3-38.アリア
アルバートさんとアリアさんの世話をしたら飛竜に会いに行くんだけど・・・。
「ひかり、今日は疲れただろ。お前の大好きなロールケーキを買って来たぞ」
「え?お父さん、わざわざあそこまで行ってきたの?」
「昼間に予約確認をしたら『2時間ぐらいで出来ますので大丈夫ですよ』って言われたからな。会社からちょっとした寄り道になるけどドンマイだ。」
「ありがとう!このぷにぷにしてて、とてもロールケーキとは思えない食感が私は大好きなんだ。」
「そうか、ひかりに喜んでもらえてお父さんは満足だ。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・ちゃん」
「おねえちゃん・・・。
「おねえちゃん、朝だよ。」
「え?試験が無事に終わって・・・。ここは・・・。」
「ここは異世界のエスティア王国だよ。おねえちゃん。」
「あ、ああ・・・。ユッカちゃんごめん。昨日のロールケーキが衝撃的で夢を見ちゃったよ。」
「おねえちゃん、とっても美味しかったよ。また作ってね。」
「もちろん!」
「ランドルさんとフウマさんは朝ごはんもお弁当にして出発したよ。クロ先生がお姉ちゃんの指導するって待ってるよ。」
「ユッカちゃん、ありがとうね。直ぐ行く。」
いやぁ・・・。参ったね。
日本のことは諦めたつもりだけどさ。
記憶に残る食べ物を食べて、夢にありありと出てきて思い出すってのは、自分が日本への未練が残っているみたいで、ちょっと悔しいな。
で、人数増えたけど朝の体操をして、ピュアをして、クロ先生の指導を受ける。
ピュアの後、アルバートさんはモリスについてったけど、アリアさんは残った。
私がクロ先生の指導を受けてる間、じっと待ってたんだよね。
「アリアさん、お待たせ。私に用かな?」
「私を弟子にしてください!」
「う~ん。」
「ダメですか?」
「弟子ってなに?」
「師匠について、種々物事を学ぶ人です。今回は師匠がヒカリ様で私が弟子になりたいです。」
「あ、それはダメだ。」
「な、なぜに?私の才能が無いからですか?それとも既に一子相伝のお弟子さんがいらっしゃるのでしょうか。」
「ううん。貴方には才能があるし、私に弟子とかいないよ。どう説明したらいいかな・・・。ステラがいいかな。ちょっと一緒に来て。」
「ハイ」
「ステラ~。今、ちょっと時間ある?」
「飛竜探索の準備中ですが。出発が多少遅れるぐらいで宜しければ構いません。」
「いろいろ大変なところごめんね。アリアが弟子になりたいんだって。」
「私は弟子はとりませんよ。あの子らも弟子じゃなくて、勝手に付き人してるだけでしたし。」
「そうだよね~。私も弟子とか居ないからさ。」
「この関所の住人のほとんどがヒカリさんの弟子ですわ。」
「そういうこと言うと、アリアが誤解するでしょ!」
「だって、そうですわ。世界観が変わるきっかけの師だった訳ですから。」
「そ、それは、私が悪かったよ。私のせいだよ。だけど弟子じゃないよね。仲間だよね。」
「そうですわね。各人がどう思っていようと、ヒカリさんにとっては大切な仲間ですね。私もそう思われていて幸せです。」
「って、ことなんだけど、アリア理解できた?」
「表面上の会話は参考になりました。でも、やはり、弟子にして欲しいです。」
「ステラ、どうしよっか?」
「魔術ランクはいくつでしょうか?」
「たしか、錬金術でランク5あるって昨日言ってたよね?」
「はい。金を溶かす<王水>の作成と、保管用の<ガラス容器>まで作成を終えました。」
「ええ~~?ガラス作れるの?」
「養父から『金より貴重だから、大事に使え』と、いつも言われてましたね。」
「ヒカリさん、ガラスってなんですか?」
「う~ん。この国では私は未だ見てないけど、このあいだのクリスタルのペンダントがあったでしょ?あれを薄く延ばして、容器にしたり、窓に嵌めたりするんだよ。」
「透明な容器って、想像しただけでも素晴らしいですわ。」
「この子はガラスを作って、そこに金を溶かす強烈な酸性の液体を保管してるんだって。」
「ヒカリさん、金は溶けませんわ」
「アリア、溶けるよね」
「はい。」
「って、それぐらいにアリアは才能がある子なんだよ。」
「ヒカリさんに才能を認められるなんて、羨ましいですわ~」
「ステラも才能あるじゃん。この場の3人だけだから、こっそり無詠唱で魔石作って見せてよ。」
「お安い御用ですわ」
って、みるみる大きく魔石を生成していく。
あーあ。
例の金貨3000枚相当の魔石を一分も掛からずに作っちゃったよ。
もう、いいけどね。
「ひ、ヒカリ様!私、ステラ様の弟子になりたいです!」
「ステラ、どうしよう?」
「ヒカリさん、私を嵌めましたね?」
「ステラの才能を見て貰っただけだよ。」
