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夢幻酷法  作者: SOR
第三の反乱

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24/28

タオルと声

優が任務に行ってから1週間が経った。

私と圭太は迎えにいくためにサラ国へ向かった。

竜はもうお腹いっぱいだから良い、とのことでミロックで留守番をしている。


サラ城へ行き要件を伝えると、トゥクトゥクに乗せられた。

初めて乗った、トゥクトゥク。

一度聞いたら口に出して言いたくなる単語、トゥクトゥク。


「地下牢獄とかに連れて行かれるんじゃ…」

「うーん、あるとしてもトゥクトゥクじゃないと思うよ。リムジンとかならわかるけど」

「それもそっか!トゥクトゥクで地下牢獄はないな」


そんな話をしていると、大きな畑に到着した。

そういえばサラ城にサラ様もいなかった。優と一緒にいるのだろうか。

トゥクトゥクから降りて辺りを見渡してみる。

なんというか、田舎!といった光景だ。とにかく土地が広い。ミロックとは大違いだ。


「優どこに行ったんだろ?ここに連れて来られるってことはどこかにいるはずなんだけど」

「叫んで呼んでみる?」

「え、やだよ。他の国に来てやること?恥ずかし「おーい優!!迎えに来たぜー!!!」

「話聞いてた!?」


竜が大声を出すと、畑で作業をしている人がビックリして真後ろに倒れた。


「ほら!竜のせいで誰かコケてるじゃん!」

「やっべ、それは申し訳なさすぎる。俺謝ってくるわ」

「私も行くよ」


私たちが倒れた人のそばへ行くと。


「は?優??なにやってんの???」

「うるせえよ、お前らもっと普通に来れないのかよ」


そこには泥だらけになった優がいた。


「畑仕事やってるの?サラ国に来て??」


ああ、腰が痛いってそういう……

いやそれを抜きにしても意味がわからないけど。


「ププッ、優が畑仕事を……しかもつなぎ、つなぎ着てるwww」

「あまり笑う時にwを使うな、なんかこう雰囲気悪くなるだろ」


メタは辞めなさいよ。


「あんま分かってないと思うけど今の優めちゃくちゃ面白いよ。つなぎで泥だらけって…プププ」

「オマエ、コロス」

「こっっわ!でもつなぎのおかげでちょっと緩和されてる!!セリフはヤバいけど!!」

「写真撮っとこ」

「あ、竜後でちょうだい」

「ほい、任せて」

「お前らな……」

「あら、なんか騒がしいと思ったら来てたのね」

「サラ様!?」


優と同じようなつなぎを着て、サラ様は畑から登場した。

二人で畑仕事やってんの!!?


「いろいろあってね、優くんにも手伝ってもらってたの。

だけど…どうしたの?派手に転んだりした?」 

「こいつらに脅されました」

「脅しました、ごめんなさい」


あれは脅しなのか…???


「髪まで泥だらけじゃない。作業も一段落したし、お城に戻りましょうか。シャワー化してあげるわ」

「ありがとうございます、助かります」


キッッッと優は私たちを睨む。

大声を出したのは竜の方だもんね〜………





こうして私たち4人はサラ城へと戻ることにした。

到着してすぐにサラ様は優に聞いた。


「うちは温泉と個室のお風呂があるのよ。

軽くシャワーを浴びるだけなら個室の方が良いと思うけどどうする?せっかくなら温泉でも良いよ」

「シャワーで大丈夫です、そこまで世話になる訳にもいかないので…」

「別に気にしなくても良いのに。個室風呂ならこの道をまっすぐ行った突き当たりにあるわ。

アメニティも自由に使って」

「はい、ありがとうございます。いただきます」


優はお辞儀をして個室風呂へと向かった。


な、なんだろうこの感じ。

言葉にするのは難しいけど、二人の距離が少し近い気がする。

物理的な距離じゃなくて心理的な距離。

やっぱり一週間もいると仲良くなるのかな。

畑、なんでしてたんだろう………


「むつき」

「はっはい!なんでございましょうか!!」


ジーーーッとサラ様は私を見つめる。

なぜか全てを見透かされているような気がして、思わず目を逸らす。


「そうだ、せっかくなら竜くんもお風呂入ってく?サウナもあるのよ」

「サウナ良いっすね!俺も入ろっかな」

「突き当たりを左に曲がって、その先をずーっとまっすぐ行けばサウナ室があるわ。

分からなかったら近くに従者がいるから聞いてみて」

「ありがとうございます!いただきます!」


嬉しそうに竜も走って行ってしまった。

私とサラ様だけが残される。


「むつきはどう?お風呂入る?」

「い、いえ私は大丈夫です…」


トゥクトゥクに乗って畑に移動して、泥だらけの優を見ただけだ。特に汗もかいていない。


「そう、なら客間に行きましょうか。

美味しいお菓子を買ってあるから食べて待ってましょう」

「分かりました」


無言で渡り廊下を歩く。な、なんだろう…??


