再会と回想
前回までのあらすじっ⭐︎
マリックの情報を得るため、圭太と接触することができた私。
ただ疲れが溜まっていたのか普通に体調を崩してしまう。
ま、まあ体調が悪化した理由はまだあるんですけど、それはちょっと思い出したくないというか………
とにかく、今日は圭太と一緒にマリックへ潜入する日だ。
そろそろ私もしっかり動かないといけない。
なんたってミロックの王なのだ。
第二の反乱から数ヶ月。
私たちは何の情報も得られないまま過ごしてきた。
それがやっと実を結ぶのだ!
やはり王としてのメンツというものがある。
ここでしっかり国に貢献すれば、ルチアの名を轟かすことができる!
夢にまで見た人気者になれるのよ、むつき!!
ガツンとかましてやるわ!!!!
またマリックへ行くのかと思うと正直気は進まないが、今回は圭太という経験者がいる。
だからきっと大丈夫だ。
人という文字を手に書いてたくさん飲み込んだし、きっと大丈夫。
…大丈夫だと思っていたのだが。
「如月むつきさん?どこへ行くんですか?」
「ゲッ」
「人の顔見てゲッとは失礼だろ」
優に見つかってしまった。
なんでこいつはいつも私の行動についてくるの?
ストーカー??
これから圭太とマリックに行くことはもちろん伝えていない。
だからそっと学校を出たかったのだが…
「俺が持って行ったゼリーは美味しかったですか??」
敬語こっっっっわ。
なんでこんな圧が強いんだこの人。
歩いたら地面揺れそう。ゾウかなんかなの?
「なになに、何の話?俺もゼリー食べたい!」
近くにいた竜は言う。
この人はいつものんきで良いな、将来大物になるな。
「全身複雑骨折したら買ってやるよ」
「いや本当に何の話!?
なんでゼリーからそんな大怪我になるの!?」
「はいそこ、止まりなさい」
「うっ…」
2人が戯れ合っている間に帰ろうとしたが、優に止められる。
「優、なんかそういう仕事したら良いんじゃない?警察官とか。
人を追いかけたり監視する仕事、向いてるよ」
「警察官?そういうプレイの話?」
「あんた本当に頭おかしいんじゃないの!!?」
思わずでかい声が出てしまう。
あんた本当に頭おかしいんじゃないの?
「ね〜なんかつまんね。2人でばっか話してさ。
俺も仲間に入れてよ」
「別に入らなくても良いわよ。面白くないし、時間の無駄よ」
「あっ零ちゃんいたんだ」
いつのまにか後ろにいた零ちゃんが冷めた目で言う。
零ちゃんすら教室を出る時に振り切って来たのに追いつかれちゃった…
「それじゃ話聞かせてもらいましょうかね」
だから怖い、怖いって。敬語やめて。
15時のチャイムが鳴る。
部活動がない人は今から下校だ。
自分も帰宅部なので普段は直帰するのだが、今日はちょっと野暮用がある。
きっとあの人はウキウキしながら待っているだろう。
わざと足音を立てながら校門をくぐる。
お目当ての人は予想通りいた。
「あっむつき先輩!お疲れさ…ま………」
笑顔がどんどん曇っていく。
分かりやすすぎてこっちが萎えるわ。
「なんだよ、俺じゃ不満か?」
「当たり前じゃないですか。
逆になんで優先輩で満足すると思うんですか」
「むつきなら満足するかもしれないだろ」
「キンッッッッッモ!!」
むつきのやつ、また俺に内緒で圭太と逢引きしようとしていた。
絶対に許さねえ。
以前の体調不良にかこつけて、今日のマリック潜入は俺が行くことになった。
むつきはやいやい文句を言っていたが知らん。
「早く行くぞ。
お前と2人きりでマリックに行くとか最悪な気分だ。
うんこ味のカレーかカレー味のうんこかというより、うんこ味のうんこと一緒にいる感じ」
「ゲシュタルト崩壊してきた…」
テンションが下がっている圭太を差し置いて、俺はミロックへと向かった。
