本気で検定を取りたいなら
「そ、それで……いったいなんだ?」
「公人くん、わたしたちが教えたことをだいたいは覚えてるんだよね?」
「あぁ、仕訳方とか勘定項目はある程度覚えたからな。あとはやり続けて空で書けるようにならないとな」
「……それだけやる気があるならいいですけど――だったらなおのこと、わたしたちや和美さん、亜紀さんから教えてもらったことはいったん忘れてください」
「――えっ? なんでだよ? せっかく覚えてたのに忘れないといけないのか?」
「ええ。なぜなら……(ポカァッ!)」
「あらほれひぃれぇはれぇ……っ?」
「ってっ! なにやってるの? 黒闇天っ!」
「いや、だってお姉ちゃんが忘れろって。忘れるならこの方法がいいかなぁって」
「いや言ったけど、物理的に忘れさせてどうするの? 近くにあったゲーム機で頭叩けば最悪死ぬでしょ? あんた貧乏神だけど死神じゃないでしょうがっ!」
「ワタシはドコ、ココはダレ」
「あぁもうっ! なんか余計なことまで忘れてるっ!」
「というのは冗談としてだ、いったいどういうことだよ神さま? 今までのことを忘れろって」
「いや、あくまで一度ですからね。というか人間の記憶っていうのは消えるってことはないんですから。思い出せないってだけで」
「たぶん、お姉ちゃんのことだから基本的な仕訳方しか教えてないでしょ?」
「今まで習ってきたことが基本だってのか?」
「仕訳方や決算時の書類作成については説明してきましたけど、だからといってこれで大丈夫ってわけじゃないんですよ」
「少年、学校で授業をする時、最低でもなにが必要だと思う?」
「えっと、教科書は必要だろ? それからそれを教えてくれる先生だな」
「ええ。それから参考書や問題集もそうですね」
「っても、神さまから教えてもらったことは無駄にしたくないだろ?」
「それじゃぁこれを見て、習っていないことはありますか?」
「えっと、なになに……」
「少年がなにを読んでいるかというと『商工会議所簿記検定試験出題区分表』です。簿記検定公式HPにPDFファイルで公開されているので、興味がある人は受験する年のやつを見てください。大体はその受験募集期間に更新されます。(六月の受験なら四月といったところです)」
少年流し読み中…………
「…………(ガクブルガクブル)」
「ねぇ、習っていないことのほうが多いですよね?」
「オレ、いろいろ神さまから教えてもらったけど、小口現金とか小払現金とか教えてもらってないぞ?」
「というか2級と1級はこれに加えて『工業簿記』と『原価計算』もあるから、余程の知識がないと無理なんだよ。今の少年だとやっと冒険に出られたくらいなんだから」
「つまりここまで教えてもらっても、まだレベル1になったくらいってことか」
「そうですね。それから最初のころに話していた受験のことですが」
簿記4級
簿記入門レベル。小規模小売店の経理事務に役立つ。勘定項目に仕訳でき、複式簿記の仕組みを理解できる。
簿記3級
企業で働く者に必須の簿記の基礎知識が身につき、商店や中小企業の経理事務に役立つ。
経理関連書類を読むことができ、青色申告などの書類作成もある程度できる。
経理。財務担当以外でも必要な知識として評価する企業が多い。
簿記2級
企業の財務担当者として必要な高校(商業高校)程度の商業簿記、工業簿記の知識が身につき、株式会社の経営管理に役立つ。
財務諸表を読むことができ、自社や取引先の経営内容を数字から把握できる。企業が求める資格1位でもある(リクナビ調べ)。
簿記1級
公認会計士、税理士などの国家資格への登竜門。
1級に合格すると、税理士試験の受験資格が得られる。大学で専門に学ぶ程度の商業簿記、会計学、工業簿記、原価計算を取得し、財務諸表規則や企業会計に関する法規をふまえて、経営管理や経営分析ができる。
「これらは級ごとにまとめた知識力ですね」
「というか、3級でも合格率低いんだけどね。全国一斉にやってるからそうなるんだろうけど、さすがに低すぎるよ」
「えっと、最低がどうなんだ?」
「そうだね。筆者が調べたところ、ここ十年(2004年~2014年)だと13%(小数点切捨)が最低だったよ。最高でも50%前後。平均で30%前後だった」
