3-39.飛竜を訪ねて(1)
久しぶりに冒険の始まりだ。
「モリス、そろそろ出かける。ステラとユッカちゃんの3人だよ。アリアには<念話>を訓練するように言っておいた。それが出来たら弟子にするってことで。アルバートさんには、地形把握だけでなく、鉱物の産出地なんかも把握できるようになって欲しいし、<念話>も訓練できればして欲しいよ。」
「承知しました。くれぐれも気を付けて行ってきてください」
「うん、がんばるよ。」
「ステラ、ユッカちゃん出発だ。準備はいい?」
「「ハイ」」
「よし、出発だ!」
ーーーー
まぁ、3人で大きな荷物も無いから楽々だね。
<光学迷彩><重力遮断><飛行術>の3点セット。
ステラは妖精の力を借りてるらしいけど、みんな飛べるから地形無視だね。
西に飛んで、そこから北上して川を遡る。
昨日地図で見せて貰った通り、森の中を流れる川を上から眺めながらだね。
これなら道に迷うことも無いし、2時間もあれば山の上の湖まで簡単に着くと思うんだよね。
「ヒカリさん、危ない!」
「え?こんな空中になにも・・・。ぎゃ~~~」
なになに、なんな訳?
風が出せない。重力遮断は効いている。
突然推進力のコントロール不能。
ステラが落ちていく、ユッカちゃんが引き上げようとしてるけど、
こっちは宇宙飛行士の空中遊泳状態で、追いかけられない。
あ!
<<<重力遮断50%カット>>>
よし!落ち始めた。もう少しでユッカちゃんに追いつく。
追いついたら重力遮断の割合を変えれば落下速度は調整できるはず。
「ユッカちゃんがんばれ!」
ユッカちゃんの浮遊の魔術の原理が良く判らないけど、
私みたいに一気に重力遮断の割合を変えたりできないみたい。
それか、ステラを引き上げるのに必死で慌ててるか。
よし、追いつく!
「ユッカちゃん捕まえた!ステラもついでに捕まえた!」
<<<重力遮断95%>>>
よし!これで3人の落下速度は緩和出来た。
なんかラピュタにでてくるシータみたいだ。
ステラは息も絶え絶えでゼーゼー言ってる。
「ステラ、ユッカちゃん、大丈夫?」
「おねえちゃん、私は大丈夫。だけど風の魔法が使えないの。」
「ステラは?」
「妖精さんとの通話が全部途絶えてしまいましたわ。お二人と違って浮遊も妖精頼りなので、浮遊も飛行も出来なくてびっくりしましたわ。」
「うん、私も浮遊しかできない。このまま静かに地上に着地して策を練ろう。」
道も無い森の中に、方向転換も出来ずに着地するんだから、無事な訳が無い。木や草にガサガサと当たりながら重力に引きずり降ろされていいく。
よし、軟着陸成功だ。
「ふぅ・・・。助かったね。
ステラは何で私が危険って分かったの?私は判らずに突っ込んじゃったよ。」
「何か、結界があるのが判りましたの。どんな結界かわからなかったので、とりあえず注意を促したかったのですけど・・・。」
「ごめん。私の緊張感が足りなかったね。魔術を封鎖できる結界が張ってあるとは思わなかったよ。
ところで、この結界ってさ、放出しない魔術は効果があるみたいだけど、ステラはどう?」
「はい。私も<保護コーティング>の魔術は有効です。それに<身体強化>も継続しています。」
「あ、そういえば私も<身体強化>も<光学迷彩>もまだ効いてるね。
って、ことは、術者が触れてる極近傍は魔術が有効ってことかな。
だとすると、この結界の中は<念話>が通らないかもよ?」
「おねえちゃん、<念話>が通らない。関所のみんなとも遮断されちゃったよ。」
「そっか・・・。ステラ、上空だったから判らないんだけど、この結界は半球状に広がってた?それとも壁みたいなのだった?」
「正確には判りませんが、湖の辺りを中心に半球状に広がってた感じです。なので、上空から落下したので、地上を歩いて戻って結界の外にでるのは相当時間がかかると思いますわ。」
「じゃ、このまま、森を切り開いて、山の上に出ようか。川の位置も判らなくなっちゃったから、尾根沿いに進むのがいいと思うんだ。」
