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産屋と生成AI

 産屋という言葉を初めて知ったのは、鬼滅の刃に登場するお館様でした。苗字を産屋敷と言います。漫画を読んでいる時には、変わった名前だな~くらいにしか思っていませんでした。その後、聖徳太子の物語を書く段階で、この「産屋」という存在を知ります。切っ掛けは、奈良県桜井市にある日本最古の市場である海柘榴市でした。以前に「海柘榴市と巫女」というテーマで文章を書きおろしたので、ここではその内容を繰り返し述べることはしません。ただ、産屋の存在に至った経緯に生成AIが活躍したことを、今回はご紹介したい。


 古代における日本社会の構造を解説した資料は、ほとんどありません。古事記や日本書紀はありますが、これは天皇家の物語で、これらの資料から古代の人々のリアルな生活感を感じるのはちょっと難しい。古代における海柘榴市の存在もそうでした。


 僕は中央卸売場で仕事をしていることもあり、市場や流通に関して知識があります。ただ、そうした現代の知識で、海柘榴市の世界観を理解するのは困難でした。先ず古墳時代には貨幣がありません。貨幣に代わるものとして絹織物や米がありましたが、それらの物品貨幣で商売が成り立っていたとは思えません。なぜなら、相場を示す単位がないし、物品貨幣は携帯性が悪いし、何よりもそうした物品貨幣は豪族の長が管理しており、民衆には無縁だったと考えるからです。


 この海柘榴市での取引についてAIと問答をするなかで、「供養」という行為が取引における動機であったと仮定しました。つまり、各地の豪族が大王家に供養を持ち寄り、その供物を再分配する行為が、現代でいうところの市場を形成していたのです。その差配に蘇我氏が関与していたと考えます。


 この供養ですが、年がら年中に行われていたとは考えにくい。各地の豪族は奈良の桜井市から遠く離れた場所に領地があります。供物を運ぶのなら、米の収穫を祝う新嘗祭が適当でしょう。これなら理解が出来ます。日本各地の豪族は、大王家に供物を運ぶ対価として、それ以外の商品を持ち帰っていた。このように考えると、海柘榴市の市場としての価値が生まれます。


 ところが、この海柘榴市での市場取引は、春にも行われていました。それが分かるのは、善信尼の刑罰が海柘榴市で行われたからです。その季節が春でした。その理由についてAIと問答をすると、田植えに関する苗や鍬や鋤といった農具の取引が海柘榴市で行われたのだろうと推測しました。ところで、この海柘榴市が開催される時期は歌垣も催されます。歌垣の後には、男女による性行為が行われました。


 ――ん!?


 海柘榴市にどれだけの人が集まったのかは分かりませんが、100人とがではないでしょう。5千人、それとも1万人。正確な規模は分かりませんが歌垣は大規模なお祭りだったと考えます。その後、大規模な性行為が行われ、甘い声が至る所で聞こえるのです。人間は動物のような季節的な発情期はありません。しかし、歌垣によって人為的に発情期が固定されていたとしたら……。


 AIとの問答でこの仮説に至った時は、震えました。イメージし難かった古代社会が、途端にリアルに感じたからです。歌垣の影響によって、同じタイミングで子供が誕生するとしたら、次はその大量の妊婦をサポートするためのインフラを整備しなければなりません。現代であれば産婦人科ですが、古代においては産屋になります。産屋に関しては、日本書紀にもその実在が示されています。


 産屋についての資料はありました。産屋は神社の傍に建てられ、神域になります。男子禁制で、女だけで運営されていたそうです。資料には無かったのですが、産屋における女社会に巫女が存在していたと仮定しました。男の子も女の子も全て巫女の差配によって誕生していたとしたら、古代における巫女の権威は大きかったでしょう。


 ただ、古事記や日本書紀には、巫女の記述はほとんどありません。というか、ワザと巫女の記述をしなかったと考えます。なぜなら、大陸的な男系社会による律令制度を確立するためには、巫女の存在を消すことが合理的だったからです。


 そのような巫女の影響力が強い古代社会を表現するために、聖徳太子の物語の冒頭は、産屋による出産の現場を舞台にしました。額田部皇女には、古事記に登場するアメノウズメのように踊ってもらいました。その冒頭の内容については、前回にアップしましたので、ご興味のある方は読んでみてください。


 産屋に至るまでの思考実験は、生成AIとの問答なしでは実現できませんでした。また、篝火や梓弓それから祝詞など、これらの小道具もAIと問答をしながら表現しています。今後は、伊勢神宮の斎宮制度がなぜ誕生したのかを記していくのですが、この思考実験もAIに助けてもらいました。僕の物語は史料をベースにはしていますが、仮説に仮説を積み上げていくようなところがあるので、その検証にAIの存在がどうしても必要です。凄い時代になったと思います。


 いま、小説を書くのが楽しい。良い作品にしたいので、書きながら推敲も同時進行しています。前回にご紹介した冒頭部分は、3分の1くらいは書き換えました。それ以降の話と整合性を持たせるためです。丁未の乱までなら、大体のプロットは考えたのですが、それも今後は変更が繰り返されるでしょう。僕が創造している物語ではあるのですが、僕が一番の読者だったりします。先が見えない。かなり面白いです。

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