お守りと覚悟
優も揃ったところで、これまでミロックで起きたことをみんなで整理することにした。
あれからBe Quietの報告を待ったが、めぼしいものはなかったという。
そしてあの家からは大量の塩が見つかったらしい。
さて、私はジュゼッペに呼び出しを食らっている訳でありますが。
みんなに言うべきか、どうしよう…
「急がば回れとも言うし、これも大切だったと思うよ。
優もサラ国で学びがあったみたいだし」
「そうですね、すごく良い時間を過ごせました」
嬉しそうに優は言った。
結局なんでサラ様と畑仕事をしていたのか聞けていない。
何を話したのか聞いても俺とサラ様の仲なんでとかふざけたことをぬかしている。
いつか絶対後悔させたるからな。
…でもやっぱり優にはジュゼッペのこと伝えておこうかな。どうせバレる気もするし。
「難しい顔してどうしたの?最近ずっと一人で考え込んでるよねむつき」
「そ、そうかな。そんなことないよ」
「持病の知恵熱が出るぞ、無理はするな」
バカにしてんのか??
「まあでももうこんな時間ですしそろそろ解散しますか」
「うん、圭太あまりにも馴染んでるね。僕よりもいて違和感ないんじゃないかな」
「ありがとうございますクルミル様!」
「圭太!フォローしなよ!!」
クルミル様が寂しそうにクゥーンと鳴く、犬?
「そういえば来週学園祭があるんですよ。
俺らのクラス、お化け屋敷するので、みなさん来てください」
「またベタだな。俺とクルミル様は行けないから楽しんで来たら?」
「そうだね、あかりにも会いたいし」
「よっしゃあ!じゃまた連絡しますね!」
圭太はすっかり元通りだ。
「てか早いんだね学園祭。まだ5月なのに」
「春にやる学校も多いみたいだよ。新しいクラスに慣れるためだって」
…いや、元通りを装っているだけかもしれない。彼はそういう人だから。
周りは圭太の学園祭の話で盛り上がっている。
今がチャンスかもしれない。
「あっ優、ちょっとだけ良いかな」
「ん?なんだ?」
このままさらーーっと伝えよう、サラ様だけに。
何かもかかってなかった。
「実はジュゼッペに一人でマリックに来いって言われたんだよね〜。
お呼ばれしちゃったから行かないと失礼かなと思ってさ」
「なるほどな、確かに失礼かもしれないな。個人的に呼ばれてしな」
「うんうん!ということで明日行ってくるね!」
「いってらっしゃい」
よかった、上手く行った!
これで明日の放課後、そのままマリックへ行こう。
帰ろうとしたその時、優が腕を掴んで来た。
「卯月さん?ちょっと痛いんですけど??」
「卯月さんってダレ?お前に卯月と呼ぶ資格はないんですが?優と呼べっていつも言ってるよねえ?」
「あ、流れ星」
「室内で見える訳ないだろ、アホか?」
「アホって言った方がアホなんだからねー!!」
一瞬の隙をついて私は逃げ出した。
「待てやコラーッ!!!」
ものすごい形相で優が追いかけてくる。
リアル青鬼?怖すぎるんですけど??
「あの二人ってあんなに仲良かったんだね。僕久しぶりに来たから知らなかった。
竜も混ざってきたらどう?」
「混ざっても良いんですけど、なんで鬼ごっこしてるんですか?」
「…それはわからない」
「つ゛か゛ま゛え゛た゛」
「怖いよ!なんで全部濁点ついてんの!?」
「いきなり逃げ出すからだろ…」
ハアハアとお互い息切れしながら言う。
「こ、これを、持ってけ……」
優は小さなキーホルダーを差し出した。花の形をした透明なキーホルダーだ。
深呼吸をして息を整える。
「これなに?」
「お守り、持っていけ」
「ついにスピリチュアルに目覚めた…?」
「ちげえよ!そんなんじゃないから!!」
「でも急になんでこんなもの…」
「お前がすぐどっか行くからだよ」
ウッ、それはなんというか申し訳ございませんというか…
「そこのボタン押してみ」
「ボタン??」
優に言われた通りに後ろについているボタンを押してみる。
『頑張れ〜!なんかよく分からないけど頑張れ〜!負けるな、ファイト〜!!』
でかい声で白空のエールが聞こえてくる。
「……なにこれ?」
「どうしても白空が言いたいらしくてさ」
「逆に焦って終わるけど」
「……それはごめん」
謝るんだ。やっぱこれは失敗だと思ってたんだね。
てかなんでお守りにボタンついてんの??
「とにかくこれは持っといて欲しい。絶対に離さないで」
「わ、わかった」
本当にスピリチュアル沼にハマってる?大丈夫??
「…あと、絶対に無事で戻るって約束してくれ」
「どうしたの、心配性だなあ。大丈夫だって」
軽く笑い飛ばすが、優の態度は私と真逆だった。
竜の四醋剣騒ぎのことがあったからか、すごく心配そうな顔をする。
確かあの時は、私が死んだと思ってかなり凹んでたっけ。
本気で心配、してくれてるんだろうな。
私は優の手を強く握った。
「大丈夫、必ず帰ってくるから。私のこと信用してよ」
「…そう言われると何も言い返せないな、くれぐれも気をつけて」
「うん、任せて!」
「何かあったらすぐに連絡しろよ」
「え、なんか良い雰囲気だったのに急にオカンになるじゃん」
「30分に1回は連絡しろ。俺がメッセージを送ったら5秒以内に既読をつけて返事な」
「あ〜〜〜〜なんか急に連絡する気が失せてきた〜〜〜」
二人で笑ったのはいつぶりだろうか。
いや、なんなら初めてかもしれない。
私がミロック王になって、すぐに四醋剣騒ぎがあって。
竜とか零ちゃんとかとはこうやって他愛のない話をすることはあった。
優は、どうだろう。
優こそもっとこういう時間が必要かもしれない。
「むつき、好きだよ」
「んぐぅ」
急に言われて変な声が出る。
「だから俺の側にいても恥ずかしくない女であれ」
「何それちょっとキモいんだけど」
「……もう一回やり直しても良いか?」
「無理だよ、もう脳にこびりついちゃったよ。
てかなんで側にいる前提なの??分かんないじゃん、私がどうするかなんて。自信満々すぎ」
「ん?いないの?」
「え、えーっと……」
優にレスバを挑むのは辞めておこう。
「そ、それじゃ私は帰るから!明日のために!!さよなら」
逃げるように飛び出す。
大丈夫、私は一人じゃない。明日も完璧にやってみせる。
それが例え、どんな過程を辿ろうとも。




