2-37.開拓しよう(2)
タコはタコで準備するけど、
牛で耕せないと、開拓者を呼べないね。
「おねえちゃん、海の試練だよ」
「試練は少ない方がいいんだよ。たとえば、タコを釣り上げたり、蛸壺を設置して、そこにタコを呼び寄せる方法もあるよ。」
「直ぐとれる?」
「蛸壺はセットして1日ぐらいかかるかな。釣りはしたことないから分からない。」
「潜ってとりにいけば、すぐだよ。」
「それって、服も脱がないといけないし、タコは痛いよね?」
「海の試練だね」
「そうだね。」
裸は100歩譲るよ。でも、実際、タコとか捕ったことないし。素手でとれるユッカちゃんが凄いと思うんだよね。こう、サザエとかそういうの拾って誤魔化せないかな・・・。
「おねえちゃん、早く!」
「うん!」
<<おねえちゃん、聞こえる?>>
<<聞こえる>>
<<体内の循環を変えると、体操の時間ぐらい潜っていられるよ>>
<<5分ぐらい?>>
<<脈拍で600回ぐらい>>
<<10分ぐらいだね。わかった>>
こう、水の中で会話できるのも便利だし、エーテルで身体強化の循環で、酸素の消費が減るのか、消費効率がよくなるのか分からないけど、いろいろ現代日本の若者にはありがたい機能がたくさんだね。
で、ユッカちゃんが見つけてくれるの。
大きいタコを。
巻き付かれたら、明らかに動けなくなりそうなサイズ。
足を広げたら3-4mあるんじゃないかい?
<<おねえちゃん、あれ!>>
<<いるね>>
<<どうぞ~~~>>
<<ユッカちゃんこそ、どうぞ~~~>>
<<試練だよ?>>
<<わかりました>>
とりあえず、ダメもとで索敵で心臓部を探してみる。
なんか、ぐにゃぐにゃで、さらに動くのか。
<<ナビ、タコの図鑑!>>
<<動きます>>
<<なにが?>>
<<軟体動物は切り離しても、単体の足が動作します>>
<<狩りの仕方じゃ、止められない?>>
<<図鑑のダウンロードを開始しますか?>>
<<いや、いい。ナビは、すごいAIだね。>>
<<ユッカちゃん!>>
<<なぁに?タコ、まだ~~~?>>
<<うん。凍結の魔法は海で使える?>>
<<川で魚を凍らせたら、凍ったまま流れて行った。流れて、氷が融けて魚が逃げて行った。>>
<<タコは?>>
<<やってない。>>
よし、凍らせてみよう。
どうせ運ぶ時だって、切るときだって、凍ってた方が楽だ。
タコの頭部から、内臓にかけて凍らす。
基本的に熱を奪ってあげればいいんだよね。
<<周りのエーテルさん、あのタコの体内から熱を奪って。頭部や内臓を中心に空気が液化する温度まで。>>
<<<かちち~~ん>>>
なんか、音がいいね。
あ、タコが『ぐてっ』ってなった。
<<エーテルさん、タコの残りの部分を海水が凍る温度まで下げて>>
<<<かち~ん>>>
<<エーテルさん、ありがとう>>
でかっ!おもたっ!持ち上がらない。
<<ユッカちゃん、ヘルプ。持ち上がりません>>
<<軽くすれば?>>
<<ごめん。する。>>
<<エーテルさん、このタコを<重力遮断の膜>で包んで>>
<<<ふわわ~ん>>>
すっごい、冷たいけど、とりあえずタコにしがみつかれるよりましだ。
タコをひきずって、海上で息継ぎする。
「はぁ、はぁ、結構つかれるね。」
「おねえちゃん、ずるい!」
「え?なんで?」
「海の試練がない。大きいの探したのに。」
「こんな大きいのにしがみつかれたら、大変なことになるよ?」
「にひひ・・・」
「いや、ほんとに・・・。
ユッカちゃんの鞄の入り口に入るサイズじゃないから、今日はこれ一匹を袋にいれて持って帰るよ?」
「うん。帰ろ。」
陸まで引き上げて、革袋にいれる。ピュアしてから服も着る。
「おねえちゃん、このショッパイのなんとかならない?」
「私が勉強したのは、この塩が体を作るのに大切な役目をしてるんだって。すべての生き物は海から生まれて、体の中を流れる血と海の塩分が大体同じ濃度なんだって。」
「魔物は?」
「私がいたところには居なかったんだよ。」
「ふ~ん。面白いね。エーテルが無かったっていうことだよね?」
「そうだよ。
なんか、ユッカちゃん、凄く理解が速くて、頭がいい気がするけど、お母さんが何かした?」
