3-54.視察(4)
さぁ、ミラニアの光と闇を知った。
アルさんからいろいろな情報を聞きたいな。
スラム街から宿に戻る途中、夕飯に良さそうな候補の店を物色しながら帰ってきた。
賑やかで治安も良さそうなお店を選んでおいた。味はもう気にしない方向で。
宿に戻るとアルバートさんが既に帰ってきてた。
宿屋の女将さんが私たちが到着したことを伝えてくれてたので、夕食に出かけずに待っててくれたとのこと。こういうときにチップを払っておくと色々融通が利いて良いよね。
「アルさん、待っててくれたんだ」
「はい。宿屋の女将から伝言があったので。一緒に食事に行けるように待機してました。ところで、そちらの後ろの方はどなたでしょうか?」
「あ、リカさん。という偽名のヒカリさんだよ。」
「え?」
「関所の領主のヒカリさんだよ。ここでは偽名で過ごすよ。」
「アルさんお久しぶりです。もう、私って判らないですか?」
「いえ、その声は判りますが、全然ヒカリさんの雰囲気が無いです。どちらかというと男性を装っている様に見えますが。」
「フウマから治安の問題もあるから、男性として振舞った方が良いって。この宿屋の女将さんには偽名のリカで宿帳に登録してもらってるよ。この名前はいろいろ使い道があるかもしれないから、ご飯でも食べながら話そう。」
「は、はい。」
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賑やかなお店の壁側の目立たないところに席をとって、適当に注文をする。メニューはアルさんとフウマにお任せにした。
「アルさんは、ここでどんなことをしてたんですか?」
「はい。フウマさんと共同で今のロメリア王国の情勢と主要メンバーの動向を確認していました。」
「今回の関所で計画してる件で、特に気になる点とか、おかしな点、急に変わった状況とかあった?」
「はい。大小様々な噂が流れ始めています。
1つ目は、エスティア王国に関してです。
『変な流行り病が蔓延して、王族がバタバタと倒れている。だから、皇太子の誕生会が延期になったのではないか?』『財務大臣が祝福のために出席したが、視察として長期に帰ってこれないのもおかしい。実は流行り病にかかっていて、それを隠蔽しているのではないか?』という、大きな祭事が延期していることへの噂話です。
これは、ある意味で情報操作が上手く行っていると思います。
2つ目は、物価の上昇についてです。
ここ2-3年で物価が上がり続けております。このままでは平民ですら、一部の住人は生活に必要な物が買えなくなりそうです。けれど貴族や騎士団員などは、より裕福な生活がおくれています。『そんな状態は何かがおかしいのではないか?もっと、街道を整備したり、開拓事業に国費を使うべきだ。』などの声が上がっています。これらは、平民から王族への不満が溜まっている表れと考えられます。
これらの状況は、治水事業を立ち上げて成功した場合、その立案者の評価が高まる可能性が高く、一方、そのような公共事業への投資を怠ったことで被害がでることは王族への責任追及の矛先が向くことになると考えられますので、例の戦略を実行する上で、環境は味方すると考えられます。
3つ目は、飛竜騎士団についてです。
『飛竜が喋った。』『飛竜が強力にパワーアップした』など、飛竜に関する噂話が多く聞こえています。普通ですと、あと半年ぐらい先の新年のパレードが近づいたときに、恒例行事として噂に登るのですが、この時期、突如飛竜の噂が増えることはありません。何か、目撃証言があったのでしょうか。
飛竜騎士団がパワーアップしてるとなると、戦争における制空権の問題が出てきます。
4つ目は、<お菓子コンテスト第一回開催>というお祭りです
これは不思議というか面白い話でして、今までそのような物が開催されることはありませんでした。エントリーは明日締め切りで、明後日から開催となります。
『貴族はパンが無いときは、ケーキを食べるんだな』
などと、物価上昇への庶民からの皮肉が聞こえるとともに、『こんな世知辛い世の中じゃ、公式イベントでもなきゃ、面白くないな。』『良いガス抜きイベントだよ。』などなど賛否両論ありますが、話題として盛り上がっております。今回の関所での作戦の件とはあまり関係ないかと。
パッと思いつく最近のトピックスとしては以上になります。」
「アルさん、ありがとう。フウマは今の報告について何かコメントある?」
「全部姉さんのせいだろ。」
「あ、わかる?」
「あ、あの、ヒカリ様、フウマ様、私も話に加わらせて頂いても宜しいでしょうか?」
「私が飛竜に会いに行ったでしょ?」
「はい。我々が関所での雇用を認められた翌日には、どこかへ出発されました。
