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追撃戦


 林の中をリティア達が進んでいる理由は、逃げて行ったオーバらを追いかけての事なのだが、もちろん追撃し殺す事が目的ではない。

 「あのオーク達ですけど、このまま放置したら何をしでかすか分からないのではないのではないですか?」

 そのスレイの進言は、告白し玉砕した二人がヤケになって近くの村とかを襲うのではないかと危惧したのだ。 ならば、最初から追いかければ良かったともなるのだが、予想外の事が起こった直後であれば咄嗟にそれを思い付くものではなかった。

 「……でも、オークが素直にこっちの説得を聞くんですか?」

 「さてな? 言葉が通じぬ相手ではないが、話が通じるかは不明だな?」

 先頭を行く男二人が言い合うのを聞いて、「でもいきなり殺しちゃうわけにもいかないでしょう!」とリティアが言うのは、オークとはいえフッた相手に対して悪いという気持ちもあっての事だ。

 「とにかくちゃんと話をして、悪さをしないって約束させないとだよ!」

 この場合は命を奪うのは良しとしなくても武力に訴えないという意味でもなく、場合によってはやむを得ないとは考えているとはスレイもレイトも分かっている。

 「しかし……オーバとカーダか? 流石にリティア嬢とスレイを探していたとも思えんが……」

 万が一の奇襲に用心ながら進むレイトは、いったん立ち止まり周囲の気配を探った。

 「出会いは偶然でしょうね、この場所で強盗まがいの事をしようとしたら私達がやって来た……妙な偶然というものでしょう」

 運命という言い方をスレイは避けた、やはりオークのような亜人相手にそのような考えをするのは、多少なりとも嫌悪感を覚えてしまう。 「……妙な偶然か、そうだな」というレイトの言い方に、彼もそれは理解していると思えるのは嬉しいと感じる。

 「ゴブリンやオークって、悪さをしなければ別にあたし達から何かしようってつもりもないのにね……」

 すべての亜人達がではないのは知っているが、かといって一部の悪党がというようなものでもないのも確かなのだ。 協力し合おうとまでは言わないが、せめて互いにちょっかいを出し合わないとはいかないのかとリティアは思う。

 「そうですね。 連中がそれなりに大人しいのは、あくまで人間側が手強いから迂闊はできないだけです。 隙あらば襲ってくるのがあいつらです」

 アディンも自警団としてゴブリンを何回も討伐してきている。 その事に罪悪感はないが、戦わないで済むならそれが一番ではあるのだ。

 「誰から何かを奪って生きるというのがな、連中が生まれた時から知り得る生き方という事なのであろうな」

 あるいは、それが自然界というものでニンゲンだけがそれに反して生きているのかも知れない。

 それからしばらく進むと、一行は小さな集落へと辿り着いた……いや、元集落という方が正しい。 十軒にも満たない家はかろうじてそうだと分かるものの、壁は崩れ落ち木製の柱も腐っていた。

 「何十年も放置されてた感じだねぇ……んで!」

 リティアの視線の先には村の広場だったと思われる場所に、先ほど遭遇したばかりの二体のオークと十体のゴブリンがいた。 ニンゲンが住める場所ではないが、彼らが拠点とするにはちょうど良かったのだろう。 

 その声に気が付き、「げっ! お前ら……!?」とオーバが叫べば、カーダやゴブリン達の視線も彼女らに一斉に向けられた。

 「追いかけてきやがったのかよ! 何なんだよっ!!」

 「何だも何もないわよっ! あんた達みたいなのを放ってもおけないでしょうがっ!!」

 一歩前に進み出て言い返すリティアは、「どんな悪さをするか分からないんだからさ!」と続ける。

 「……ちっ! そうくるのかよ……まあ、いい。 オレらの力をみせてやるさ!」

 オーバのいきり立った声を合図にゴブリン達が左右に展開して棍棒などの武器を構えるのに、「もう……そういうつもりじゃないんだけど……」と呆れながらも、この場は戦うしかないと構えをとる。

 「オイラ達の力をみれば、きっとスレイちゃんも惚れ直すはず!」

 期待に満ちた顔のカーダが自分を見つめてきたのに、「いや、ありえませんから……」と溜息を吐く。

 「ふっ! この前は完膚なきまでに叩きのめされてその自信か!」

 「そっちがその気なら!」

 レイトとアディンが同時に地を蹴って跳び出すとゴブリン達も一斉に動き出した。

 その彼らの勢いは大したものだったが、レイトとアディンの戦闘能力は数の差を物ともすることなく三分ほどで全員を倒した。

 正確に言えば、三分かかってしまったとも言えた。

 「ゴブリンも意外とタフだな?」

 「ですね……」

 ニンゲン相手程には気は使わなかったとはいえ二人とも峰うちで全員を倒したのだ、普通あればしない事だが、流石に今回は殺すのは躊躇われた。

 「こ、こいつら……」

 「戦いは数とも限らんという事だ!」

 レイトがオーバに切っ先を向けた直後に、「そこまでよレイト!」と静止したのはリティアである。

 「後はあたしとスレイでやるからレイトとアディンは下がって!」

 言いながら「……え? わ、私も!?」と驚くスレイの手を掴み引っ張って前に進み出たのには、残った全員も当然驚く。

 「どういうつもりだ?」

 「あたしとスレイの問題なら、女の子の問題なら女の子でケジメを着けるって事よ!」

 しっかりとオーバの目を見上げて答えるリティアと、「そういうものなのリティアちゃん……」と困惑顔でカーダの方を見るスレイである。 つまりは一対一で勝負だという意味だである。

 「な……スレイさんもって!? リティア姫!?」

 オークに対しては武器を持った通常の大人が数人がかりで勝てるくらいだ。 無論、個体差はあるし良く訓練された戦士であれば一人でも十分に戦えはする。

 その意味ではリティアはまだ分かるが、魔法が使えるとはいえメイドのスレイが相手にするには危険すぎるとアディンには思えた。

 「……女の子の問題か、オーク相手では色気のない話しでもあるが……」

 自分とアディンでオーバ達を完膚なきまでに叩きのめし言う事を聞かせるか、無理なら殺してしまうのも仕方なしという考えでいたレイトにしても予想外の流れとなってきた。

 「まあ、やるというならやってみるといい」

 「ちょ……レイトさん!?」

 「こう言い出した聞かないのがリティア嬢だ、それに一理はある理屈でもあるしな」

 そう答えて剣を鞘に納めるレイトがそれから促すような目でアディンを見れば、彼も同様にするしかなかった。

 その男子組の様子に満足しそうにしながらリティアはオーバの前に立ち、渋々という様子でスレイはカーダの下へと向き直る。 

 「本気かよ?」

 まだ困惑しているオーバに「もちろん!」と答えながら構えるが、マナ・ブレードは展開はしない。

 「いっくよっ!」


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