見てないようで見てる
「前回、諸口のおかげで繰越利益剰余金の話が途切れてしまったので、ささっと話を進めていくよ」
「神さまだいぶ落ち込んでるなぁ」
「ふ、福の神のわたしが諸口すら教えていなかったとはなんたる不覚」
「部屋すみで膝を抱えてうずくまってるお姉ちゃんは放っておいて(というかそんな気にすることでもないんだけどなぁ)、話の続きをしていくよ」
現金 買掛金
(諸口/1,200)(次期繰越金/1,200) (次期繰越金/120)(諸口/120)
売掛金 資本金
(諸口/2,000)(次期繰越金/2,000) (次期繰越金/1,000)(諸口/1,000)
建物 繰越利益剰余金
(諸口/3,000)(次期繰越金/3,000) (次期繰越金/240)(諸口/240)
「これは前回やった資産・負債・純資産に関わる勘定項目だな」
「そうだね。ところでこの次期繰越ってグループの中でどれに入ると思う?」
「そりゃぁ三分法の時にやった売れたり使ったら費用、残れば資産と同じで、純資産に入るんじゃないのか?」
「実は、この次期繰越は勘定項目じゃないんだよ」
「そうなの?」
「費用・収益は損益という勘定に振り替えることで、ひとつの表をまとめるんですけど、資産・負債・純資産は特定の勘定に振り替えることはしないんです」
「あ、復活した」
「……もしかして、次期繰越が財政状態の表になるってことか?」
「あらら、思いの外早く気付いたね。財政状態を調べるために必要となる資産・負債・純資産に属する項目の次期繰越を合算したものをまとめたのが『繰越試算表』になるよ」
繰越試算表
(現金)50,000(借入金)2,000
(売掛金)20,000(資本金)10,000
(建物)2,000(繰越利益剰余金)2,000
「こんな感じにひとつの表にまとめるだよ」
「経営状態をまとめた『損益勘定』。財政状態をまとめた『繰越試算表』が作製でき、いよいよ当期の成績がまとめられるんです」
「『Profit and loss Statement(プロフィット・エンド・ロス・ステートメント)』略して『P/L』と呼ばれるものだね。他にも言い方があるけど、これだけ覚えておけば大丈夫だよ」
「っても『損益勘定』でまとめたんだから、なんで別にするんだよ?」
「あぁそれはね、ほら今まで習ってきたならわかるとおもうけど、仕入値が言い換えれば売上原価になるでしょ? それにたいしてどれだけ売り上げ純利益があったのか、貸付金にたいして受取利息がどれだけあったのかってのを、一枚の紙で見やすくするためなんだよ」
1 売上高 10,000
2 売上原価 6,000
売上総利益 4,000
3 販売費及び一般管理費
1.給料手当 1,400
2.販売手数料 500
3.貸倒引当金繰入 200
4.減価償却費 700 2800
営業利益 1200
4 営業外収益
1.受取利息配当金 200
5 営業外費用
1.支払利息 100
経常利益 1,300
6 特別利益
1.固定資産売却益 500
7 特別損失
1.固定資産除去損 300
税引前当期純利益 1,500
法人税等 500
当期純利益 100
「文字化けを避けるためにドットが入っていない勘定項目もアラビア数字にしていますが、実際の成績表ではローマ数字がよく使われます」
「行がもったいない気がするけど、『繰越試算表』も同じようなものだよ」
「ってか、それも一から書くと、読む人はうっとうしくなるだろ?」
「いちおう項目は説明しますので、今は『損益計算書』について説明しますね」
「1・2・3の項目は本業による経営成績。4・5は本業以外による経営成績。6・7は臨時で発生した経営成績だね」
1 売上高/2 売上原価/3 販売費及び一般管理費
「右記は先の『損益計算書』から1・2・3を抜き取ったものです」
「売上高は当期の売上合計。それから仕入値が売上原価になっていて、それを引いたものが売上総利益になるんだな」
「説明しようかなと思ったのにわかったから、なんとなくつまんないけど、これはあくまでP/Lでの表記だから注意が必要だよ。とはいってもほとんど使い方は大差ないけどね」
「売上総利益は別名『粗利』と呼ばれます。とはいえ頭にすこし入ってるだけで大丈夫です」
「3は従業員に対する給料が当期のあいだにどれだけ払われたのか、貸店舗なら販売するためにどれだけ費用を使ったのかなどをまとめたものだね。『販管費』と省略されることが多いよ」
「営業利益は売上総利益から『販管費』を引かれた金額で、本業での利益を指します」
「つまりこれを見れば儲かっているかってのがわかるんだな」
「そういうことだね」
4 営業外収益/5 営業外費用