「元は、ヒカリさんのせいですよ!」
「ふふ~ん。」
「アリアさん、私はどちらかというと魔術には長けていて、ある部分でヒカリさんより優れている点があるかもしれません。けれど、科学的な知識はヒカリさんには敵わないわ。そこには嘘偽りはないの。」
「あの、昨日夕食会で話に登場した田舎の娘さんって、ステラ様のことでしょうか?」
「ヒカリさん、あの夕食会で私はちょっとだけ顔見世しましたけど、何かあったんですか?」
「いや、たしか、『エルフの族長なら魔石の作り方を知ってるかも』という話の流れできてもらったんじゃないかな?あと、前夜祭でステラを見掛けたって話で。」
「わ、私は確かに片田舎のエルフ族の娘ですけど・・・。」
「ステラ様、王子と婚約されるのですか?」
「いいえ、違います。ヒカリさん、皆さんにどういった説明をされたのですか?」
「お妃様がいるから、魔石の出所は言えなかった。」
「ああ、そういうことですか。納得しましたわ。」
「わ、私も会話に混ぜてください!何でもしますから!」
「ステラ、どうする?」
「魔術ランク5相当の実力があるのでしたら、<念話>でも覚えて貰ったら如何でしょうか?お妃様も魔術ランク5相当らしいので、すぐに判明してしまいそうですけどね。」
「<念話>ってなんですか?」
「言葉でしない会話のことだよ。」
「意味がわかりません。」
「<念話>が実在することを証明してあげるよ。
簡単な実験をしよう。
今からステラだけ聞こえるように、私が想像も出来ないような内容を口頭で伝えて。
嘘でも本当でも意味の無い数字の羅列でもいいよ。
ただ、私もモリスほど記憶力が良いわけではないから、そこそこ覚えやすい内容だとミスが無くていいかな。」
「わかりました。ちょっと離れて立っていてもらえますか。」
「うん。視界に入るところでいい?それとも見えないところがいい?」
「視界に入って、音が聞こえないところが良いです。」
「うん。ステラよろしくね。」
で、20歩くらい離れたところで、ぼ~っと立ってる。
するとステラから念話が届く。
<<ヒカリさん、右手で人差し指、中指を立てて、手のひらをこちらに向けた状態で目を挟むように当てる。左手は腰に当てる。その格好をして立って貰えますか?>>
<<わかった>>
お~い~!
これ、何かの決めポーズでしょ。
ぐ、偶然なの?ま、いいよ。やるよ。
あり得ない事柄で、試すには丁度いいもんね。
指示されたポーズをとると、向こうからステラが手を振って返す。
もう、終わりでいいのかな?
<<ヒカリさん、終了ですわ。戻ってきてください。>>
<<うん>>
「二人は伝説の戦士か何かの生まれ変わりですか?」
「ステラ、そうなの?私は違うけど。」
「私も多分違いますわ。」
「それで、その・・・。修行とかコツとかあるのでしょうか?」
「錬金術ランク5を達成したときの気持ちを思い出して、その思いで<念話>したい人に呼び掛ける感じかな。『伝えたいことを頭のなかでぎゅ~~って作る』らしいよ。」
「確かに、<思い>を煮詰める感じでしょうか。慣れれば普通の会話と変わらないのですけどね。」
「そ、それだけですか?」
「たぶん。」
「私はもう少し苦労しましたが、最後の部分は今言ったとおりですわ。」
「いつまでに出来れば合格でしょうか?」
「いつまででもいいよ。あ、でも話しかける相手はステラか私だけにしておいて。<念話>ができるメンバーは関所の中でも限られた人だけだし、<念話>が実在することも一部の人間しか知らないから。特に、メイドのマリアさんには<念話>という言葉や訓練していることも内緒ね。あと、さっきの魔石生成も内緒だよ。」
「なぜ、マリアさんには内緒なのでしょうか?」
「他の人にも内緒なんだけど、一番勘が良い人でさ。わかっちゃうと、教えてあげる必要が出てくるからね。」
「仲間は多い方がヒカリさんも嬉しいのでは?」
「うん。」
「でしたら何故に?」
「う~ん。まだまだいろいろな秘密があってさ。全員で共有できることと、出来ないことがあるんだよ。貴方が<念話>を通せるようになって、関所の夕食会メンバー入りが出来たら、そのとき教えてあげるよ。」
「わ、分かりました。先ずは自分が夕食会のメンバーに入れるように努力します。」
「うん。私が留守の間はモリスの言いつけを守ってね。よろしく。」
「はい!」
真面目ないい子だね。
ガラス生成ができるってことは、
材料を上手く集められれば、ガラス容器を大量につくれるんだけどさ。
問題は材料が天然の珪砂とかあるのか、それとも草木灰から抽出したのかを聞きたいね。まぁ、なんであれ、高温炉も必要だし、やることは満載だ!
いつも読んでいただいている皆様には感謝しています。
今後とも頑張って続けたいとおもいます。