「「ハイ」」
「私のナイフは業物にラナちゃんのコーティングがしてあるから、森を進む上で邪魔な物があっても、何でも切れると思うんだ。もしダメなのがでてきたら、ユッカちゃんの斬鉄剣の出番だね。
それと、二人とも靴は大丈夫?私はトモコさんの借り物だからかなり丈夫で良くできてるからいいんだけど。」
「おねえちゃん、私もお母さんが作ってくれたのを履いてるから一緒だよ。」
「私の靴も保護コーティングが機能しているので問題ありませんわ」
「よし、じゃ、気を付けて進もう。<索敵>もしておいた方が良いね」
「「ハイ」」
さて・・・。
川の東側を飛んでて川を見失ってるから、西方向に山を登っていけば尾根にでるか川や滝に出るはずなんだよね。
神器の斧ほどじゃないけど、ナイフを持った腕を軽く振るだけで斬撃みたいのが飛んでいくよ。<斬撃みたいに切れろ>と念じてるんだけどね。
とすると、この斬撃は、魔術ではなくて、私の魔術に反応した何かが迸ってることになるね。ラナちゃん恐るべしだ。
斬撃で森を切り開いて、倒した木を超えたり、つる草に足を取られたり、へんな虫を踏んづけたり、ヒルが落ちてきてコーティングの上で這いずり回ってたりと年頃の娘さんには結構な重労働っていうか、過酷な山登りですよ。
「はぁ・・・。ちょっと休憩しよっか」
「「ハイ」」
「結構キツイね。」
「ヒカリさん、先頭代わりましょうか?」
「う~ん。ステラはこのナイフ使える?ラナちゃんがコーティングしてくれたときに、『ヒカリが凄いのよ』とか言ってたから。」
「ちょっと貸してくださるかしら?」
「はい、どうぞ」
ステラがナイフで腰かけている大木に切れ込みを入れる。なんか割と普通の鋸とかナイフで木を削ってるように見えるね。
「ヒカリさん、このコーティングは受動性ですか?能動性ですか?」
「質問の意味が良く判らないけど、<切れろ>とか<溶けろ>とか念じながら切ると、普通のナイフじゃない効果が発揮できるよ。」
「掛け声じゃなくて、無詠唱で念じるのですね?」
「うん。」
「ちょっとやってみます!」
ズダン!!
って、いきなり大木がスッパリ切れたよ。
ステラも十分に使いこなしてるじゃん!
って、ステラがはぁはぁ言ってる・・・。
「ステラ、ちゃんと切れたみたいだけど、大丈夫?」
「ひ、ヒカリさん、(はぁはぁ)こ、このナイフは・・・。
とても疲れませんか?よく、これ使って山登りできてましたね。」
「分かんないけど、今のところ変なところはないよ。」
「そうですか・・・。私には力加減が上手く行かないのか、とても疲れます。
ちょっと、そのナイフを振るって歩くのは無理かもしれません。」
「おねえちゃん、私にも貸して!」
「いいよ。なんか使い方が難しいみたいだから気を付けてね。」
「うん。おねえちゃんがやってた、<かまいたち>みたいのはどうやって出すの?」
「<斬撃出ろ!>ってナイフを振ってたよ、遠くまで届いて楽だったから。」
「私も真似していい?」
「いいよ。」
ユッカちゃんがナイフを上段に構える。
何やら詠唱してるのか、無詠唱で力を溜めてるのか・・・。
あ、ナイフを振った・・・・。
ええ~~~!
や、山が削れた。
「ゆ、ユッカちゃん、危ない。崖が崩れる。逃げて!」
慌てて3人で荷物を持って山の上側に這い上がる。
いや~~、崖が崩れるとはね・・・。
で、崩れた向こう側に滝が見えた!
「はぁはぁ・・・。みんな無事?落とした荷物とか無い?」
「「は、はい!大丈夫です」」
「よかった。みんな、見てみて!あそこに滝がみえるよ。このまま登って行ったらもうすぐ尾根に出れるよ。尾根に出たら滝の全景も見えて、頂上までの距離も判ると思うよ。ちょっとがんばろう。」
いやはや、なんといいますか、
落ち着いて休憩もできないね。
冒険ぽくって楽しいけどね。
いつも読んでいただいている皆様には感謝しています。
今後とも頑張って続けたいとおもいます。




