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第二ラウンド開始


 オーバの振り下ろした拳を、リティアは蹴っ飛ばした。

 「うぉおおっこのパワーはっ!?」

 「魔法を使えば女の子でもこれくらいはねっ!」

 右手に軽い痺れを感じながらオーバが後ろへ下がり、リティアもまた反動で後へ跳んだので両者の距離が開く。

 リティアとてまったく鍛えていないか弱い女の子でもないが、素の身体能力では屈強な戦士であってもオークには及ばない。 リティアの使う魔法はその不利を補うに十分ではあるが、決して便利な代物とは言えない理由がある。

 当たり前であるが身体に限界以上の無理をさせているのであるから、その負荷も当然大きい。 不用意に使いまくれば自分の肉体の方が崩壊してしまうだろう。

 もちろん、それも魔法をフルパワーで使えばの話であり、例えば並の大人に勝てる程度のパワーを発揮する程度なら十分に継続し行使する事は出来る。

 「魔法ならファイア何とかでくりゃいいだろ!」

 苛立った声を出しながらオーバが地を蹴れば、「喧嘩で使う魔法じゃないの!」と言い返してリティアはそれを迎え撃つ。 「喧嘩っていうかい!」と繰り出されたパンチを交差させた両腕でガードするまでが良かったが、踏ん張り切れずに弾き飛ばされた。

 「リティア姫!?」

 アディンの叫ぶ間に一回転して起き上がったリティアは、「やっぱパワーあるわねぇ……」と感心した。

 「……リティア嬢であるとはいえたいして効いていないか、あのオークめ手加減しているか……」

 惚れた少女相手では殺す気ではいけないという事なのかも知れないという発想は、多少は安心出来るものではあるが、リティアはリティアである意味で手加減しているのなれば心配になってくる。

 「……そして……」

 今度はスレイの方を見れば、やはりカーダに手こずっている。

 何度も繰り出せれるパンチ攻撃を回避してはいるものの、彼女はリティア程には格闘技術に長けてはおらず、並大抵の男ならともかくオーク相手は流石に分が悪い。

 「逃げてばかりなのかいスレイちゃん!」

 「そう言われても……」

 困った表情で言い返したものの、実のところカーダに対し反撃の出来ないわけではないのだ。 マナ・アローを撃つまでは良いのだが、当たりどこが悪ければ効果はないし、良ければ即死もありえないわけではない。

 「だいたい……オークがニンゲンの女の子を好きになるって!」

 僅かな隙を見つけて右足に蹴りをいれてみたが、「ぐふふふ」という笑い声を聞くままでもなく効いていないのは手ごたえで分かっている。

 「可愛い女の子を好きになるのに理由はない!」

 困り果てたという表情で「そう言ってくれるのは嬉しいですけど……」と呟いたスレイが走り出すのは、カーダには逃げ出したと思えた。 だから、「逃がさないよスレイちゃん!」という声には余裕が出ていた。

 そのカーダを見やったスレイは、リティアもオーバから逃げるように走り出したのが見え、その向かう先が自分と同じとすぐに気が付く。

 「リティアちゃんも同じ事を考えた……」

 そして、それは彼女の側も同様で、「やっぱりスレイとは気が合うわ」と嬉しい気分になっていた。 一方で「リティア姫とスレイさん……どういう……?」と首を傾げるアディンである。

 「同じ事を思い付き実行するスレイとリティア嬢とはな……」

 どんな作戦かまでは分からなくても、二人の動きからそこは確信出来るくらいに付き合いの長さのあるのがレイトなのだ。

 二人同時に辿り着いた場所は広場の隅に生えていた広葉樹である、少女達の胴体程の太さの幹に揃って掌を当てるのに、オーバとカーダも警戒し動きを止めた。

 「何をしようっていう!?」

 オーバの問いにリティアは「魔法!」と簡潔に答えると、すでに集めていたマナを送り込む。 レイトが「そういう事か!」と声を上げたのと、樹木の枝の数本が触手めいて伸び始めたのは同時だった。

