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マナの大樹と世界の歴史


 マナ・ブレードとマナ・ソードで同時に斬り裂かれたガイムの身体は、霧散してローブだけが大地にふわりと落ちた。 それを、リティアとアディンは呆然と見つめている。

 「……あいつ……」

 リティアの防御や反撃も、自分の援護も間に合わないタイミングだったはずなのだが、何故か二人の武器はガイムの身体を斬り裂けたのだ。

 「……これがあんたの望む決着だったの……?」

 マナ・ブレードが消失し、アディンの刀身からも光が消えたが、二人共まだ動けないでいた。

 『……戦いは終わったようだね、アディン・ランディール……』

 不意に聞こえた男性の声はリティアは知らなかったが、「……マナの大樹」と会いディンが言った事で理解した。

 『よく私の元へ来てくれた、ありがとう……』

 「あたしは……」

 天宅聳え立つ壁か崖とも思える幹を見上げながら名乗ろうとすると、『分かっているよ、ソレイユのリティア・リュミエーラ姫』と大樹が言った。

 マナの大樹はこの世界のすべてを”視る”事が出来る、正確には違うのだが表現としてはそれが適切らしい。 だから、リティア達の旅はだいたい把握しているのだと言った。

 『だが……”視える”からといって声を届かせること、ましては先のように力を貸せる事が自由に出来るわけではない。 頼みごとをしておきながら何も手伝いをしなかった事は謝罪する……』

 戦いの最中にアディンに語り掛けてマナ・ソードの力を貸したのも、ここまで近くに来たから出来た事なのだ。

 「謝る事ではないんですけど……えっと……」

 聞きたいこと、言わなければならない事がいろいろとあるのだが、それが何なのかアディンが言葉に出てこないのは、いざこの時がくると何から言うべきか分からないでいるからだった。

 『慌てる事はない、じきに君の仲間が……レイト・ヴィヨンドとスレイ・チコット、それにユグドラ人のヴァン・グドールがやって来るだろう。 彼らが来てからきちんと話しをしよう』

 そう言ったマナの大樹は、リティアが「エルスは? 来ないの?」と聞いてきたのは意外だった。 敵である者を気にするのは分かるのだが、彼女の言いようはそういう意味とは違いように感じられたのだ。

 『あの亡霊は去った……ガイムの滅びは彼らにも伝わってるようだからね』

 「そっかぁ……ガイムの事、話して謝らないといけなかったんだけど……」

 言葉の意味は、アディンには理解出来たが大樹は「……は?」と首を傾げているような声を出しただけだった。

 

 

 

 レイト達が合流すると、『それでは話そう……』と大樹が語り始めた。

 『……君達がマナの大樹と呼ぶ私という存在が何者でどこで生まれたのかは、私自身にも分からない。 気が付いた時にはこの大地に芽吹く大木として存在していた』

 その頃はニンゲンや動物どころか草木一本も存在しない死の大地だった。 そしてそこから更に長い長い時間が立ち、自分が今でいうマナを放出していてそれがこの世界を包み始めていると理解した。

 同時期に、どこからか飛来した”星”が大地に衝突し水をもたらし、赤く燃える星もいつの間にかこの大地の周囲を回り始めた。

 『これは予想だが、燃える星……太陽はこの宇宙のどこかに存在する文明……君達とも月の亡霊とも世界が創り出したものだろう』

 「……えっと……どゆこと?」

 リティアの問い『それ以上の事は分からない』と大樹は答えた。

 「まあ、その水と太陽のおかげで今の俺達がある……というだけでいいだろう?」

 「……ですね、私達には途方もなさ過ぎますし、過ぎ去った大昔の事は考えても仕方ありません」

 レイトやスレイの良い通りだと思い、リティアは先を促した。

 『そこから更に時は流れ……大地と宇宙空間を隔てる”マナの壁”が十分なものとなり、空気がその中を満たしていくと植物が生まれ始める……』

 やがれ大地が緑に包まれ小さな動物も現れ始めたころに、リティア達の先祖が”やって来た”のだ。

 「……やって来ただと? 我らは自然に誕生したのではない……?」

 ヴァンの驚きは、他のみなも同じだった。

 「どうやら彼らは別の世界の”ムー”という場所からやって来たよだね、その大地が崩壊しその時になんらかのトラブルで時間や空間を超えた……らしい……」

 ともかく、そのニンゲン達はこの世界に適応し文明を発展させていく。 マナの力を使った魔法を創り出したりたのもその過程だった。

 長い時間の中で戦争のような行為が何度もあったものの、大樹の感覚で見れば概ね平穏にニンゲン達は生きていた。 また、その頃にはニンゲン以外の生き物も多種多様に進化を遂げている。

