3-61.ロメオ王子 side-B
関所ではこんなことになってたよ。
<<<タカ>連絡ありがと。ゆっくりと飛んで、関所にロメオ王子を直接誘導して>>
<<ヒカリ様、直接連絡ありがとうございます。ご指示通りに飛びます>>
<<ありがとね。関所に来れば、族長もグルーさんとも会えるから、ゆっくりしてってね。>>
<<了解>>
<<モリス!大事件!>>
<<こちらも、それなりに報告する出来事がございますが、先にお伺いします。>>
<<ごめん。多分こっちのが緊急なんだ。勝手に喋る。
ロメリアのロメオ王子が<リカ>を探しに関所へ飛竜で行く。
私も緊急で関所に飛んでる最中。
私が王子より先に着くように<飛竜のタカ>に遅く飛ぶように頼んである。
こっから、本題。
<リカ>は、領主である私の<妹>の設定にする。
<王子>は<リカ>と結婚したいぐらい惚れてる。理由は不明。
<王子>は、ロメリアを制圧した後の交渉相手として残さないと復興がままならないので、<王子>を処刑、監禁、隠居といった措置はとれない。
なので、ヒカリ=姉が、リカ=妹をロメリアに旅に行かせた設定にする。
ロメリアでは王子に、リカの存在がまだバレてない。
今度の戦争で、<リカ>は死んでもらう。その責任をロメリアにぶつける。
状況分かった?>>
<<相当な大事ですな。何が準備として必要でしょうか?>>
<<今、私の中で必要なのものは4つ。考えが足りてないものは適当におねがい。
1.ヒカリに女戦士みたいなカッコイイ威厳のある衣装一式を用意する
2.リカに装着させる<貞操帯>
3.今関所に居る飛竜を隠す。
4.マリアさん以外の貴族である、レナードさんと王子をロメオ王子と会わせない。
以上>>
<<1番、3番、4番は、それぞれ直ぐに対応します。
2番の<ていそうたい>とは何か、伺っても宜しいでしょうか?>>
<<女の操を守る道具。金属製の褌みたいなもので、鍵がかかるの。その鍵の持ち主でないと、その貞操帯を嵌めた女性と愛することができないアイテム。>>
<<意味合いは理解しました。
ヒカリ様を採寸して金属加工をして、鍵で固定できる必要があると思います。
また、私の浅薄な発想では小用などの排泄行為でその下着が汚れますし、不衛生な状態となります。>>
<<モリス、流石だね。金属だから採寸が必要。
肌に当たる部分は滑らかに仕上げて貰うか、薄い革を当てる処理が必要。
排泄に関しては、前側は細かな網とかスリット状に切れ目をいれる。
後ろは丸い穴をあけるか、細いひも状に加工して、ずらして用をたす。
排泄後はその都度洗う必要があるよ。>>
<<それは、ニーニャ殿、ステラ殿と相談になりますな。>>
<<うん。これは王子の剣より優先でお願い>>
<<状況理解しました。こちらの報告事項は後ほどで問題ございません。直ぐに手配を進めます>>
<<ありがと。もう直ぐ着くけど、先に始めてて>>
<<承知!!>>
ーーーー
ウン・・・。
留守のことはメット卿に任せてきたから大事には至るまい。
それにしても、今日は<シュークリーム>なるお菓子を氷詰めで運んでいるせいもあってか、飛行がゆっくりだな。とにかく、リカさんにこれを手渡して一緒に楽しみたいものだ。もし、良い雰囲気になったら、リカさんごと連れて帰ってしまおう。
そうしたらリカさん、驚くだろうな。
もし関所に直接着陸したらリカさんも驚くだろうし、リカさんの気を引けるんじゃなかろうか?
よし、そうしよう!
ちょっと、北寄りに進路を変えて、川沿いに遡ればいいはずだな。
ーーーー
(バッサ、バッサ、バッサ)
(ワーワー、ギャーギャー)
(飛竜だ!飛竜が攻めてきたぞ~~!)
(逃げろ~~!)
(領主に知らせろ!!)
うん?なんか下が騒ぎになってるな。
そうかエスティア王国では飛竜騎士団や飛竜隊が編成されていないから珍しいんだろうな。今日だけだ。然したる問題でなかろう。
「あ~。すまぬが、リカさんに会いたい。どなたか取り次いでくれ」
うん?
女戦士?剣を携えて、兜まで被っている。
体によくフィットした鎧で動きやすそうだ。
ただ者じゃないな?
