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情報社会における作家稼業

 今では当たり前になってしまったけれど、インターネット上で個人が動画を配信するなんて、昔は考えられなかった。動画といえばそれはテレビのことであり、カメラにしても編集にしてもそれを専門とする職業があり、電波の権利を持つテレビ局が大きな覇権を握っていた。個人が動画の配信に関与するなんて、とても想像ができなかった。


 インターネットの整備は、動画の配信だけに影響したわけではない。文字ベースのテキストは勿論のこと、写真やイラストといった画像データに関しても、個人が世界に向けて発信できるようになった。これら情報が、歴史的にどのように扱われてきたかについて、少し振り返ってみたい。


 文字の誕生はメソポタミア文明だそうだが、その用途は収穫された麦の貯蓄や分配、また人民の動向を情報として王に報告することが目的だったと考えられる。その上がってきた報告に対して、王は未来を見据えて何かしらの決裁を行った。狩猟採取時代と違って、農耕文化は数万人単位の人々が協力し合わなければ国家が成り立たない。街のインフラを整備し、通貨を発行し、法律を制定し、農業や生産それに販売といった様々な職業が誕生することで、国家が回り始める。その様子は、パソコンの世界をイメージすると分かりやすい。様々な命令形のプログラムを統括するOSが存在していて、逐一情報が交換されている。構造が良く似ている。


 国家と人民の関係は、情報によって関係しあっている。多くの場合、国家が人民を制御した。その方法は、法律という情報を整備することで人民を統制し、通貨という情報を発行することで流通を制御し、現代においては、新聞、テレビ、SNSを駆使して思想を制御しようとした。これは善いか悪いか別にして、国家を運営する場合、必要な処置だった。


 ところが、このように川上から川下に流れていた情報が、国家から人民に流れていた情報が、現代においては、逆流もしくは四方八方に拡散し始めた。それが、このインターネット革命だと考える。これは人類がこれまでに経験したことがない世界。個人が個々に情報を発信し、インフルエンサーが誕生し、個人でありながら世界に影響力を持つ人々が増えてきた。資本主義経済圏ではこの動きは特に顕著で、国家に物申す人々が増加していく。インターネットを通じて、個人が力を持つ時代が到来した――と思った矢先に、今度はAIが誕生した。


 トランプは、AIをSIつまりスーパーインテリジェンスにしよう――と言ったらしい。また、最近では、AIの脅威が叫ばれている。AIについては、その賢さばかりがクローズアップされているけれど、それだと本質を見落としてしまう。AIの本質は、膨大になり過ぎて誰も制御できなくなった情報を整理し、管理し、アクセスする力――だと思う。


 古代において、国家運営の為に情報が必要だったのは、麦の収穫量やその消費量が、国家の存亡に直接関係したから。この場合、本来の価値は麦にあり、情報はそのことを伝達する為の手段でしかなかった。ところが、現代においては、その食えもしない情報に大きな価値を置いていて、振り回されている。ここに本末転倒があるような気がする。


 情報は、鏡に映った虚像でしかない。その幻に、人々は踊らされている。僕は、インターネットの情報が無駄だと言いたいわけではない。現に、このようにネット上に僕は文章をアップしていて、誰よりも利用している。重要なのは、情報に自分の権利を任せない。情報は、道具として使う。これが大事だと思う。そうは言いつつも、AIに自分の人生の選択を任せる人々が増えていくんだろうな――と思ったり。


 そうした情報発信源のひとつYouTubeで、最近、頻繁に見ている内容がある。職業作家の生の声。わかつきひかる、石田衣良、北方謙三、岡田斗司夫、山田玲司といった面々になる。小説家、アニメ、漫画と、ジャンルは違うがいずれもクリエーターになる。物語のつくり方とか、作家の体験談とか、僕の好奇心を揺さぶる内容が盛りだくさんで面白い。そうした彼らに共通する認識があった。


 ――クリエイティブな世界は、先細る。


 特に、小説家は儲からない――そうだ。一昔前に比べて、本屋さんが廃業していくし、紙の本よりもネット小説が主流になってきた。コンテストで新人賞をとっても、生き残るのは一握り。本が売れなければ消えていくだけの、サバイバルな世界だそうだ。情報を扱うAIの時代に、それでも人間が小説を書くとは何なのか? ――そのような世界の中で、第一線で頑張っている北方謙三が言っていた。


 ――書くとは、生きることだな。

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