 『そしてやって来たのが亡霊達だった、今のニンゲン達では彼らに勝てないと判断した私は一部の者に戦う力を与えたのだ』

 この頃には大樹はこの世界で生きる命達に好意を抱くようになっていた、彼らを失いたくない、ずっと見ていたいと思うようになっていた。

 「それが我ら……ユグドラ人か……」

 『ええ。 これがこの世界の誕生からの歴史、私が視てきたもの……』

 そして今という時代になった、自分の寿命もそう長くないと本能的に理解し始めた。

 それが一年後なのか百年後なのかは分からない、しかしこの世界で生きる命を出来れば見捨てたくなかった。 そんな時に感知したのが自分と同一の存在の種子だったのだ、それをこの大地に芽吹かせ第二の大樹とすれば、少なくとも自分の消失で命が滅ぶことはない。

 しかし、それには、第二の大樹がこの大地の命を守れるくらいになるまでは途方もない時間が必要だった。 つまり間に合わないかも知れないのだ。

 『だから私は種子を取り込み”転生樹”となる事にした……』

 種子と一体化し、自分の力と身体で種子を一気に成長させる……無謀にも思えるが成功の見込みは十分にあると説明した。

 『その結果、私は私でなくなるだろう……私の記憶や知識を持った新たなマナの大樹が誕生する』

 「それって……あなたは死んじゃうって事じゃない!?」

 転生などと言っても死には違いない、そして一度死んだニンゲンは二度と帰ってくる事はないのだ。

 『……そうとも言うかな。 でも、それでも私はこの世界も命を、彼らの未来を守りたいんだよリティア姫』

 命は滅びるが、彼らが生み出す新たな命が世界を存続させるように、自分にも単に世代交代の時が来たのだと大樹は諭すように言う。

 『だから、君が気にする事ではない。 私はこの世界の未来の為に私が出来る事をするだけだ?』

 そう言われてしまえば、まだ納得できなくても何も言い返せない。 それに自分が同じ立場ならきっと同じようにするんだと思えた。

 「うん……でも、ありがとうは言わせて……」

 『ええ、それで十分だよ……アディン、君には迷惑を掛けてしまったね』

 少し驚いた表情をした後に、「自分の世界を助けるためですらね……」と笑うアディン。

 「それに、リティア姫達と旅を、冒険が出来た事は僕にとっては良かったと思うから……」

 リーネの村にいては出来ない経験もしたし、何より今となっては楽しかったとさえ思えている。 苦労どころか命の危険もあったが、十分に見合うものを得られたと考えている。

 「アディンも言うようになったものだな……まあ、このリティア嬢に最後まで付き合えただけでもたいしたものと認めるしかないがな?」

 「あははは……確かに最初を思えばアディン君はがんばりましたからね」

 レイトとスレイが褒めてくれるのが少し照れ臭かったが、この二人に少しでも認められるのは誇らしい気持ちにもさせてくれた。

 「マナの大樹よ……我らユグドラ人は、新たな大樹もこれまで通りに命をとして守るでしょう、ご安心を……」

 『ええ、頼みますよヴァン・グドール……いえ、ドラゴンの力を持つ者達……』

 ヴァンが「御意……」と頷くのをみた大樹が、『それでは始めよう……』というや否やアディンの身体が光を放ったが、彼には驚きはあっても脅えや不安そうな様子はない。

 やがて光がアディンを離れその前で楕円形になり消失すると、代わりにそこにはこい茶色をした植物の種が浮いていた。

 「これがマナの種子なのか……これが空から墜ちてきた星の正体なのか……」

 「……みたいですね、レイト君……」

 『君達はもう戻りなさい。 これから先は私にも何が起こるかは分からない、君たちがここにいては危険かも知れない……』

 何が起こるのか見届けたいというのも心情だったが、大樹の言う事ももっともだ。

 「……うん。 じゃあ、みんな……帰ろう」

 リティアの言葉に、全員が頷いたのだった……。




 それから数時間後にマナの大樹を淡い光が包み込み、しばらくして消えた……。

 しかし、まだ明るい時間だった事もありその光を目撃し、何を意味するのかを知るものはリティア達以外にはいなかった……。




 


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