2-36.開拓しよう(1)
娼館の方は軌道にのせられそう。
魔術師の問題もあるけど、短期なら私がやってもいいし。
ウンディーネ辺りなら、喜んでやってくれそうだし。
それより、開拓者の人員確保が重要だ。
「今日も一日お疲れさまでした。いつもの報告会をしよう」
「モリスの方で何か動きはあった?」
「窯の方は明日から作業に入ってくれるそうです。
館の方は<焼きレンガ>で、外の方は石積みで作るそうです。
材料費、人件費、設計費で金貨5枚だそうです。『ヒカリさんが洞窟の魔物を倒してくれたから』とかで、ヒカリさんには手間賃と運送費で<焼きレンガ>を卸ろしてくれるそうです。」
「なんか悪いね。必要ならうちの馬車も資材運ぶのに使って貰って。」
「分りました。伝えておきます」
「他には?」
「魔術師に関しては、キリギスとメルマの冒険者ギルドに、<魔術師見習い>の募集をかけました。それと、先日の奴隷商人を含めて、幾つかの取引所に、エルフ系または人族の魔術持ちが入荷したらキープするように予約を入れました。」
「いいね!他は?」
「はい。開拓者の人材も同様に、冒険者ギルドと奴隷商人に声をかけました。冒険者ギルドは、相場通りの<税率50%>で、<自由開拓権を付与>としました。奴隷商人は四肢欠損がなく、健康体であれば、予約を入れました。」
「うん?あとで納税のルール教えてね。」」
「はい。以上です。」
「ステラ、フウマ、ユッカちゃんと私のチームは領地拡張と、石の切り出し、洞窟の発見をした。」
「他の3人で補足してくれることある?」
「姉さん、<地下>の入り口も発見したことを注意しておいた方がいいんじゃいかな?」
「あ、そっか。洞窟と地下の入り口が近くにあるから、しばらく近寄らないようにしよう。鉱物採取とか地下の探検とかは、もうちょっと領地の運営に余裕ができてからにしたい。」
「鉱物採取なら、そこへ行かなくていいぞ。ステラとユッカちゃんが取ってきてくれたサンプルで大概の金属は作れることが分かった。」
「大概って?」
「銀、銅、青銅、鉄、鋼、ミスリルまでだ。金、オリハルコンは無かった。」
「なるほど。金属作るのに精錬用の炉とか必要なの?燃料とかは?」
「ドワーフが手で作れる範囲なら、自分たちで精錬のスキルが使える。<船を鉄で作る>とか、言い出さなければ問題ないぞ」
「ありがとうね。ニーニャ、このまま今日の報告お願い」
「穴ぼこ鉄板を3枚作ったぞ。水車の設計をイワノフに教えておいた。途中でユッカちゃんのサンプルが来て、休憩に入った。その後すぐに娼館用の領地に囲いを作った。娼館用の囲いに使った木材は、基本的に肥沃土に向けた街道を進む方向から伐採してきている。肥沃土に到達したら、今度は街道ルートを海に向けて伐採を進めるぞ。」
「いろいろありがとう。水車からの水路を作るときに、粘土で水漏れを塞ぐ必要があったら、トーマスさんに相談してみて。粘土系の材料は豊富に持ってるみたいだから。」
「了解。イワノフに伝えておくぞ。」
「他に何かあるかな?
なければ、開拓者の募集について話をしたいよ。先ずは、開拓者や農民の納税の仕組み。初期投資、領主からの支援体制なんかを簡単でいいから知りたい。」
「私から紹介します。もし不足があればフウマさん補足をお願いします。
狩人、木こり、農民のような、天然資源を販売して利益を得る人たちは、利益の50%を領主に納める必要があります。領主は領地収入の50%を国に納める必要があります。」
「開拓者は?木材も無いし、開墾してる間は農業収入も無いでしょ」
「領主に前借をして、機材の購入、住宅の借り入れ、生活費の捻出を行います。開墾後、種を撒いて収穫が始まるまでは借金生活となります。狩りができれば、借地の周囲で狩りの許可をもらい、生活の補助に当てます。」
「そんな条件で開拓者になる人とかいるの?」
「普通はいませんが、傭兵上がりとか、騎士団を引退した者など。貴族の三男で、気ままに暮らしたい人などは、初期費用で借金をせずに済むので、開拓者となる場合があります。一般的な転職ということで開拓者を選ぶことは稀です。」
「奴隷の場合は?」
「奴隷がそのまま開拓者になることはなく、あくまで領主や主人の持ち物です。そのなかで、開墾作業をさせて、開拓した土地を農夫などに貸し与えます。」
「それじゃぁ、移住者は増えないね・・・。例えばさ、
・肥沃な未開墾の土地
・小さな家あり
・農機具の無償貸し出し
・初期の種の供与