「あーーーーーっっっ!!」


突然サラ様が大きな声を出した。


「ど、どうしたんですか!?」

「忘れてたわ!」


パタパタとサラ様は近くの部屋に飛び込んだ。

そして大きめのタオルを持って中から出てくる。


「優くんの個室風呂のタオル、持って行くの忘れてた!」

「えっ!?」

「このままだと優くん、身体拭けなくて困るわよねえ。

私が持って行ってもなんか変な感じになるし、竜くんもサウナ行っちゃったしどうしようかしらねえ」


サラ様なんか棒読みなんだけど??


「え、えっと…私が持っていきましょうか…?」

「そうね!その方が良いわ!同じミロックだし、王補佐で仲も良いもんね!!」


即答!?


「はいっこれタオルね!後は任せるわ!私は先に行ってるから!」


なぜかスキップをしながらサラ様の姿は暗闇へ消えていった。

タオルを受け取った以上、渡しに行くしかないか…

受け取ったというか押し付けられたんだけど。


私は優のいる個室風呂へと向かう。一応ノックをするが返事はない。


「扉の先は脱衣所になっているので、開けても大丈夫ですよ」

「あっ分かりました、ありがとうございま…」

「ご武運を」


グッと親指を立てたのは、サラ国の従者っぽい男性だった。

いつの間に後ろに立ってた!?


「あれ、あなたが優に渡せば良いんじゃ…」

「あ〜忙しい!サラ様からの仕事が溜まってて忙しいな〜〜!!」


ピューと従者は逃げていった。なんだこの国。

そういえば従者なんていたっけな。

少なくとも一週間前にはいなかった気がするけど。サラ様もいろいろ試してるのだろうか。


いや待て、男性なら従者が渡せば良いのでは???

クソッ、ハメられたような気がする。

でもここまで来たなら仕方ない。やるしかない。


「し、失礼しま〜す」


ドキドキしながらドアを開ける。

従者が言うように中は脱衣所になっていた。曇りガラス越しにシャワーの音が聞こえる。


この先に、優がいる。


ドクン、ドクンと心臓が脈打つ。

何を考えてるんだ如月むつき。タオルを渡すだけじゃないか。

いや、渡しなくてもタオル置いとくねって声をかけるだけで良い。

それ以上でもそれ以下でもない。ただそれだけで良いんだ。


それ、だけで……


その時、シャワーの音が消えた。

まずい、優が出てくる!


「た、タオル置いとくね!!!」


私は決死の覚悟でそう言った。くぐもった声が聞こえてくる。


「タオル?脱衣所にあったような…」

「え?本当に?」

「あれ、なかったっけ。1枚は身体を拭くのに使ったんですよね。

あーでも髪も拭くから何枚か必要か、ありがとうございます」

「そ、それじゃここに置いときま」


ここでとんでもないことが起きた。

浴室のドアが、開いたのだ。


「ああ良いっすよ、そのままもらいます。風呂場で拭いた方が脱衣所も濡れないので…」

「ギャーーーーーーッ!!!」

「むつき!!?なんでここに!!!!?」


私は持っていたタオルを優の顔に投げつけその場を飛び出した。







「いやだから従者が持ってきたんだと思ってたんだよ、なんでお前がいるんだよ!!?

だって入る前に声かけられましたし、ごゆっくりどうぞ〜って!!

