転生2
「いっ…!!た…くない?」
たった今、誰かに刃物でさされた感覚とともに目が覚めた。
夢?!
いやいや、あれは…前世ーー!?
「はっ!これって噂の異世界転生!?」
「ん…シオン、うるさい…」
同じ部屋に寝ていた子に怒られて、慌てて口を塞ぐ。
お静かに。
私の名前は、シオン。苗字はないただのシオン。
今日が推定10歳の誕生日。
同じ部屋には8人くらいが一緒に寝ている。
ここは街の外れにある、しがない孤児院だ。
「うん、私の転生、どうしてこうなった?」
前世で、悪役令嬢系のラノベを読みまくっていたからか、女子の転生先といえば、良いとこの貴族令嬢悪くてもそこらの貴族令嬢かと、勝手に思ってしまった。
まあ、孤児院スタートならもうそれはそれで仕方ない。
とはいえ、10歳の誕生日に前世を思い出させてくれるなんて、神様もなかなか粋な計らいをしてくれるじゃないの。
刺されに行って死んだけど…そこは誰かを助けたと思いたい。
「よし、とりあえず支度しよ!」
いつも通りやることをチャチャっと終わらせて、今日は早めに切り上げ、
私だけの大好きな秘密の場所で、特別なことをして過ごそう。
そうと決まれば、爆速で顔を洗い、神様への感謝の祈りを一瞬で捧げて、廊下と食堂の掃除をしたら厨房へ突入。
一日のやるべきことを思い出す限り、こんな廃れた孤児院でも、やることが盛りだくさんのようだ。こちらの世界でも。
メニューは、カチカチのパンに薄いスープ。朝食も夕食も変わらない。調理さえ覚えてしまえば作るのは簡単だ。
みんな揃って感謝の祈りを捧げ食べ始める。
「もっと食べたいなぁ…」
隣で下の子がつぶやく。
「食いしん坊さんだなぁもう。はい、どうぞ」
「やったぁ!ありがとう、シオンちゃん!」
喜ぶ顔が嬉しいし、元気にしっかり育ってほしいからつい分けてあげちゃうんだよね。
「シオン、おまえこそしっかり食べろよ〜。力が出ないぞ!」
「大丈夫、心配してくれてありがとう、カイ」
呆れ顔で声をかけてきたのは、幼馴染のカイ。
「よし!シオン。今日は、おれと剣の練習だ!!」
「カイ、それ、ただ遊びたいだけでしょ」
「ち、ちげーよ!わかってねぇなぁ、シオンは」
「その役は、今日はノアに任せるわ」
「なんだよ〜」
カイの相手役は、他の子に任せる。
今日は仕事を早めに片付けたいからね。
「せかいは、本当ははひっろいんたぜ!おれたちはまだ知らないだけで。危険なつっよい魔物もいるんだ!だから、今から剣じゅつを鍛えて、おれは冒険者になる!」
「はいはい、頑張れー自分の仕事してからねー!」
「ちぇー」
相変わらずの子どもらしいやりとりに、クスッと笑う。
あとで少しくらいは手伝ってあげようっと。
自分の次の持ち場に向かおうとしていると、院長と外の大人がやってきてので
挨拶をして通り過ぎる。
最近は外の大人がやってくることが増えた。
外の大人は、今の私には少し怖い。
「そうね、でも大丈夫。怖い人ばかりじゃないの。良い子にしていれば、何も怖くないのよ」
と院長は言っていた。
掃除をして、洗濯をして
備品を整えて、買い出しのリストを作って、買い出しに行って、
ご飯の支度に、合間にみんなの面倒をみる。
良い子にしてると
どうなるんだっけ?
なんてことが頭を過ぎるも、今日もやるべきことをこなして
束の間の自由時間を手に入れた。
この時間を待ってたのだ。
誰も祝ってはくれないけれど、今日は、私の10歳の誕生日。
転生したからには、絶対にやってみたいことがある。
そう。異世界転生といえばーーー魔法でしょ!
はやる気持ちを抑えきれず、孤児院に隣接する森の中へ一直線に駆け出していた。