 二体のオークは本能的に逃げようとしたが少女達に近づき過ぎていた、触手とかした枝がそれぞれの両手両足に絡みつかれた。

 「……こ、こんな魔法が……!?」

 「魔法とは誰かを傷つけたり、何かを破壊したりする力というだけではないという事ですよカーダさん!」

 「スレイの言う通り!」

 少女達は同時に地を蹴って跳び出す。 怪力のオークであっても、こういう巻き付き方をされては藻掻いてもすぐに引き千切ることも出来きなかった。

 「パワーあっても動けないでしょっ!」

 「……やられるっ!?」

 マナ・ブレードを展開したリティアがオーバに迫り……。

 「引き千切られる前に勝負を!」

 「す、スレイちゃん!?」

 カーダに接敵したスレイは、淡い光を放っている右の拳を彼の目の前で開いた。

 アディンにはそれで勝負はあったと思えたが、それはオーク達の死をいみするものではなかった、そういう理解の仕方をした。 二人が相手を殺す気で戦うなら決着はもっと簡単に付いているはずだからだ。

 「ふっ!」

 レイトの不敵な声を聞いたアディンの見つめる先では、白く光るマナ・ブレードがオーバの喉元に突き付けられ、スレイの掌はカーダの胸元の寸前で光を放ったまま止められていた。

 「……あんたの負けよ?」

 リティアがそう言って笑ってみせれば、「この距離でのマナ・アローはあなたの心臓を撃ち抜けますよ?」とスレイも穏やかな声で警告している。

 驚きと恐怖の入り混じった表情でリティアを見下ろしていたオーバが、やがて「……みてえだな」と大きく息を吐けば、カーダも降参という風に両手を上げた。

 


 リティア達四人の前には地面に胡坐をかいているオーバとカーダ、そしてその後ろでは目を覚ました十体のゴブリン達がハラハラした様子で成行きを見守っている。

 「…………んで、おめーらは結局オレらをどうする気だ?」

 とりあえず話があるからというリティアに大人しく従っているのは、オークにはオークなりの潔さというものがあるからである。

 「悪さをやめて大人しく自分の領域に帰りなさい。 あたしの言いたいのはそれだけよ」

 子供に言い聞かせる時のような言い方である。 レイトやスレイに比べるとどこか子供っぽさを残している風に感じていたアディンは、この時はリティアを大人っぽいと感じていた。

 「そんなこったろうとは思ったが……」

 レイトとアディンは剣を仕舞っているし、リティアとスレイもすぐに魔法を使える態勢にはなくとも、今更不意打ちで彼女らを倒せるとは考えない。 さりとて、素直に引き下がるのもみっともないと感じる。

 「おめーらにはおめーらのルールがあるのは知ってるがな、オレらにはオレらの生き方だってあるんだぜ?」

 カーダも「そうだそうだ!」と訴えてくるのにリティアは困った顔になるのは、その言い分も分からないでもないからだ。 自分の側の正義を信じていても、それだけが唯一のものであるという傲慢は出来ない。

 「ならば、このまま斬り捨てられても文句はないな?」

 レイトの冷たい口調に「……それも困るがよぉ……」と答えるオーバの顔は、多少青ざめていた。  

 「もう……脅かさないのレイト君!」

 自分の嗜めに「ふふふ、すまんな」と答えが返ってくるのを聞きながら、しかしそれもありるとはスレイも思う。 それがリティアの本意でないとはレイトも理解しながらも、必要とあればそのような”嫌われ役”をしてきたのが彼なのだ。

 「……だったら、分かるでしょ? レイトは本気なんだからね?」

 リティアもそれは理解していて、彼には申し訳なくも思ってる。 だが、どうしても非情な判断を下せないのである。

 「そうなんだがなぁ……まあ、しゃーないか」

 頭を掻きながら言ってくるのに、「うん! それでよし!」と表情を明るくするリティアだ。 それを見ると言いにくいのだが「でも、信用していいんですか?」と言わないといられないアディンだ。

 「馬鹿にすんなよ! オレだって男だ、惚れた相手との約束は裏切らねえよ!」

 「そうだそうだ!」

 オーバとカーダに同時に睨む付けられるのに思わず怯むアディンは、彼らの言葉には真剣なものを感じられていた。 流石に信じ切る事は出来ないが、さりとて一人オーク達に斬りかかってもいけない。

 ちらりとレイトを見れば、「まあ、信じてやろう……」と肩を竦めてみせてきた。

 それで彼も自分と同じ気持ちなのだと思えた、女の子が二人と男の子が一人という組み合わせは、必然と男の子は苦労人になるのかも知れないという考えが浮かんだ。 

 

 


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