保険金の仕訳方法
「って、どうかしたの? その足」
「いや、ちょっと友達と昼休みにサッカーやっててさ、張り切りすぎて捻挫した」
「うぅわぁ、痛そぅ」
「保健室の先生の話だと軽いみたいだし、湿布を貼って安静にしてろってさ」
「立ってると捻挫が悪化するかもしれないし、椅子に座って」
「ほいほい」
「うーん、怪我の功名というわけで、今回は保険料の計算を勉強しましょうか」
「といっても、今回は仕訳の問題を出すってわけじゃないから、会話と説明しかないよ」
「まず保険と聞いて思い浮かぶものってあります?」
「健康保険・介護保険・年金保険とかか?」
「年金に関しては職種や状況によって色々と言い方がありますけど、今回は『厚生年金保険』にしますね」
「少年が言った保険の他に雇用保険・労災保険があるよ」
「雇用保険って、たしか失職中に受け取る保険金だったな」
「そうですね。その間に新しい仕事が見つかればいいんですけど」
「ところで少年。今言った保険だけど、これって会社がその保険に入るのは自由だと思う?」
「え? 介護保険とか身体が不自由な人にだろ? 雇用保険も失職する恐れを考えて入るから、会社は関係ないんじゃ……」
「ところがどっこいっ! 今言った保険は全部、強制加入なんですっ!(ズイッ!)」
「神さま、顔近い、顔近いってっ!」
「もちろん受給者の給料から税金と同様に天引きされるんだけど、だからといって会社が負担しないというわけにはいかないというか有り得ないんだよ」
「えっと、保険金を給料から支払ってるわけだから受給者負担なのはわかるけど、会社はなにを払ってるんだ」
「そりゃぁもちろん足りない部分です」
「……足りない?」
「会社は健康保険・厚生年金保険・介護保険を半分以上支払わないといけないんですよ」
「……ちょっと待て(簿記のテキストを読みながら)、実際の保険料は給与明細に記されている料金の倍ってことか?」
「そう思って間違いはないですね。給料から天引したお金は受給者が支払う保険金や税金に使うもので、それを会社が代わりに支払う事になってるんですよ。だから仕訳では預り金という負債勘定になるんです」
「ただ、介護保険はちょっと条件があるんだよ」
「条件?」
「介護保険は40歳以上65歳未満の従業員のみが支払う保険なんです」
「ということは40歳未満の従業員は払わなくていいってことか……。でも65歳未満って、たしか定年は60歳じゃなかったっけ?」
「正しくは停年なんだけどね。まぁ60歳過ぎても働く人はいるから、そのための保険だね」
「さて、健康保険・厚生年金保険・介護保険の計算ですが、まず四月から六月までの三ヶ月に支払った給与総額の平均を求めます」
一ヶ月目(四月)・551,000円
二ヶ月目(五月)・489,000円
三ヶ月目(六月)・542,000円
「合計で1,582,000円。平均で527,333円になります。これを『標準報酬月額*』と言いますが、今回はわかりやすくするため、1,000円未満は切り捨てて計算でいきます」
「健康保険と介護保険の計算方法は『標準報酬月額×(健康保険料率+介護保険料率)』で求めるよ。それじゃぁ健康保険を5%、介護保険を2%にしてみようか」
「ということは『527,000×(5%+2%)』になるから、36,890円ってことか(電卓を使いながら)」
「正解。健康保険の保険料率は都道府県ごとに決まっているし、介護保険の保険料率は全国一律なんだけど、ただ、保険料率って税金以上に変わりやすいから注意しないとね」
「厚生年金の計算方法は『標準報酬月額×厚生年金保険料率』です。今回は厚生年金保険料率を12%としましょう」
「そうなると『527,000×12%』だから63,240円ってことか」
「正解です。その半分を会社と被保険者が折半するということになります」
「ってことは、二つを足して割ればいいから、50,065円(100,130円÷2)になるんだな」
「今回は介護保険も計算に入ってますからね。40歳未満の従業員の場合はそれを抜いて計算するといいですよ」
「でも給料以外にも賞与があるよな?」
「計算のやり方は変わらないよ。納付額は『標準賞与額×保険料率』と覚えておけばいいかな。ただもらえない月(ボーナスなどがない場合)は0円って記入しないといけないんだよ。それから賞与額から1,000円未満切り捨てた額を計算するよ」
「例題として先ほどの合計を賞与として計算してみましょうか」
「ってことは1,582,000円だから、健康と介護は110,740円。厚生年金は189,840円になるんだな。その半分だから150,290円か」
「そうだね。賞与を支払った時は賞与支払届を年金事務所に提出しないといけないんだよ」
「年金は年金事務所に、健康保険や介護保険は協会けんぽ(全国健康保険協会)に毎月支払うという事になります」
「次は雇用保険・労災保険の説明だけど、このふたつを合わせて『労働保険』と言うよ」
「雇用保険は健康保険や雇用年金と同様、会社と被保険者の折半になりますけど、労災保険は会社負担になります」
「ってことは、従業員が払ってるのは雇用保険だけってことか」
「計算は『給与や賞与の総額×定められた保険料率』だね。それじゃぁ総額を891,700円として、保険料率は8%にするよ」
「そうなると71,336円ってことか。折半だからその半分、35,668円になるんだな」
「そうですね。それを毎月の給料(賞与を含んだ場合も含む)から控除します」
「労働保険は毎年七月十日までに保険料の申告と納付手続きをするんだよ。毎年四月一日から三月三一日までの一年間までにあった従業員に支払った給料や賞与の総額に、その事業に定められた保険料率を乗じて算定するんだ」
「それを年度当初に概算で申告と納付をして、翌年度の当初に確定した金額を概算額と精算するんです」
「ってことは会社はその年の保険料の申告をしないといけないってことか」
「正しくは今年度の概算保険料(前年度の労働保険料の合計額)と前年度の確定保険料を合わせた保険料を申告と納付をするんです」
「他の保険と違って労災の納付と申告は年に一度だから、四月一日から申告期限になってる七月十日までにまとめないといけないんだよ」
「それから業種によっては労働保険料率が異なりますし、変わりやすいですから注意が必要ですね」
*標準報酬月額(四月から六月までに支払われた給料総額の平均)は九月から翌年八月まで適用される。
(標準報酬月額は、毎年七月に月額算定基礎届を年金事務所に提出することで、各受給者の金額の見直しが行われる)
今回は折半という形で÷2という計算にしていますが、平成27年度の雇用保険率は
一般事業=13.5(保険率)/8.5(事業主負担額)/5(被保険者負担額)
農林水産・清酒製造の事業=15.5(保険率)/9.5(事業主負担額)/6(被保険者負担額)
建設の事業=16.5(保険率)/10.5(事業主負担額)/6(被保険者負担額)
となっています。(単位は1/1000)
公人が住んでいる小売店は一般事業に入ります。
当月の給与総額を250,000円として、
250,000×(13.5/1000)=3,375円(保険率)
250,000×(8.5/1000)=2,125円(事業主負担)
250,000×(5/1000)=1,250円(被保険者負担)
という計算になります。




