転生1
徹夜続きの仕事、ポツンと明かりのついたオフィス、エナジードリンクの空き缶と、何倍飲んだかわからないコーヒーカップがデスクに並ぶ。
(これを仕上げたら、終わり!!よし、今日は…やっと日曜日。帰れる…!!)
白み始めた東の空を尻目に、
最後にコーヒー淹れ直し、ラストスパートをかけた。
◇
「すまないが、急に連絡が取れなくなったやつがいる。今日中にこれを仕上げてくれないか?」
「はい」
「先輩、すみません、これ明日までに提出しないといけないんですけど、今日どうしても外せない用事があって…」
「わかった、やっとくよ」
「ありがとうございます!」
「○○さん、これっていつもあなたがやってる仕事じゃないの?ちゃんとやってくれないと困るんだけど」
「…承知しました」
毎日のように積み重なる仕事。
「あいつがいるだろう」
「あの人に任せとけばいいんじゃね?」
「くすくす。あの子ほんとお人好しだよね」
「いいじゃない、できる人がやればいいのよ」
「勝手にやってるんだからやらせとけばいいでしょ」
「いい子ぶって、昇進するわけでもないのに」
「いいように使わせて貰えばいいのよ。それがあの子のお似合いのポジションじゃない」
他の人から見た私の評価。
本当はわかってる。
こんなことやる必要がないって。
いくらやったところで、居心地もよくない。
いつからこんな風になったのかわからない。
先回りしてやる。
誰もやらないからやる。
誰の仕事でもない事も気づいてしまったからやっておく。
困ってる人には手を差し伸べたいからやる。
誰かの役に立ちたいからやる。
誰かに喜んでもらえると嬉しい。
何かの役に立てると嬉しい。
だからつい、引き受けてしまう。
でも、自分のことはいつも後回し。
ーあれ?誰かって誰?何かって何?…一体誰のための人生なんだろ?
◇
すっかり明るくなった空。
フラフラになりながらも会社を出て、電車も降りて駅を出ると、目に映ったのは、休日の平和で穏やかな光景だった。
(ああ、平和が一番。私は、この平和な日常のために……)
その時、平穏な光景の片隅に刃物を持った人物を見つけた。
「は?!」
と思ったのも束の間、疲労でハイになっていたのか、途端に全てがスローモーションになり、疲労と使命感が混ざった思考が駆け巡る。
(こんなに平和で穏やかな日常を、命を、なんだと思ってるの!)
体は勝手に動き出していた。刃物を持った人物の前に飛び出した。
と同時に、時間の流れも一瞬にして通常再生に戻った。
「くっ…!…あんたね…」
何があったか知らないけど、他人の命、そんな簡単にそんなに奪おうとしないでくれる?!
と言ってやったつもりだったが、そこで言葉も意識も途切れた。




