ガイム戦
マナの大樹のまさに根本に、ローブ姿のガイムは佇んでいた。
大気中のマナの濃度が樹海のよりも更に濃いとはっきり感じられるこの場所にいるのに、マナが弱点が月の亡霊が居続けるのにあのローブでどこまでの効果があるのだろうとリティアは考えた。
「……リティア姫とアディンか? エルスが通したというならそれも良かろう」
エルスを倒さずに二人で先行する理由はない、戦いで彼が倒されてもそれは同じだ。
「……どういうつもりなの?」
マナ・ツインブレードを創り出すと、白く輝く刃が今までより一回り程太く、長くなっていた。 ウーマ・イロッドの戦いの時もそうだったが、大樹の傍でパワーアップしているのか、別の要因なのかは分からない。
「……何、年寄りの我がままに付き合ってもらいたいだけの事よ……」
ガイムの両腕がブレードとなり、そしてふわりと……しかし、高速で跳び出した。
「……年寄りって……?」
繰り出された右の闇のブレードを、左の光のブレードで受け止めながら聞き返す。
「亡霊になる前……人間だった頃にはもう老い先短い老人だったのだよ、儂は!」
「……人間だった!?……あ……」
そこへ「人間!?」という困惑の声と共に繰り出されたアディンの斬撃をもう一方のブレードで受け止めるガイム。
「亡霊が死ぬ前は人間なのがおかしいのか?」
力任せに両のブレードで押し返せば、少女達は後ろ跳んで間合いを取った。
「それもそうね!」
「元とはいえ僕達と同じ人間がこの世界の滅びを何故願う!」
地を蹴りかけたリティアよりも先にアディンが跳び出す、大樹の近くでファイア・ボールは使えないのは分かるが、それでも接近戦は自分の役目だ。
「ニンゲンはニンゲンであってもな……」
右のブレード出し、「宇宙人であればな!」とアディンの剣を受ける。
「宇宙人!? 何だよそれ……!?」
聞いた事のない単語だった。
「お主達に言っても分からん事よ!」
強引にアディンを振り払うとリティアへ斬り付けるが、彼女もそれをブレードを交差させて受けてみせた。
「我らが故郷だった地球は滅んだ! 人口の増加による食料や資源の枯渇、そのために起きた世界規模の戦争、更には環境破壊でな!」
力を込めて刃を押し込もうとはしても、左のブレードは使わないガイム。
「チキュウ……それがあんた達の世界……?」
「だから儂らは地球を捨てて逃げたのだよ! そしてその結果がこの亡霊の身体というわけよっ!!」
嘲笑を含んだ声だった、それが誰に対してのかを考える余裕はリティアにはないのは、魔法で強化した自身のパワーをガイムが上回っていたからだ。 それでも、「自分達の世界を見捨てたなんてっ!!」と言い返す。
「そうだ! 儂は見捨てたのだっ!」
直後にガイムが右に跳んだのは、「それで僕達の世界をっ!!」という怒りの声と共に繰り出された攻撃を回避するためだった。
「……自分達の世界を自分達で壊して、亡霊になって……あたし達の世界を……」
リティアはマナ・ツインブレードを消すと、そのマナと新たにマナを集めて光の槍を創り出す。 それを見たアディンが「……エルスの時の光の槍……!?」と驚いたのは、前よりも槍が大きいと感じたからだ。
「それがニンゲンなのだよ! ニンゲンとは自分達の住みやすい世界を作る……が、それは決してニンゲン以外の生き物にとって良いとは限らん、その結果多くの生き物を滅ぼしてきたのがニンゲンよっ!」
「そんな身勝手っ!!」
光の槍は、弓から放たれた矢めいて跳び出したが、ガイムに命中することなくマナの大樹の幹に当たった。 しかし、突き刺さったというよりは吸い込まれて消えたという風であった。
「……前よりも制御が……パワーが上がっているから……?」
すぐにツインブレードを展開しガイムの攻撃に備える。
「マナの魔法で大樹は傷つかないのか……そういうものなのか……?」
アディンが地を蹴ってガイムに突貫すれば、彼もそれを迎え撃つ。
「そんな存在が亡霊になればこうもなるというものっ!」
「僕達はそんな風にはならないっ!」
鋼と闇の刃が数度ぶつかる。
「なるのだよ! ニンゲンがニンゲンである限りはな! 故にこの世界もいずれ滅ぶ、例えお主達が延命させようとな!……む?」
そこへ「だからってっ!」とリティアも跳び込んできた。
「あたし達が何もしない理由はないわよっ!!」
「自分達が死ぬかも知れんのにか?」
両のブレードを振るい二人の攻撃を防いでみせるガイムは、「世界だの未来だの守ってどうなる!」と続けた。
「どうなるって……?」
「どうせいずれ滅びる身ならばな、今の自分が生きれるだけ生きればよいとは思わんのか?」
今すぐにでもというなら行動するしかないだろうが、自分が十分に生きられるというのに世界や他人のために命を懸ける理由はない。
「……そんなわけあるかぁ~~!」
ガイムの身勝手な言葉に対する憤りを込めた一撃は、受け止めた闇のブレードに一センチ程食い込んだのには、彼も驚く。
「……やってみせるわい……」