本当に本物の飛竜に会いに行かれたのですか?何か、暗号とか、有名騎士の二つ名かと考えておりました。」
「飛竜を救ったから、私たちを支援してもらえることになった。」
「全然話が見えません。」
「いろいろあったんだよ・・・。」
「アルさん、姉さんはいつもこんな風だから慣れて。」
「飛竜がヒカリ様の味方になったと思えば良いですね?」
「うん。<念話>が使えれば、お話もできるよ。」
「はい。実父から訓練するように申し遣っております」
「がんばってね。フウマも手伝ってあげて。」
「姉さん、僕の飛竜は捕まてくれた?」
「呼べば来るよ。」
「やったー!」
「怒らせないように気を付けてね。」
「ああ、当然だよ。仲間になって貰わないとね。」
「で、助けるときに飛竜に掛かった呪いも解いたから、飛竜がパワーアップしたって話になってるんだと思うよ。」
「ヒカリ様、お菓子コンテストも主催されているのでしょうか?」
「いや、関所で渡したお土産がきっかけになっていると思うんだよ。参加すれば優勝はともかく、いい線いくよ。」
「それは、王宮に招待されるチャンスかもしれません。今回のミラニアや城下町訪問が例の作戦へ向けて視察でしたら、是非エントリーすべきかと。」
「どういうこと?」
「優勝賞金は金貨10枚で、以下5位まで賞金が出たと思います。また、3位までの入賞者は副賞として、王宮見学ができるのです。」
「それは個人戦?チーム参加もできるの?」
「詳しくは覚えていませんが、チーム長と助手というエントリーができたはずです。」
「フウマ、知ってた?」
「いや、ここ最近のイベントなんだろ?コンテストが目的というより、姉さんのクッキーを作れる人間を探してる気がするよ。関所のメンバーからすると、裏が見えてるイベントだね。」
「じゃ、それにエントリーしよう。材料なんか持って来てないから、魔石でも売って金貨作って調達しよう。調理器具はここの宿屋の女将さんにお願いしようかな。
それはさておき、アルさんはロメリア王国の主要人物とか、騎士団とか、そういう情報もある?」
「はい。どちらかというと、そちらがメインです。
国王はソルム・メディチです。100年以上の歴史のある家系です。
ここ数年は財力が向上しており、貴族の間からも人気があります。
王子、王女合わせて7名ほどいまして、第三王子でありながら、飛竜騎士団に所属しているロメオ王子の人気が一番高いです。
また、エスティア王国からも側室として一人女性を迎えております。
続いて、大臣や侯爵ですが、
飛竜騎士団長がスレイ・スミソニアン侯爵で、実質軍務の総司令官になります。
財務大臣がスニフ・ウフィッツ侯爵です。例のエスティア王国へ視察中の方です。
運輸・建設大臣がハバロア・ルーブル侯爵です。街道や港の整備権限をもちます。
農林大臣がコンチネンタル・メトロポリタン侯爵で、開拓、治水事業を行います。
その他、法務、鉱業、偵察などの大臣がいます。
先ずはここまでで、なにかご質問はございますか?」
「王族と紹介してくれた4人が実質的な権力を持っていて、他の大臣は任命されているけど、発言権がほとんどないと思っていて良い?」
「今回の件でいいますと、外務大臣と法務大臣が兼務しておりますので、折衝の任にあたると思いますが、実質的な武力行使やその決定権はございません。」
「わかった。そのメンバーで特に仲がいいとか、悪いとかあるの?」
「これだけ大きな国ですと、統治している領地も離れてますので、ある意味いつでも独立できるレベルの独自騎士団を抱えております。そのため、仲違いをして、孤立してロメリア王国と戦争をする覚悟がないと、そこまで表立った行動は起こしません。」
「うん。じゃあ、面白くない事柄が沢山あっても、我慢してて表面上は見えてこないってことかな?」
「はい。我々が一般的に集められる情報ではそこまでです。また、その仲違いを狙うような戦略には相手も耳を貸さないと思われるので、下準備に相応の時間をかける必要があるかと思います。」
「フウマもアルさんと大体同意見でいいかな?」
「うん。交渉相手が居なくて武力衝突を前提で考えるなら、あまり詳細情報があっても意味が無いかもしれないね。」
「だったら、想定外のお菓子コンテストで入賞して、王宮内に招待されるのがいいね。いろいろ規模とか城の攻略の難易度とかも見えて来るでしょ」
「そこは姉さんの得意分野だからね。その線から攻めて情報を入手するのがよさそうだよ。そこで更なる詳細が必要になったときは僕が忍び込むなりして、情報を補うよ。」
「じゃ、明日のエントリーに漏れないようにすることと、規定を調べるとか勝つための準備をしよっか。」
「「ハイ」」
いつも読んでいただいている皆様には感謝しています。
今後とも頑張って続けたいとおもいます。