こっちも、剣を構えるか。
スッと、右脇に刺さる剣の柄に手を掛ける。
「そこのお前は何者だ!名を名乗れぃ!」
「リカさんに会いにきました!」
「こちらの言うことが聞けぬか!それとも名を名乗れぬ事情があるのか!」
「いや、ちょっと顔見世に・・・。」
おぃ!あの女戦士が抜剣したぞ?
こっちも抜くか!
「この領地に於いて、飛竜を乗り付けて通行人達に多大な恐怖を与えたのみならず、名も名乗れぬのか!切り伏せて我が剣の錆としよう!」
ま、不味い。
勝っても負けても不味い。
とりあえず、剣を地面に投げよう。
「す、済まぬ。ことを荒立てるつもりは無かった。
リカさんに会いたくて、つい飛竜で乗り付けてしまったんだ。
私の名前はロメオといいます。」
「そのロメオがリカに何用だ!」
「リカさんに会いに来ました。」
「愚妹に会いにか。ここで話しても仕方あるまい。ついて来るが良い。その飛竜は通行の邪魔だ。しばし、どいてもらうぞ」
「いま、移動します・・・。」
「無用。私自ら行う。」
え?
女戦士が剣を振るって上空を指すと、
飛竜が勝手に飛び上がって、上空を旋回すると、どこかへ飛んで行った!
帰りどうするんだ?飛竜は返してもらえるのか?
そもそも、この人どうやって操った??
「心配するでない。帰りに呼ぼう。」
「わ、判りました。」
ーーーー
「それで、ロメオ殿の要件はリカに会いに来ただけであろうか?」
「はい。それと、このお菓子を関所の皆さんに食べて頂こうかと持参しました。」
「ほぅ。リカの為でなく、関所の者とな。本当に良いのか?」
「はい。皆で召し上がって頂ければと思います。」
「モリス!土産を貰った。ゴードンに預けてくれ。客人に茶を出すように」
「畏まりました。そちらの鎧は、まだ着用されますか?」
「敵意はないであろう。剣と兜は預ける。鎧は客人の予定を聞いてからだ。」
「ご配慮いただき幸いです。こちらの剣もお預けします。」
この人もリカさんと同じ黒髪か。
でもショートヘアなんだな。
しかし、凄腕の領主代行のモリスが畏まって対応するということは、
この女戦士が領主で間違いないのだろうな。
しかし、この人さっき、<ぐまい>って言ってたな。
愚か者のことか?まさか妹か?
「お客人、いつまで滞在予定だ?食事や寝室の準備があるのでな。」
「ああ。ええと、リカさんと先ほどのお菓子を一緒に食べられたら、直ぐに帰ります。」
「うむ。リカならおらぬ。帰るまでお待ちいただけるだろうか。」
「え?」
「ロメリア王国へ旅立った」
「ええ?」
「飛竜騎士隊の1人に会いに行ったぞ。途中で会わなかったのか。」
「そんな・・・。」
「私もあの愚妹にはがっくりだ。騙されておるのにな。」
「リカさんが何者かに騙されているのですか?」
「飛竜騎士隊の一人に指輪を貰ったらしい。その人物に会いに行くと言って聞かぬ。バカバカしい。」
「その指輪は、私がリカさんに差し上げた物だと思います!」
「ほぅ。お主がリカをかどわかそうとしている相手か。残念だが無条件ではやれん。」
「あの、今更失礼ですが、貴方は・・・。」
「ヒカリ・ハミルトンと申す。この関所を統治している。」
「リカさんとはどのような関係でしょうか?」
「先ほどから申しておろう。あやつの姉だ。私としても肉親を無下に見捨てる訳には行かぬのでな。」
「私はリカさんを騙したりしておりません!」
「貴族が平民の娘を攫うことに、問題が無いと申すか。」
「私はリカさんをかどわかそうとなんかしていません!」
「貴族の別荘に幽閉して、暇なときに相手をされる妹を私が嬉しいと思うか?」
「私はリカさんを正妻に迎えたいと考えています」
「お主がそう考えても、周りが許さぬだろう。駆け落ちでもするのか?」
「そ、それは・・・。」
「貴族の生活はそう簡単に止められぬでな。当たり前だ。」
「いえ!現国王を継ぐ者として、身軽な逃避行に走れません」
「ほほぅ。大きく出たな。ロメリア王国の皇太子であられるか。それでは駆け落ちなどできぬな。この関所を攻め落としてみるか?私が相手になろう。」
「もし、ヒカリ様より1本取ることができましたら、リカさんを私にくれますか?」
「面白い。魔術による強化や、武器・防具も自前の物を使って良ければ、お主に負けぬぞ?こちらが勝ったら、リカを諦めるのか?」