圭太がマリックに入り浸っていたことは動きからすぐわかった。
パッと見ではわからないような抜け道ばかりを通り、スムーズにマリック城に辿り着く。
…それにしても本当に気味が悪い町だ。
人の気配は全くなく、空気が澱んでいる。
低気圧の時特有のだるさが全身を包む。
「優先輩、こっちこっち」
圭太が手招く方へ向かうと小さな入り口があった。
「ここから入ると、マリック城の天井に入るんですよ。
普通に隠れるよりも見つかるリスクはかなり低いです」
「お前、もしかして前もこうやって天井裏に潜んでピンポン玉を…?」
「はいはい、行きますよ〜〜」
この借りは絶対返すからな、アホんだら。
小さな道を進むと、圭太の言う通りある部屋の真上に出た。
他の部屋よりも少し豪華なのがわかる。
といってもミロックよりはかなり質素ではあるが。
「ここがいわゆる王の部屋ですね。
マリック様が普段いるところです。
あいにく今は誰もいないみたいですけど」
「とりあえずここで待ち伏せするか?」
「それでも良いですよ。
ただ、ケツは決めておきましょう。
こういう尾行って引き際を決め忘れるとずっと居座って見つかるケースが多いので」
「…やけに慣れてるな」
「ありがとうございます、お褒めの言葉をいただき嬉しいです」
本当に腹立つな、こいつ。
「誰か来てくれるのが一番良いんですけどねえ。
後は電話か。会話があればわかりやすいんですよ」
次の瞬間、ドアが開いた。
角度の関係上、誰が入ってきたかまでは見えない。
「おい、誰が入ってきたよな?見えるか?」
「見えますよ。でも…マリック様じゃないですね。女の人だ」
「女の人?」
「間違いないです。でもおかしいな、マリック様に女の人の知り合いなんかいたかな…。
少なくとも僕が知ってる中にはいないです」
「ちょっと見せてくれ」
圭太がいる場所に少し移動した下を見下ろす。
そこにいたのは、少しグレーがかった長いストレートの髪の少女だった。
「あ、あれは…。なんで、なんでここにあいつが…」
「…!知ってるんですか優先輩」
俺は動揺しながら、そいつの名前を口にした。
「あいつは、霜月みなだ」
俺たちはすぐにマリック城をでた。
結論から言うと、かなりの収穫があった。
それが良いのか悪いのかは判断できないが、悪いような気がする。
「……優先輩、そろそろ聞かせてくださいよ。
霜月みなって誰なんですか?」
「反ミロック組織のボスだ」
まさかここでそんな言葉が出てくるとは思わなかったのか、圭太も驚いた表情を見せる。
「なんでボスがここに?
確か反ミロック組織って元々細々と活動してて、むつき先輩が王になった途端爆発した組織ですよね?
女の王はダメだとか、他所者に任せるなとか」
「よく知ってんね」
「前も言ったように、俺はミロックオタクですからね。
しかもマリックの部屋にいるってことはかなり親しい関係ってことっすよ」
あっ、と圭太は何かを閃く。
「すごく単純な話なんじゃないですか、これ。
反ミロック組織はミロックを憎んでいる。
だから四醋剣を使ったテロをマリック経由で行う。
そうすれば自分たちの足がつかずに実行できる。
マリック側も、もし金銭の取引があればメリットはありますよね。
実際、サラ国と交流を持てた訳だし」
「そうなんだよ、それが一番しっくりくる。
それが問題なんだよ」
「どうしたんですか本当に。なんでそんな微妙な表情をしてるんですか?」
マリックの捜査に圭太はかなり協力してくれている。
なら、あのことも話しておいて良いかもしれない。
「実はむつきがミロックが王になる前にちょっとした事件があったんだ」
俺は当時のことを思い出しながら、ゆっくり話し始めた。




