金は命より重い
「ところで、公人くんはものを買う時はなにを使って支払ってる?」
「そりゃぁ現金だな」
「大半の人は現金で支払ってるけど、中には銀行での振込をしているし、会社や商売になれば手形、前渡(受)金も使われるね」
「……クレジットカードの支払いは銀行からの支払いになるのか?」
「そうだね。クレジットカードは登録しているローン会社にもよるけど、ほとんどの会社は後払いとして登録している銀行の預金から支払われてるよ」
取引 50,000円の洋服をクレジットカードで5回払いという名目で仕入れた。
(商品)50,000(買掛金)50,000
「最初はこういう形で、商品(資産▲)を手に入れたけど、その代金が現金ではなくカードでの支払いになりますので、一時的に買掛金(負債▲)という形になります」
取引 先の取引の月払いに対して、利子3%を現金で支払うことになった。
(買掛金)10,000(負債△)(現金)10,300(資産△)
(支払利息)300(費用▲)
「そして最終的には商品代(50,000円)に支払利子(1500円)が加えられた買掛金が最終的な負債△になるね」
「だけど、利子を払うってのはなんか損をした気になるな」
「それじゃぁ、それに消費税(8%)を加えたものだとしたら?」
取引 先の取引の月払いに対して、消費税率8%、利子3%を加えたものとして、現金で支払うことになった。
(買掛金)10,000(現金)11,100
(消費税率)800
(支払利息)300
「単純計算で現金の支払いが55,500円になるのか?」
「そうだね。今回はわかりやすく小数点は切り捨ててるけど、実際は小数点以下の数字もあるから、単位にたいしての%計算もできないとね。現金ではなく普通預金からの振込もあるから、明細書を見るまでは自分がいくら使ったのかわからないって人もいるよ。ちょっとケチな話になるけど、明細を見るなら一円以下(大半は切り捨てられていますが)でも目をはなしちゃいけないってことだね」
「そうか。一円に笑うもの一円になくってやつだな」
「現金と銀行による資産の行き来は今まで習っているから、今回はこれでやめるとして……。それじゃぁ、次は手形について説明しようか」
「手形って、昔関所を通るために必要だったやつだろ?」
「まぁそうだけど、公人くんの思っているやつは今で言う大陸の国境を行き来するために必要となるパスポートに近いかな」
「会社間でいう手形というのは、証券取引の一種だな」
「証券って、話には何回か出ている有価証券のことか?」
「有価証券は国債や地方債だから、手形とは扱いが違うんだよね」
「えっと、どう違うん?」
「そうだな。国債っていうのは国が財政に必要なお金を集めたもの。地方債は地方が集めた金だ」
「こんがらがってきた」
「ようするに、たとえばこういう取引があったとするよ」
取引 一口300円の有価証券を現金で100口購入した。
(売買目的有価証券)30,000(現金)300,000
「これで公人くんはその有価証券を30,000円持っていることになる」
「購入して、将来お金になるから資産▲にはいるんだな」
取引 30,000円で購入した株式を35,000円で売却。手数料500円を引いた残りを入金した。
(普通預金)34,500(有価証券)30,000
(有価証券売却益)5,000
「あれ? 手数料で500円引かれてるのに、それは仕訳に書かないのか?」
「しっかり取引のところを見てるね。有価証券を購入した金額に手数料も含まれるから、購入した時の支払金額と一緒にしていいんだよ。売却した時も同様だね。購入時よりも株式の値段が上がっているから、その分が『有価証券売却益』という形で収益▲になるよ」
「そして株式が購入していた時よりも△だとその分損をしているってことだな」
取引 30,000円で購入した株式を25,000円で売却。手数料500円を引いた残りを入金した。
(普通預金)4,500(資金▲)(有価証券)35,000(資金△)
(有価証券売却損)5,000(費用▲)
「資産は売ったから増えてるのはわかるけど、その分、『有価証券売却損』が入るのか」
