累卵の危機
「うーん困った」
「めずらしく悩んでるけど、どうかしたのか? 和美叔父さん」
「(めずらしくは余計だ)いやなぁ、今度うちの会社からオリジナルのケーキを販売するんだが、そのコストをどう削減したらいいかを考えているんだ。なにかいい案はないか」
「ケーキでしたら、土台や飾りなどを外注する方法もありますけど、外注だとそれに対しての仕入料がありますから」
「……っ? 外注だと余計な出費がなくていいんじゃないのか?」
「それがね少年。合計の仕入値が多いと売価も高くなるんだよ」
1ホールにつき6個のショートケーキとした場合の製造原価
(*$が付いている商品は外注とする)
原材料
$スポンジケーキ \300(1ホール)
生クリーム \200(@200/200ml)
砂糖 \10((200*(50/1000))
イチゴ 300(1パック10個で300円。すべて使用)
道具費 \2.1
電動泡立て器 \3,000
ボウル \300*2 泡立て器 \200
(3,800/1825=2.1)一日5回。一年使用したとして
人件費 \1,000
@1,000/時間=1時間
その他 \45
水 約\10 氷(生クリーム泡立てに必要な量)約\20
塩(化学反応で氷を氷点下以上にするため) 約\10
電力 約\5
商品梱包費 約\10
合計\1,867.1(商品単価@311円*小数点四捨五入)
「これがもし100個で販売することになると、商品単価*100ってことになるから、31,100円ってことになるね。それから利益は当然だから+@で、今回は400円前後かなぁ」
「ちょっ、ちょっと待て、以前亜紀さんのお店でやった計算より製造原価が高いんだけど、どういうことだ?」
「あの時はケーキに対しての製造原価だったでしょ? 仕入の場合は向こうも売上利益を出したいからね。大量に仕入れて値引きしてもらう方法もあるから、これよりも安くなる場合があるけど」
「だが、家庭だとお店で売っているスポンジケーキを使ってケーキを作る場合があるから、それと同じことをやれば、外注だとこういう計算になるな」
「逆に全部を自社製造する場合はこうなりますね」
自社製造のショートケーキ(6/1ホール)に必要な経費。
原材料
スポンジケーキ
(内訳)小麦粉(100グラム) \30(300*(100/1000))
砂糖(150グラム) \60(400*(150/1000))
卵(3個)\90 (300*(3/10))
油(少々)約\10
クリーム
(内訳)生クリーム \200(@200/200ml)
砂糖 \10((200*(50/1000))
飾り付け
(内訳)イチゴ 300(1パック10個で300円のものをすべて使用)
道具費 \29.6
(内訳)オープン \50,000
電動泡立て器 \3,000
ボウル \300*2 泡立て器 \200
ケーキ型(6号サイズ)\200
(54,000/1825=29.6)一日5回。一年使用したとして
人件費 \1,000
@1,000/時間=1時間
その他 \60
水 約\10 氷(生クリーム泡立てに必要な量)約\20
塩(化学反応で氷を氷点下以上にするため) 約\10
電力 約\10
商品梱包費 約\10
合計\1,789.6(単価@298*小数点四捨五入)
「という計算になりました。ケーキをふくらませるためのショートニング(ふくらし粉)が含まれていませんが、卵をしっかりと混ぜれば膨らみますので大丈夫です(詳しくはお菓子作りの本を参考に)」
「五三焼カステラっていうのがあるけど、あれって黄身五個に対して、白身三個入れてしっかりと泡立てているから、ふくらし粉がなくても、あんなにふっくらとした綺麗な黄金色のカステラになるんだよ」
「スポンジケーキの原材料が190円なのか。考えようによっては自分のところで作ったほうがいいかもしれないな」
「でも会社によっては得手不得手があるから、スポンジケーキを外注して、ほかの流れ作業を受け持つという考えもあるよ。それにオープンを使わない場合もあるから、その分製造原価から引けるしね」
「外注の場合はスポンジケーキに費やした製造原価に利益と運搬費が含まれている場合がありますが、自社だとスポンジケーキ単価に対する利益は必要ないですからね。スポンジケーキだけを販売するなら利益計上は必要ですが、今回はあくまでショートケーキを作るという話で進めてますから」
「とはいえ、それに関しての人件費も費やす場合があるんだよ。それに今回は1ホールでの計算だから、まとめて作るにしても商品が余ると……ねぇ……」
「そうか、ケーキって生ものだから賞味期限が切れると値引きや廃棄処分しないといけないんだっけか。うちの店もパンが賞味期限に近づくと値引きとかするし」
「そう。ケーキ屋さんって色々なケーキを作るけど、だからって大量生産はしないんだよ。日々の売上をグラフに表したり、ケーキの原材料の物価に合わせて量を作ってるから。後はお客さんのニーズとか商品の売上と原材料を比例したりとかね」
「限定数個として販売されている場合があるが、あれは製造原価が他の商品よりも高く、利益が出ない場合があるから限定で売っていることが多いな」
「いちごのショートケーキはポピュラーで人気ですし、チョコなんかもよく売れます。フルーツタルトだって、パイ生地や盛る果物の物価で製造原価が変わるんですけど、だからといって売価を上げるわけにはいかないんですよ。むしろやたらと値段を上げ下げしていたら、お客さんが不審に思って店に来なくなります。来ないということは売上が伸びない。売上がなければ製造原価(仕入値)に対する赤字が嵩じて、最悪会社が倒産するという流れになってしまいます」
「あと最近の話だと、ガリガリ君とかあずきバーの値上げって、この製造原価の影響なんだ。バーに必要な木材の値段が高騰してしまって、やむなく10円値上げすることになったわけだから」
「経営的には利益を出したいのは常識だけど、お客が来なくなったら元もこうもないわけか」
「うーん参考にはなったし、砂糖の値上がりもありそうだからな、今のうちに200キロばかし仕入れて、それを資産として使うことにしよう」
「お店によっては小麦粉や卵、果物などの必要な原材料を契約農家から仕入れていることもありますからね。それも視野に入れてはどうでしょうか」
「わかった。今度社長や工場長と話し合ってみるよ(ガチャ)」
「……ふと思ったんだけど、和美さんって役職なんなの? 社長に直談判できるって余程の階級だと思うんだけど」
「あれ、言ってなかったっけ? 和美叔父さん、親会社の経営部部長およびOHU商店一号店店長なんだけど」
「「………………うそ――」」




