転生3
森の中の小さな広場
勝手に私がそう呼んでいるお気に入りの場所には、一際大きな古木が1本、その周りが少しひらけていて、その古木がシンボルとなりちょっとした広場のようになっている。
うんと高いところに葉が天井のように広がっていて、切れ間からは木漏れ日が差し込み、そこらじゅうキラキラとしている。
時々訪れる静寂と、澄んだ濃い空気を纏い、
まるで時の流れがゆっくりになったように思えるその場所に一歩足を踏み入れ、大きく深呼吸して息を整える。
前世が蘇ったことで、ぴったりの言葉をみつけた。
「パワースポットだよね、ここって」
一際大きな古木のしっかりと根の張った地面に、座るのにちょうど良いポジションがある。
私の特等席だ。
「キュ!」
あ、今日もきたか。
ここにくると、顔を合わせる謎の生物。
リスみたいなフォルムに、イカ耳ぎみのもふもふの何か。
これはいったいなにかの幼獣?なのか。
昨日までは、なんの疑問ももたなかったが、今となっては、謎すぎる生物。
とりあえず、可愛い。
とにかく、可愛い。
故に、無心で撫で回す。
気が済んだところで、何もない宙に、指でホールケーキとロウソクを描く。
「10歳だって。おめでとう、シオン」
人ごとみたいに言ったあとに、ふーっと息を吹きかけてロウソクの火を消す。
誰も見てないよね??
ちょっと痛いヤツっぽくて恥ずかしい。
まぁいいか!子どもの特権ということで!
それはでは今日の本題へいこう。
魔法。
ってそもそもどうやって使うんだろう?
魔力がないとダメだよね?
これまでの私が知っている魔法に関する知識知識だと、
魔法を使えるのは貴族のみ。
貴族の子どもは学園に行って魔法や貴族の役割を学ぶ。
うっすい情報だな…
よし!ものは試しだよね!
魔力ってものが、わかるかさぐってみよう。
ん?
う〜ん…ん?
うん、うん…
うん。わからん!
確かラノベとかだと、よくあるのはイメージが大事だとか。
体に巡る魔力…
目を閉じて体内の何か熱いものを感じるんだ。
ふむ。ふむふむ。
さっぱりわかりません!
待って、私、魔力ゼロパターン??
「キュ?」
謎の生物もふもふが、とぼけた顔してこちらをみている。
いや、諦めるのはまだ早いぞ!
じゃあ次は、
イメージで魔法が発動できるか、試してみよう!
メジャーな魔法から。
まずはこっち方向に両手を前に突き出して、水をイメージ!
むむむ、ふんっ!
「キュ…」
あれ?水どこ?
てか、なんか急に湿度が上がった?
…あ、加湿器、かな?
じゃあ、次は火!
いや待て待て、森の中で火はやばい。
今日はやめておこう。
それなら次は、土!
この辺の土がいいかな?
この土で、ステキな城を築くぞ…!
むむむー!
ふんっ!
ゴゴゴゴー
「キュ?!!」
え?なんかすごい音がした??
気のせいか…あれ?なんか向こうの方に、ぽこぽこした塊が沢山できてる!?
いや、あれは元からあったのかも。
めちゃくちゃ土の匂いがする。
しかし、疲れるな。
何かあるといけないし、初めてだから慎重にやってると、集中力と注意力で、かなり体力が削られてる。
次は、風!
今度はこっちのできるだけ広い方向にっと。
空気が回って回って、竜巻みたく。
「うわ!」
「ギュー?!!」
一瞬何か手から飛び出した気がして、目を瞑っちゃた!
かすかに向こうの木の葉が揺れた…か?
「はぁはぁはぁ、はぁ〜」
これだけやっただけなのに、はっきりした手応えゼロ。ただただ脱力してへたり込む。
ちょっと…ハードル高すぎじゃない?
カウントしてもいいものか不明だが、
成果が加湿器とポコポコだけ!??
その成果も本当かどうか怪しい。
やっぱり独学だと厳しかぁ。
魔法って、意外と難しいんだ…。
前世の私のラノベの知識、不発ぎみ。
今日はここまでにして、もう少し情報を集めないとダメそうだなぁ。
でも、諦めるにはまだ早い。
「あ、もう夕飯の支度する時間だ!またね!もふちゃん、気をつけて帰るんだよ!」
せっかくの異世界。
なんとなくできそうな期待を胸に
もふもふを見送り私も見送られつつ、孤児院への帰り道を急いだ。