「結果△5,500円の損失だね」
「どんな大企業でも株値は神のみぞ知るだ。、ストップ高になるとは思わず、ここで一度売ろうと思ったら迷わず売ったほうがいいな。突然暴落して、見る見るうちにストップ安になることだってある」
「円相場に対しても同じだね」
「潮時を見極めるってことか。一番難しそうだな」
「多分それができれば、みんな簡単に億万長者になってるよ」
取引 取引先に20,000円の商品を販売し、代金は約束手形で受け取った。
(受取手形)20,000(資産▲)(売上)20,000(収益▲)
「手形には『約束手形』と『為替手形』の二種類があるんだ」
「約束手形は言葉からして、売掛金(買掛金)とにたやつだとは思うんだけど、為替手形ってなんだ?」
「……小切手って聞いたことある?」
「うんと、ドラマで金持ちのボンボンが懐から細い帳簿を取り出して、それにスラスラって数字を書いて、レストランとかの支払いをしたりするやつか?」
「そう。それが小切手、それで支払った場合も手形取引っていうの」
「演出上冗長をしているが、手形は『手形の振出人(支払いする人)が、支払期日を指定した上で、手形金額を受取人に支払うことを名あてに依頼』した証券取引だな」
取引 2,000円の花を販売目的で購入。それを小切手で支払った。
(仕入)2,000(費用▲)(当座預金)2,000(資産△)
「あれ? 手形取引じゃないのか?」
「ちょっと小切手に関してのお金の流動の説明をするね」
一・買い手が持っている当座預金口座にお金を預ける。(資産▲)
二・銀行が小切手帳を発行する。(これで小切手が使えるようになります)
三・商品を仕入れる。
四・それを小切手で支払う。
五・売り手は買い手から受け取った小切手を銀行に渡す。
六・手形交換所を通じて小切手を交換・決算する。
七・買い手の当座預金口座から小切手に記された金額が引き落とされる。
八・売り手が発行をお願いした銀行に、七で引き落とされた金額が入金される。
九・右記のお金が預金、または現金として売り手の手に渡る。
「要するに、小切手帳をもった公人くんがそれで買い物をしたら、キミの銀行口座から買い物した代金が引き落とされて、それが売り手に支払われるってことだね」
「一瞬のやりとりの中でこんなことが起きていたのか?」
「だから仕訳では銀行から引き落とされたことで『当座預金』(資産△)になるんだな。手形取引も基本的には同じだ」
「約束手形は『誰(買い手)がいつ(期日)、誰(取引先)にいくら』お金を支払うかを約束した証券ってことだね」
「うーん、でも今までも話に出ている掛取引とやりとりは似てるんだよな?」
「性質上はね。でもこっちのほうが信頼性は高いんだよ」
「え? どういうこと?」
「要するに、掛取引はあくまで払えるかどうかもわからない金銭での取引でしかないんだけど、手形取引は銀行口座から引き落とされることが大前提の取引だから……」
「もし、代金よりも銀行の預金が少なかったら、現金(振込金)としてお金が引き落とせないってことか?」
「そういうことだね」
「ない袖振り回しても出ないだろ? それと一緒だ」
「この口座預金不足による不払いを『不渡り』と言って、それを出した会社にはペナルティを受けることになるんだよ」
「一種の反則ってことか」
「しかもそれを半年に二回侵すと、銀行との取引が一切できなくなる。つまり銀行口座に預けていたお金が鐚一文使えなくなっちまうってことだな」
「サッカーで言うレッドカード(退場)を喰らうってことか」
「事実上、倒産ということになるから」
「だけど、掛取引だって後払いだよな? それに将来お金が入るかもしれないのに、ちょっと厳しすぎないか?」
「たしかにそうだろうけど、掛取引は期日が決まっていないでしょ? これが大きな違いなんだよ」
「期日までにその代金分のお金が口座になかったら支払えないと、それが買い手の倒産に直結するからな。だから掛取引よりも信頼性が高いんだ」
「……要は、光熱費とか電話代の支払いを滞りすぎた制裁として、それを止められたってやつと一緒か?」
「そう、そのとおり」
「一番わかりやすいたとえだね」




