大体便利なものほど不便になる
「さてと前回の続きで、税抜経理方式について説明するね」
「まぁ説明するというより、売上や仕入の時の金額が消費税込みかそうじゃないかの違いなだけですけどね」
「つまり税抜経理方式っていうのは、売上や仕入に消費税を加算して仕訳るってことか?」
「そうですね。その場合は『仮払消費税』という勘定項目として費用になります」
取引 5,000円で仕入れた商品を現金で支払い、決算時に商品に対して消費税金を現金で処理する。(消費税8%)
(仕入)5,000円/(現金)5,400円
(仮払消費税)400円
「これが仕入ではなく売上だった場合はこうなるよ」
(現金)5,000円/(売上)5,400円
(借受消費税)400円
「これは仮払金と仮受金と同じってことか」
「そう考えていいかな。結局消費税の仕訳で消えるんだけど」
「さてと実を言うと処理するという形では税抜きの方がいいんだよね」
「どうしてだ? 税込みのほうが計算しやすいし、そのまま処理できるんじゃ」
「えっとですね、税抜きの場合は本体価格(消費税がない状態)で処理できるんですよ。税込みの場合は本体価格を引いた金額が損金不算入制度の対象になるんです」
「たとえばそうだね。600円のコーヒーを飲んだとして、会計の時に消費税が含まれるのはよくあることだよね?」
「そうだな。消費税込みの場合は648円になるわけだから、48円が課税仕入(売上)高になるわけだ」
「そうですね。ただ税抜きの場合は本体価格のみを計算して、決算の時にまとめて消費税の計算をしますから」
「それと税込みだと消費税が売上と仕入の中に入ってるから収める消費税は租税公課になって、還付される消費税は雑収入になるから、所得金額(純資産)に影響を与えるんだよ」
「取得が減れば消費税を支払わなくて済むだっけか」
「課税売上高が1,000万を越えなければですけどね。まぁさすがにそれは脱税になりますから」
「まぁ税抜きのメリットは計算が本体価格だけだから消費税の計算が必要ないってところだよ」
「仕訳のさいでも便利ですね。たとえば先程のコーヒーを例にして、それが交際費だとしたらどうなります?」
「交際費だから二人以上で本体価格を人数分でそのまま処理できるってことか」
取引 600円のコーヒーを相手方との付き合いで四人分注文し、現金で会計を済ませた。
(交際費)2,400/(現金)2,400
「これに消費税が加わると2598円(2400×1.08)になるから消費税で198円払っているってことになるね」
「消費税分安く仕分けられるということか」
「それから備品減価償却にも影響があるんですよ。ところで公人くん、備品はいくら以上からが備品でしたっけ?」
「取得価額が中小企業だと30万からで、それ以外は10万からだっけか?」
「正解。それより安い、取得価格が10万以下の少額減価償却資産に関しては一時償却することができるんだよ。取得価格が消費税込みだとその金額で計算しないといけないんだけど、税抜きだと本体価格で計算ができる」
取引 50,000円の備品(耐用年数5年・使用年数3年)を5,000円で売却し、その分を現金で受け取った。
(現金)5,000/(備品)50,000
(減価償却累計額)30,000
(備品売却損)15,000
「これはまだ計算がしやすいですね。ただ次の取引だとこうなります」
取得価格98,000円の備品(耐用年数7年、使用年数4年)を20,000円で売却し、現金で受け取った。
(現金)20,000/(備品)98,000
(減価償却累計額)56,000(98,000÷7=14,000×4)
(備品売却損)22,000
「これに消費税を加えると、取得価格は105,840円になりますから」
「固定資産として計上しないといけなくなるのか」
「そうだね。消費税が含まれると本体価格に7,840円もの消費税額を支払うことになるから、会社としてはできるかぎり余分な計算はしたくないんだよね」
「これってさぁ、法人税と一緒だな」
「あぁ、確かに法人税も所得金額が変わると税率が変わるからね」
「10万未満の備品を少額減価償却資産は一時償却として、20万未満を一括償却資産として処理することができます」
「一時償却はそのままの意味で備品を一時的に償却額として処理できること。一括は3年均等償却ができることだね(5年均等償却とも言います)」
「3年均等って?」
償却限度額=一括償却対象額×(その事業年度の月数/36)
*5年均等の場合は60(12×5)になります。
「右記は一括償却の計算式です。対象額は取得価格と思ってもいいです。その事業年度の月数というのは3年間(5年間)の支払いに対してどれだけ減価償却費にするかを決めることですね」
198,000×(12/36)=66,000(3年均等)
(12/60)=39,600(5年均等)
「このように減価償却費を割り出して、3年間支払うということになります」
「ただこれってちょっと面倒でね。3年均等償却ってことは3年間支払わないといけなくなるんだよ」
「もしかして売却した後も払わないといけないってことか?」
「そうですね。減価償却費は取得価格から耐用年数を割った計算ですけど、耐用年数に達するより前に撤去(廃棄)した場合、除去損として計上できるんですが、一括だとそれができなくなるんですよ」
「それから一時償却は一年以内に使い切ることを前提にして処理されるんだよ。ほらテレビのCMって人気があって何回も流れるやつ以外は半年もしないで見なくなるでしょ? ソフトバンクの白戸家やBOSSの宇宙人みたいなシリーズ物があるけど、前の戦隊のCMが流れるなんてことはないでしょ? あれも云ってしまえば一時償却になるんだよ。何年もやってるやつはその度に資産として処理しているってことだね(場合によっては平成初期の企業CMが流れる場合があります)。テレビCMの場合は減価償却費の耐用年数は2年に定められているんだけど、大体は一時償却だと思えばいいよ。特に一年単位で終了する特撮の玩具CMとかね」
「ただこの一時償却と一括償却は青色申告法人(資本金(出資金)一億円以上の中小企業)に限られるんです。30万未満は資産として処理されませんが、こうやって資産として処理できればその分所得税の節税になりますから」
「便利な半面、不利なことが多いんだな。それじゃぁ話を消費税転嫁に戻そうか」
「残ってるのは商品購入、役務利用または利益提供の要請だっけか」
「たとえば私が少年に5,000円の商品を消費税込みで購入したとするね。で、消費税分(400円)で他の商品を購入することが利益提供、または役務利用ってことになるんだよ」
「それって消費税払ってないってことじゃ?」
「そう。ちなみに今まで説明したことを公正取引委員会に報告したことでその会社に報復をした場合も違反になるね」
「ただ、正直これって……ねぇ……」
「えっ? どうかしたのか?」
「たしかに租税公課を払うためにも、消費税の計上はしないといけないんですけど、もし消費税転嫁対策に違反する行為があって報復を受けた場合、取引を中断されることがあるから」
「――もしかして、わかってやってる?」
「企業が一番恐れてるのは、取引中断による営業不振での倒産ですから」
「それに対策とか名ばかりに監視機関は天下り先の確保でしかないんだよ。引退したなら引退したでおとなしく隠居しろっての」