男性だったし普通に受け取ろうとするだろ!?」

「知るか!!そもそも声で分かるでしょうが!!」

「シャワーの音してたし分からねえよ!!」

「ひどい!性別すら合ってないし、これまでずっと話してたじゃん!!」

「一週間近く話してねえだろうが!」

「一週間!一週間で!あんたは声を忘れるんか!!!」

「まあまあ、落ち着いてお二人とも」


サラ様が言う。

あの従者、お風呂に入る前の優に声をかけてたのか。確信犯じゃねえか、本当に、もう。


幸い優は腰にタオルを巻いていたので全て見えてしまった訳ではないが、こう、なんというか…こう……


「別に良いんじゃない?ちゃんと隠してたんでしょ優くんも」

「さすがにそれはそうですけど…」


濡れた髪を拭きながら優は言う。

その仕草が色っぽくて妙にドキドキしてしまう。

綺麗な黒い髪に水滴がつき、光に反射してキラキラして目が話せない。

風呂上がりは男女共に破壊力が強すぎる。


「は?何見てんのきっしょ。変態?これ以上見るなら金取るけど」

「変態はあんたの方でしょうが、露出狂なの??」

「俺は今の話をしてるんだけど?」

「あ〜なら自分は露出狂だって認めるんですね??

はい言質取りました〜もうあなたは終わりです〜」

「それならお前は変態ってことになるけど大丈夫そ?

俺が露出狂だとして見たのには変わりないし、風呂上がっても見続けたいってこと?やべえだろ普通に」

「ありえない!!ありえないから!!!」

「へえ、優くんはお金払ったら見せてくれるの?」

「いやサラ様、そういうことじゃないです!」

「なんでむつきが否定するの???」


その時、ガラガラと客間のドアが開いた。


「いや〜〜サウナ最高っすねえ!めっちゃ満喫しましたわ〜。…ん?なにかあった???」

「「なんにもごさいません!!」」

「お、おう。なんか息ぴったりだな。元気そうで何より…」


そんなこんなで。






「本当にありがとうございました、いろいろ学ばさせていただきました」

「こちらこそありがとうね優くん、またいつでも来てね。竜くんとむつきも。

あっそういえば封書来てた?」


サラ様は思い出したように言う。そうだ、その話もしないとだった。


「無事届きました、それで相手がいた場所も突き止められました」


逃げられた、というのは隠しておこう。せっかく協力してくれたのだから。


「え、どういうこと?」

「サラ様が優の監禁が終わる前に住所の情報を送ってくれたんだよ。

ミロック内でもさすがだって話してました」

「急いでる様子だったからね。一週間っていうのも私が決めた期間だし」

「…本当に何から何まですみません、ありがとうございます」


監禁に関してはスルーなんだ…


「とにかく頑張ってね、応援してるわ」


ニコニコしながらサラ様は手を振った。

例の従者にも見送られ、私たちはサラ国を後にした。


ミロックへの帰り道は車を用意してくれることになった。なんと快適な…

サウナで整いすぎたのか、竜は車の中で爆睡している。呑気なやつめ。

私は竜を起こさないように小声で優に聞いた。


「ね、ねえ優。サラ様となんかあったの?」

「なんかって何?」

「それが分からないから聞いてるんじゃないの」

「何、まだ怒ってんの?」

「怒ってない!」


ついつい語尾が大きくなってしまう。


「気になる?」


優は意地悪そうな表情をして言う。


「…気になるから聞いてるんだって」

「別に何もないよ、いろんな話をしただけ」

「ふ、ふーん。そう」


聞きたいのはそんなことじゃない。

いろんな話ってなんだろう。深い話とかしたのかな、二人きりで。

1週間だもん、そりゃ仲も深まるよね。私は声すら忘れられましたけど。


「むつき」


優が私の名前を呼ぶ。

なんかすごくくすぐったい。久しぶりにこうやって話してるからだろうか。

この響きをサラ様は独り占めしてたんだ。

…なんかズルい。


「おい呼んでるんだけど聞いてんのか?」

「聞いてるよ、何よ」

「そんなに俺がサラ様と何してたか気になるなら」


優は身体を寄せてさらに小声で言った。


「もう一度風呂、二人で入り直す?」

「ばっっっっかじゃないの!!!?」


私は思いっきり優の頭を引っ叩いた。

こいつマジで何を言ってるんだ!!?


「いって、もしかして立春使った?痛すぎるんだけど」

「なになに!?なんか爆発した!?」


叩いた音で竜が起床した。


「したした、俺の頭が」

「えっ、大丈夫か!?そんな怪力な奴がいるなんて…

そんなんもうバケモンじゃねえか、今すぐ俺が倒してやる!

どこだそいつは、教えてくれ優!」

「後でそのバケモンにジュース奢ってね」

「あ、俺も。なんかブラックコーヒー飲みたい気分」

「え?どういうこと??」


私たちを乗せた車はミロックへと近づいて行った。

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