「平和裏にリカさんを迎えにあがりたいと思います。」
「フンッ! まぁ、いい。後学の為にも手合わせをして進ぜよう」
先ほどのモリス殿が預けていた剣や兜をもってきた。
関所の裏の方に、ちょっとした広場があって、剣の打ち合いをするには丁度良さそうな広さだ。
「よし、打ち合いをしよう。ルールは相手から1本とるか、参ったと言わせること。負傷、死亡などは自己責任とし、相手方にその責は問わない。良いな?」
「承知した。」
「お主は魔術も使えるのか?」
「戦闘用の魔術の基本は習得していますが、宮廷魔術師のような攻撃魔法は備えていません。」
「そうか、では、使う魔術は戦闘用のみにしておこう。モリス、位置についたら開始の合図だ!」
モリス殿の合図があって、戦闘が開始された。
これでも王宮の武術大会ではいいところまで行く。
飛竜騎士隊で腕を磨いているのも伊達では無いんだ。
小さな関所の女戦士ごときに負ける訳が無い。
が、しかし。
防戦一方の女戦士を切り崩せない。
打ち込んでも何をしても全て受けられる。
常に一歩も二歩も先を読まれている。
なら、こちらも相手の心理を読めば・・・。
っと、こちらの攻めが緩むと狙ったかのように攻撃が来る。
これでは心を読みながらの戦闘は無理だな。
攻め続けるしかない!
かれこれ、100合は打ち合っただろうか。
汗がダラダラと流れ落ちる。
相手も鎧や兜を身にまとって激しく動いているのだから、
それなりに疲労が溜まってきてるはずなのに・・・。
追加で200合。
もう、刃がこぼれ始めて、ジャリジャリだ。
二人とも両手剣を使っているから、常に攻防一体の動きが要求されるのに、あの女戦士はひたすら交わすだけ。
なんなんだ?
だんだん、息が切れて来たぞ?
気の緩みと、一瞬剣が下がった隙は見逃してもらえなかった。
キーーーーン!
相手の横薙ぎを、力を振り絞って受け止めたはずなのに・・・。
こっちの剣が付け根から折れた。
「ロメオ皇太子!まだ続けるのか!」
「ま、参りました」
「モリス、判定!」
「ヒカリ様の勝ちです。」
「よし、終わろう。モリス、ロメオ皇太子に娼館の風呂と着替えを用意して差し上げろ」
「承知しました。」
「ヒカリ殿!」
「なんだ?もう剣が無いだろう?」
「いえ、この一本を何か他の物に代えて頂くわけには・・・。」
「お主、これだけの差があって、まだリカが諦められぬか。私を倒すなら有視界外からの矢でも放つことだな。
まぁ、よかろう。2つ条件をだそう。
この勝負に負けた分は、<メルマの商人組合への裏金の停止>だ。関所の通行料を割り引く代わりに、メルマには裏金を停止する。良いな?
次の勝負は、<治水事業>としよう。縁あってサイナスのランドルという商人と知り合った。彼は<ミラニア川のサイナス側の治水事業>を生涯の事業として取り組む予定だ。私は全力で彼を支援する。お主はミラニア川の西岸を治水してみせよ。
この2つの条件をのむか?」
「わ、判りました。」
「モリス!今の2つの条件をロメオ皇太子の署名入りで誓約書を作成してもらえ!あと、飛竜はここに降ろすから、お帰りの際に案内して差し上げろ。私は執務に戻る。」
「承知しました。ではロメオ様、ご案内させていただきます」
うぅ・・・。
世界は広い・・・。
俺の剣の腕では歯が立たないだけでなく、政治的に全く知らないことばかりだ。
先ずは、モリス殿の案内に従い、衣服を整えるのと、2つの誓約書を書いてから王宮に帰還だな・・・。
戦闘シーンにおける<合>という単位に関しての質問がありました。
基本的に刀と刀がぶつかり合うことを、<合>と言います。
前回のリチャード王子とヒカリの戦いでは1合で勝負がつきました。
(実際には、ヒカリの斬撃なので、1合もないかもしれません)
今回のロメオ王子との戦いでは、クロ先生とレナード先生のように、
何回もお互いが剣と剣を打ち付け合って、その回数が100回とか200回に到達した状態を表現しています。
いつも読んでいただいている皆様には感謝しています。
今後とも頑張って続けたいとおもいます。
書き溜めが間に合いません。
年末年始は10日間ぐらい休むかもしれません。




