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黒のメイド  作者: 藤本 寛那
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予備知識

 しばらくの間沈黙が続いたかと思うと、急にセイが持っていたバッグから何かを取り出した。何かと思えば、いつもよく見ていた資料じゃないか。

「あなたに行く気があるというのなら、予備知識くらいつけておいてもらわなければ。」

セイはそういうと、淡々と資料の説明を始めた。その内容は主に謎の組織ホワイトについてのことだったが、真悟様やご主人様が狙われる可能性があったことも表情を少しも変えることもなく説明していった。

説明があと少しで終わると思われた頃。ご主人様がバンッと大きな音を立てて机を叩いた。その音に少しびっくりしてご主人様の方に視線を向ける。ご主人様は小さく震えていた。やはり怖いのだろうか?大きな組織に、私たち少人数で立ち向かうのだから、無理はないが、その覚悟はもうとっくに決まっているものと思っていたのに。

「そんなことはもう調査済みだ!」

ああ、そうか。ご主人様は恐れているんじゃない。怒っているのか。けれど、どうしてそんなに怒ることがある?早く助けたいのはわかる。けれど、こういう作業も大切だと分からないほどご主人様は子供だったのか?

「警察にちょっとした知り合いがいてな……。そんなことはもうわかってるんだ。早く助けに行かせてくれ……。」

その声は、まるで嘆きの声のようだった。怒りの中に、寂しさが隠れ、不安が満ち溢れている。いろんな感情が、彼の中で渦巻いているのがわかった。彼もまだ高校生なのだということが、心の底からよくわかった。助けてと叫びたがっているのが、よく、わかった。

ガタッと、ご主人様が椅子から立ち上がった。そして、本当に小さく、今にも泣き出してしまいそうな声で

「……すまない。」

とだけいうと、玄関から家を出ていった。足音の向かっている方角からして、お嬢様の様子を見にいったのだろう。ヤミを護衛につけて行かせるべきだろうか?不安だ。あんな状態であまり外に出るものではない。今、事態が事態なだけ、余計に心配に感じる。

「……すみません。」

セイが俯きながら謝った。セイは悪くないのに。悪いのは、逆切れして家を出ていったご主人様の方だ。場の空気を変えようと、何か話題を探す。そういえば、さっきから気になっていたことがあったっけ?

「そういえば、どうしてさらわれた可能性があるってわかったの?」

可能性があるってどういうこと?ずっとそばについて護衛していたんじゃないの?

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