「ちょっと待て、なんでそんなに低いんだ?」
「その回で出題される問題によりけりだけど、たぶん受験資格に年齢や国籍が関係ないってのが大きな理由じゃないかな。小学生以下でも受験できるし、なにより簿記検定は経理に必要な知識だから、就職に必要だってことで受験する人も多いんだよ」
「あくまで知識であって資格ではないですからね。自分がどれくらいの知識があるのかっていうのを知りたいと思って受験する人のほうが大半なんですよ」
「あぁ、だからその分、合格率も低くなるのか」
「そうだね。受験したのが100人いたとして、そのうち13%ってことは10%前後だから十人に約一人が合格したってことになるでしょ? 50%なら二人に一人、30%前後なら三人に一人って割合になる」
「しかし、なおのことやる気が出るな」
「就職にも役立ちますからね。それじゃぁ次はこれを見てください」
受験料一覧
簿記1級(以下級のみ表記)/7,710円 2級/4,630円
3級/2,570円 4級/1,640円
「これは次回(第143回)の各級ごとの受験料です。受験料は基本的に変わりませんので、これくらい必要になるんだなと思ってください。申込は各商工会議所の受付でされますが、最近はコンビニからの申込がほとんどです」
「高ぇっ? ってか1級で8,000円くらいするのかよ?」
「4級でもかなりの値段だからね。ただそれだけ必要だってことだよ。学校のテストだって無料じゃないんだから」
「え? オレお金払った覚えないぞ?」
「そりゃぁ、キミはまだ中学生で義務教育だからね。ほら高校になると授業料を払わないといけないでしょ? あれの中に試験に必要な費用が含まれているんですよ」
「たとえばどんなことに使われてるんだ??」
「大体はテキスト作成とか印刷費だね。学校以外でだったらその会場の使用料とかいろいろあると思うよ」
「なるほどなぁ、でもオレのやる気は揺るがないぜ」
「それを聞いて安心しました。それじゃぁ次は試験に必要なものです」
試験に最低限必要なもの
受験票/筆記用具(ただしボールペンなど消しゴムで消せないものは不可)/計算機(表示桁数が十桁(十億)まで計算できるもの。最低でも『00』ボタンがあるもの。できれば『千』・『万』単位のボタンがあるものが好ましい)
「前の二つはなんとなくわかっていたけど、計算機はこの前教えてもらったし、でも面倒な計算もしないといけないから、メモ用紙とか必要になるんじゃ?」
「問題用紙の裏か、横に書いておけばいいですよ」
「なるほどなぁ、でもスマホはどうなんだ? あれも計算機ついてるぞ?」
「それはカンニング防止だね。スマホだとネットで答えを見たりできるから。ただ簿記には税金といった細かい計算もあるから、電卓を使っても良いことになってるんだよ」
「他になにか必要な物ってあるのか?」
「そうですね。受験会場までの交通費とかですね」
「お姉ちゃん、今は勉強も必要だから、これをやったら」
「っと、過去問?」
「ある程度の予想ではあるけどね。やらないよりはマシだよ。それから教科書とか参考書は最低でも二冊以上はあったほうがいいね」
「っても、オレそんなにお金持ってないぞ?」
「買うとしたら過去問くらいでいいですよ。図書館に行けば簿記の基礎的なことが載った本がありますから。ただここで注意が必要です」
「注意……?」
「ここからはメタな発言が多くなるので注意してね」
「という黒闇天のアナウンスが入ったところで本題に、この作品を書くに当たって色々と簿記のテキストを図書館から借りたんですけど、本によっては書いてあったりなかったりで正直戸惑いました」
「……なんと?」
「しかも商品評価損の計算のやりかたがどこにもなくて、ネットで調べたくらいだからね」
「もちろん詳しく、重箱の隅をつつくくらいに読んでいればあったんでしょうけど、初心者の人はなるべくわかりやすいものを選んだほうがいいですね」
「まぁ、知識があっても問題を理解できなかったら意味ないけどね。だからテキストを購入するのもいいけど、あまりお金がない人は図書館でテキストを借りてきて、それで最低限の仕訳方を知ってから、各級に合わせて作られた過去問を購入して何度も解いてみることだね」




