」

「えっ何?」

「てか今のさ、もはやツンデレやんけ。素直になれよ優」

「兄貴もそういう空気読めないところ治した方が良いぞ」

「空気読めないって都合の良い言葉だよなあ!?

自分が気に食わなかったらKY KY言えば良いからなあ!?」 


仲いいな、この兄弟。


「まあそういうことで、明日からは優がぜーんぶ教えてくれるからなんでも聞きな」

「クラス違うし無理な部分もある、なんとかしろよ」

「さっきめっちゃカッコつけてサポートするって言ってたのに!?」


はあ、男の人ってなんでこんなに元気なんだろう?分からない。


「といっても明日は土曜日でしょ?学校ないし、もしかしたら月曜日には復帰してるかもだよね。だからサポートとかはいらな…」


私が言い終わる前に、プルルルと卯月優のスマホが鳴った。


「はい、もしもし?なんだ?…うん、うん。あーーーーーそういえばそうだったな。ま、まあ…行くよ………」


テンションダダ下がりのまま電話を切った。


「明日、圭太の学園祭にみんなで行く約束してたんだった。しかもお化け屋敷…」

「はあ!!!?」

「明日なんて絶対むつき間に合わないから、みなに行ってもらうしかないね」

「本当にごめん、マジで。絶対何かで返すから。本当に」


ジュゼッペが土下座をする。

まだむつきをやらないといけない上に学園祭まで行くの!?

…頭がクラクラしてきた。今日はもう帰ろう、無理だ。

私はふらふらしながら卯月りゅうの家を出た。

早く良くなってよ、むつき!!


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