「わかんない。『こっちは何でもできるわ!』って、楽しそうだったよ。」
「そっか・・・。私じゃたどり着けないかもね・・・。」
「おねえちゃんは、分かんないことがあるって、楽しい?」
「楽しいよ!早くタコ焼きつくりに帰ろう!」
ーーーー
みんなが忙しそうなところ悪いけど、二人で外でタコ焼きを作り始めた。
人数が増えたせいで、館の調理場の竈は大忙しだからね。
まず、タコでしょ。
足を1本だけ切って、残りは全部凍結して冷蔵庫。これでしばらくタコを捕りに行かなくていいはず。
今度はこれを一度ゆでるんだね。塩ゆでにして、サイコロサイズに切る。
っていうか、桶に満タンだよ。こんなにタコ焼き作らないって・・・。
「ユッカちゃん、茹でたタコ食べてていいよ。もっと美味しいのできるけど。」
「待つ。」
次に、粉とみじん切りにキャベツと水を混ぜる・・・。
何人前になる分量分からないけど、桶一杯分を用意した。
最後は焼きの作業だけど・・・。
油を塗る。刷毛とか、ペーパータオルとかないから、木の先をささくれだたせて、それを刷毛の代わりにする。なんか、凹みの下に油が溜まっているけどドンマイ。そこに、コップで少しずつ解いた粉を入れて、順番にタコを載せていく。
「おねえちゃん。タコが焼けないよ?」
「一度茹でてあるから大丈夫だよ。」
「でも、それは茹でタコのパンで、タコ焼きじゃないよ。」
「あ・・・。あ~~。そうだね・・・。
<ホットミース>と<ピザ>みたいなものでさ、
料理の仕方を表してるのじゃなくて、この食べ物の名前なんだよ。
ダメかな?」
「ダメじゃないけど、タコ焼きじゃないね。」
あ、あ、あ。
話してるうちに、半身で固まり始めた。しょうがない。ニコイチで大きめのタコ焼きにしよう。柔軟に修正だ。
「おねえちゃん。まんまるだね。」
「そうだね。」
「タコ丸?」
「私はタコ焼きって呼ぶけど、ユッカちゃんは<タコ丸>でもいいよ。」
「分かった。」
とりあえず、鉄板に凹んだ穴は20個あったけど、ニコイチにしたから10個完成だ。お味はどうかな~~~?
「ユッカちゃん、熱いから気を付けてね!言ったからね!試練とかじゃないからね!」
「分かった。」
って、それ、表面をフーフーしても、中が熱いんだって・・・。
あー。試練とかお仕置きとか言われる・・・。
「熱い!」
なんか、凍ったタコ焼きが吐き出される。
「どうしたの?」
「タコ丸の試練」
「気を付けてね。まだ、あるから大丈夫だよ?」
「口の中を火傷したよ。」
「回復できる?」
「欠損、損傷と同じで、回復はできないの。でも、活性化して新しい細胞に置き換えればいいよ。」
「自分でできるの?」
「お母さんが教えてくれた」
「じゃ。その間に、タコ焼き作っておくね」
木の皿に盛りつつ、次のバッチを焼き始める。一個ぐらいは味見してもいいよね・・・。あ、ソースとか青のり忘れた。紅ショウガも。まいっか。
・・・。
・・・・・・。
美味しい。
ふわふわパンとかクッキーどころの話じゃない。
大振りなタコで、味も大味かと思ったけど、タコの滋味と塩味、それにアミノ酸系のダシが効いた味。タコの出汁が何系なのか今度調べておこう。
ハッ。ユッカちゃんの視線が刺さるから、何も言わずに焼きに入ろう。
「おねえちゃん、試練は?」
「食べなれてるから大丈夫」
「おねえちゃん、味は?」
「ユッカちゃんが、自分で食べてみて。試練な味じゃないよ。どんどん焼くからね。」
「うん。」
今度は加減をよくみて、穴一個ごとに、飛んだ水分の分だけ粉を補充しつつ、くるくると器用にひっくり返して丸くつくる。大きさは小さいけど、これなら鉄板一枚で20個焼けるもんね。
「おねえちゃん、食べていい?」
「いいよ。半分ぐらいを噛んでちぎる感じで、熱さを確かめるといいよ。」
「おねえちゃん。ずるい」
「なんで?」
「こんなおいしい物を隠してた。ずるい、ずるい、ずるい!タコ丸をみんなに配ってくる!」
って、皿を持ってっちゃったよ。そもそも美味しいなら、一人で食べればいいのに・・・。優しい子なんだね。さて、桶一杯分のタコとかどう考えても無理だけど、コツコツと焼こうかね。
「あれ?モリスどうしたの?皿なんか持ってきて。タコ焼き食べる?」