・納税は収穫物の30%相当(物または貨幣)
こんな条件なら人が集まるかな?」
「条件が良すぎるので敬遠されるか、冷やかしで見に来る人はいるでしょう。」
「その条件が本当だと分かれば?」
「移住の契約をします。」
「ニーニャ、肥沃土までの街道ってあとどれくらいかかる?それと並行して農機具を作らせる工数はとれそう?」
「馬車が通れる幅の道なら、すぐだぞ。農機具も鉄製でいいなら、10本ぐらいすぐだ。材料も問題ない。
それより、小屋の場所確保と、土地を耕すための牛とかが心配なんだが。」
「小屋は街道を肥沃土に沿って東に伸ばして、その森側に場所を設けよう。あと、牛か・・・。」
「ヒカリさん、野生の牛ならいましたわ。」
「え?どこに?」
「今日、ユッカちゃんと領地繋げながら帰ってくるときに、農地予定の草原に牛が群れを成してましたわ。」
「だれか、野生の牛が農耕に使えるか知ってる?」
「基本的に馬車などと同じで、制御する道具を付けて、鋤を引きずらせます。あまりに気性が激しいと暴れだして危険と聞いたことがあります。奴隷の中に開拓経験者がいたはずなので確認をとります。」
「モリスありがとう。あと、その経験者からの聞き取りもおねがい。うちの奴隷さんたちは優秀でとても助かるよ。牡牛とか牝牛とかあるのかな。あと、牛小屋も必要になるとかも聞いておいて」
「姉さん、これから未開墾の土地を広範囲に耕すことになるじゃないか?姉さんの出身国では、そういうのに向いた道具とか無かったの?」
「う~ん。あるにはあるけど・・・。イメージとして、50歩分の幅の鋤を馬数頭で一度に引きずって耕す感じかな。ただ、この方法は馬の操作と鋤の抑え込みで一度に必要な人数が増えちゃうね。」
「なら、牛5-6頭を棒でつないでまとめれば、一度に20歩の幅ぐらいはひけるんじゃないか?牛と鋤を押さえる錘を増やせば、そんなに人数いらないだろ。」
「その方向でやってみようか。」
「ニーニャ、そんな馬車に使うような道具って作れそう?」
「いろいろ試しながらになるが、そうだな・・・。革が少ないと牛を固定しにくいな。」
「特別な革でないなら、冷蔵庫に食材貯めるついでに、獣の皮をなめしておいたわ。革ひも程度には使えると思うわ。」
「そんなに簡単に作れるものなの?」
「なめすのに必要な液さえあれば、瓶にいれて、あとは妖精さんにお任せするだけなの。1日で1瓶を終えて、3種類瓶と液を変えれば終わるわ。」
「なんか、ありがとうね。あとでニーニャと使えそうか確認してもらえる?」
「「はい」」
「モリス、ということで、開拓経験のある奴隷さんと話をして、野生の牛で耕せそうだって分かったら、開拓者の募集条件を変えてもいい?」
「はい。領地に人が増えたら楽しそうです。私自身もやりがいがあります。」
「ああ。あまりキリギスとかエスティア王国の有能な人材を引っ張らないで。私が妬まれちゃう。何か、代わりに渡せるものがあればいいけど、今の私には何もないからね。」
「承知しました。メルマ方面を中心に活動します」
「他、なにかある?」
「タコ焼き」
「ごめん!それだ!
みんな、ユッカちゃんが6歳になったんだけど、まだ誕生パーティーをしてないんだよ。こっちでは毎年祝うものかわからないけど、私の国では小さいうちは毎年お祝いしてくれたんだよね。たぶん、トモコさんと私は同じ国の方からきてるから、ユッカちゃんも毎年お祝いしてるんじゃないかな?」
「そだよ。」
「ところで、みんなどうやって、誕生日ってわかるの?」
「3つの月が、こうなって、ああなって。こういう形になると私の誕生日」
「私は、3つの満月が揃うときです。」
「私は、左上が小さくて、真ん中が満月で、右に右欠けがでてるときだぞ」
「え?ステラとかフウマもそんな感じ?」
「口で説明しにくいですが、3つの月の位置と形で分かります。」
「俺もそうだよ。普通だろ。」
「そっか。私は皆の誕生日を覚えきれないから、自己申告でお願い」
「誕生日になると、酒が飲めるのか?」
「ニーニャ達がんばってるもんね。お酒が嬉しいよね・・・。お酒づくりも考えていかないとね。」
「大丈夫だぞ。娼館が完成するまで、みんな我慢するぞ。」
「ありがとう」
「ちょっと、明日はタコを入れる革袋をもって、タコを取ってくるよ。早いうちにユッカちゃんのタコ焼きパーティーをするから、みんな集まってね。」
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