「4・5は本業以外での収益と費用を示します。預金の利息や有価証券などの配当金などを書き込むことになります」
「気になってたんだけど『経常利益』ってのは?」
「経常的に生じる利益だよ『営業利益』+『営業外収益』-『営業外費用』=『経常利益』という計算だね」
「売上高・売上原価・販管費・利息などはどれも毎年変動しますからね」
6 特別利益/7 特別損失
「最後に6・7の説明。臨時で発生した収益・費用のことで、固定資産売却益(損)などが入るね」
「正月にお年玉をもらうのも特別利益になるのか?」
「毎月お小遣いをもらっているならそうなりますけど、社会人のボーナスは特別利益ではなく、賞与に含まれますね」
「以上の収益・費用を合計すると一年間の利益が算出され、その利益に対して税金が課せられます。税金を引いた残りが最終的な利益である当期純利益です」
「収益・費用をその所属する場所に書き込むことでP/L……『損益計算書』が完成されるんだよ」
「『損益計算書』の順番はあまり変わりませんが、これも空で書けるようになるといいですね」
「それじゃぁいよいよ勉強のラスト『貸借対照表』について説明するね」
「『貸借対照表』は英語では『Balance Sheet』と言って、『B/S』と呼ばれています」
「『B/S』は繰越試算表の数字を使って、体勢を整えて作製されます。次がその表です」
資産の部
1 流動資産
現金預金/受取手形/売掛金/貸倒引当金
有価証券/商品/前払費用
流動資産合計
2 固定資産
1.有形固定資産/建物/減価償却累計額/2.無形固定資産/ソフトウェア/3.投資その他の資産
固定資産合計
3 繰延資産
開発費
資産合計
負債の部
1 流動負債
支払手形/買掛金/短期借入金/未払費用/前受収益
流動負債合計
2 固定負債
長期借入金/固定負債合計
負債合計
純資産の部
1 株主資本
1.資本金/2.資本剰余金/3.利益剰余金
(1)利益準備金/(2)繰越利益剰余金
株主資本合計
負債・純資産合計
「以上が『貸借対照表』の主な項目です。会社にもよりますが、多くの場合はこのような順番で表記されます」
「やっぱり長くなったっ!」
「こ、これでも各勘定を見やすく分類してるんですよ。それじゃぁそれぞれに付いて説明しますね」
1 流動資産/2 固定資産/3 繰延資産
「流動と固定については、以前教えた有形固定資産(第十話)を思い出してください」
「えっと……」
「おねえちゃん、覚えてないって」
「(呆然)あっとですね。流動に該当するかは『営業循環基準』・『一年基準』に当てはまるかですね」
「たとえば、アタシが少年に商品を仕入れるでしょ? それでお金や商品、売掛金などの資産が『流動』するわけだね。これが『営業循環基準』になるんだよ」
「『一年基準』は期首から一年以内になくなる予定のものは流動に属するとする基準ですね。つまり一年以内に返却される貸付金や前払金が該当します」
「それじゃぁその二つに当てはまらないものが固定ってことになるのか」
「そういうことだね。ところで『繰延資産』だけど、これって実は無視しても別に構わないんだよね」
「なんとっ?」
「えっとですね、『繰延資産』という名前から資産って思われそうですが、属しているのは費用なんですよ。ただ効果が数年間継続しますので、期間配分するために資産に計上してもいいとされる資産なんです」
「まぁ、それほど重要視する必要もないんじゃないかな。それじゃぁ負債の部を説明するね」
1 流動負債/2 固定負債
「これもまぁ、資産の時に説明したものと同じだね」
「一年間のうちに変動するものが流動、しないものが固定ってことでいいのか?」
「なんとなく、そう思ってくれれば今は大丈夫ですよ」
純資産の部
1 株主資本
1.資本金/2.資本剰余金/3.利益剰余金
「最後に純資産の部の説明です」
「そういえば、純資産って初期の頃から名前は聞いてるけど、こうやってあらためて説明を聞くのは初めてだな」
「そういえばそうでしたね。ただその……純資産が変動することってほとんどないんですよ。だからこういう名前があるんだ程度で大丈夫です」
「決算振替で出てきた繰越利益剰余金は利益剰余金に属すよ。資本金や資本準備金は株主からの出資金だから、そうそう変動するものじゃないからね」
「以上、資産・負債・純資産の諸勘定をその属する場所に書くことでB/Sが完成し、会社(お店)の当期成績がわかるんです」
「なるほどなぁ、ところでなんで損益計算書なんて言うんだ? なんかそういう名前だと、損をしてるような気がするんだけど」
「そうですね、まぁ、損をしてもしなくても『損益勘定』で成績を出してるのでそういう名前になったんだと思いますよ」