「ユッカちゃんから、ヒカリさんの所へ皿を持って行って欲しいと<念話>が入りまして。」
「ありがとう。よかったら、モリスも食べてみて。熱いから注意してね」
と、焼き立てのを皿に盛る。盛りつつ、3バッチ目に入る。これ大変だ。食べてる暇がない。
「どう、美味しい?」
「美味しいですが・・・。」
「なに?」
「その・・・。一つでは足りないのです・・・。」
「食べていいから手伝って。鉄板あと2枚あるから。」
「どのようにすれば?」
「直ぐに上手くなるよ。上手く行かないときは、ニコイチが簡単だよ。みてて。」
「すみません。領主のヒカリ・ハミルトン男爵でよろしいでしょうか。料理長のゴードンと申します。挨拶するのは初めてになります。」
「こちらこそ。いつも食事を作ってくれてありがとうね。今日は何か問題でも?」
「その、タコ丸をですね・・・。分けて頂きにきました。」
「いいよ。モリスに作り方を教わって。」
会話しつつも手を動かすんだけど、ユッカちゃんが出来たのが載ってる皿を交換してもっていく。次はどこに持っていくんだか・・・。とにかく、自分が食べるにはタコ焼きをどんどん作らないと負け続けてる。
<<ヒカリ!なんだこれは>>
<<なにが?>>
<<タコ丸が美味しいぞ。>>
<<ニーニャの鉄板のおかげだよ。>>
<<なら、私も食べていいよな?>>
<<いいけど、作り負けてる。鉄板も足りない>>
<<鉄板を作ればいいんだな。食べに行くぞ?>>
<<おねがいします>>
「ゴードンさん、このタコは十分ありそうなんですが、粉が入った桶が足りなくなりそうです。もう一杯作ってきてもらってもいいですか?できれば、人手も借りたいのですけど。」
「承知しました。このタコ丸が焼き終わったらすぐに行って参ります。」
「よろしくね。」
「モリス、焼くの上手いけど、皿に物が無いね。全部食べてる?」
「いえ、あの、ユッカちゃんがまとめてどこかへ運んで行かれました。」
「また、お客さんが増えるね。がんばって焼かないと自分の分がないよ。」
「は、はい!頑張ります」
タコ焼きってさ・・。こんなに一生懸命作るもんだっけ?こう、焼いて食べて、焼いて食べてって感じで、なんだか自然にお腹がいっぱいになって。最後の方は作ったけど焼くだけ焼いて残しちゃうみたいな。なんか、お弁当作りのアルバイトの人とかこんな感じなのかね。自分は食べないでひたすら作り続けるみたいな。
よし、ユッカちゃんが遠出してるのか、2バッチ分=40個溜まった。次のバッチをセットしたら一個ぐらい私だって食べてもいいよね・・・。
「おねえちゃん、みんな来るって」
「みんな?」
「関所の人と、ドワーフさん達と、ステラさんとフウマも。」
「ステラとフウマは牛を捕まえに行ったんじゃないの?」
「見つけて渡したら、直ぐ帰るって。」
「そう・・・。」
今、うちの領地って45人くらいだっけ?
きっと、一人10個じゃ済まないよね。がんばるか・・・。
ーーーー
なんか、えらいことになってきた。
鉄板6枚、焼き手が6人。総勢46人でタコ焼きパーティー
タコの消費もすごいけど、粉を解いた液がもう2杯分空になってる。
「ヒカリさん、タコ丸パーティー楽しいですね」
「このタコ丸って名前が良いですね」
「熱くて火傷しないように注意だな」
「ヒカリさん。人に牛を捕まえさせておいて、こんなの食べてるなんて・・・」
なんか、会話も盛り上がって皆も喜んでる。
あれ?一昨日パーティーしたばかりだよね。
でも、メンバーは夕食メンバーだけか。
<<ヒカリ、タコ丸頂戴!>>
<<ワしもじゃ。>>
<<お二人とも、どうぞ~>>
関所の仕事をどう回してるかしらないし、夕ご飯がどうなるかもしらない。
たまにはいいよ。こういう日があっても。
開拓もしないといけないんだけどさ、皆の心を開拓したってことで。
いつも読んでいただきありがとうございます。
頑張って続けたいとおもいます。
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ありがとうございます。
10月は毎日少しずつ22時更新予定。
手間な方は週末にまとめ読みして頂ければ幸いです。




