3-11.モリスの家族
さて、留守の間の話と、
領主としてやることやらないとね。
「おねえちゃん、夕ご飯だよ。」
「あれ?ユッカちゃん!」
「おねえちゃん、おはよ。」
「ユッカちゃん、おはよ。魔力切れは?」
「さっき起きた。光の妖精さんは無事だった?」
「私が刺されて殺されそうになったぐらい元気。」
「おねえちゃん!大丈夫?」
「あ、ニーニャの作った仕掛けナイフだったから大丈夫だよ。お母さんの服を汚しちゃってごめんね。光の妖精さんには、いろいろ誤解があったみたいだね。
ユッカちゃんこそ、魔力切れするまで頑張って大丈夫なの?」
「う~ん。わかんない。気持ちがいいものじゃないことが分かったよ。」
「そうだよねぇ。あれはあまり味わいたくないね。夕ご飯いこうか。」
「うん。」
ーーーー
「みんな、おはよう。みんなは元気?私は二人の妖精を助けられたことは嬉しいけど、難易度が高くて疲れたよ。みんな、協力してくれてありがとうね。
あれ、今日はクロさんとライトさんだけじゃなくて、ウンディーネとシルフもいるね。どうしたの?」
「うむ。ワシからヒカリ殿に話をさせて頂くのじゃ。少々堅苦しく、厳しい問いかけになるかもしれんが、我々4人が知りたい事なんじゃ。良いかな?」
「うん・・・。改めて妖精の長たちから問われるとちょっと怖いね。ご飯を食べて、ゆっくりした気持ちで話をしても大丈夫な内容?それとも緊急に直ぐに対応しないといけない内容かな?」
「ゆったりと、しっかりと、気持ちを整理した上で答えて欲しいのじゃ。また、ヒカリにとっても直ぐに答えが出ず、時間が掛かることなのかもしれんのじゃ。」
「わかった。ご飯食べ終わって、食後のデザートでも楽しみながらでいいかな?」
「良いのじゃ。」
「じゃぁ、お城と地下迷宮に行ってた間の報告を整理してお願いします。」
「では、私からで宜しいでしょうか。」
「うん、モリスお願い。」
「1.開拓について
ベイスリー一族の3家族、その他に10家族を受け入れました。
えー、ベイスリー家は関所やこの館関連の雇用とさせて頂きました。
10家族につきましては、開拓小屋を与え、一家族当たり10ha(=100mx1000m)を農地として区割りしました。これは、100歩x1000歩相当の面積になります。開墾と種まき済が20ha、開墾済みが80haになります。すなわち、100haの開墾作業が終わった形となります。まだまだ未開拓の土地はありますが、後述のインフラの整備が見えないため、ベイスリーさんより、第二次開拓団を要請すべきか確認が来ています。
2.<インフラストラクチャー>の整備について
(1)関所を通過せずに直接メルマに抜ける街道が欲しい。これは森と関所を通過する分、直線的にメルマに向かえれば時間の節約になるとのこと。
(2)汚物やゴミ処理のルールを個別収集の許可も欲しいとのこと。この関所で集中管理するのは構わないが、運搬の手間がかかるので、仕組みや目的を説明頂き、決められたルールを守る前提で自立的な運営を許可して欲しいとのこと。
(3)川の水を自由に利用したいとのこと。出来れば、水車の樋の仕組みを各家庭でも利用できるとありがたいとのこと。
(4)森の薪を自由に採取する権利がほしいとのこと。今は共同の窯とそこにある薪を使わせてもらっているが、農地が広がるにつれて、小屋からの距離が遠くなり不便であるとのこと。
(5)風車を利用した粉ひき所を完成させてくれてありがたいとのこと。農地に風が吹いてないのに、風車が回る仕組みが良く判らないという疑問もでています。
3.森の利用権について、
(1)薪を取る許可が欲しい
(2)狩りに入って、動物を利用する権利が欲しい
(3)木の実やハーブなどを採取する権利が欲しい
これら、要望だけで、収集物の販売をしたいなどの詳細は確認できておりません。
4.畜産業について、
(1)イノシシは本当に囲うのか
(2)牛が100頭以上に増えたが、どのような計画なのか
正直、牛だけで手に負えず、かといって、放し飼いにするにも既に種まきした場所が被害を受ける可能性があるので早めに決めて欲しいそうです。
5.関所について、
(1)お金があれば、我々も食事に行っていいのか?
(2)農産物を持ち込んで露店販売はできるのか?
など、関所の利用についての質問がきております。
以上ですが、従来の関所の運営の規模では管理不能な状況になりつつあります。」
「ありがとう。都市計画、分業制、市場立地などなどだね。部分最適化は更なる混乱をもたらすから、一旦保留にさせてもらって、後で一個ずつ確認していこう。
次、ニーニャお願い。」
「いいぞ。私の番な。
1.水車、風車について、
娼館、関所には樋を引いて、水道として利用できる環境を構築したぞ。
風車はシルフの力を借りて、粉ひき風車を作った。いつでもボタン一つで粉が作れるぞ。
2.冷蔵庫について、
魔石を使えば、その魔力を消費する形で長い間の氷精製と冷却の仕組みは作れる。けれど、シルフの結界のように、魔石も魔術も使わずに利用するには、クロさんの結界の力が必要だぞ。
3.高温炉の熱源について、
ライトさんが雑談に加わったとき、『私はE=mc^2のcよ』とかなんとか。ヒカリなら分かるんじゃないかと言っていたぞ。
4.空飛ぶ馬車について、
話が長くなるから、また一緒に考えたいぞ。1つ言えることは馬は要らんから、空飛ぶ箱とか籠になるぞ。
5.船について、
やることが大体終わってきたから、手の空いたドワーフから船の修理と改造に入ったぞ。以上だぞ」
「ニーニャありがとうね。そっか。妖精の長4人が集まる訳だ。判ったよ。
フウマ、ステラ、お城の話と地下迷宮の話をお願い。ユッカちゃんとシルフは補足があればお願いね。」
「じゃ、俺から王城での動きを簡単に説明するよ。
結論から言うと、
1.ヒカリ殿が伯爵になりました。
2.ロメリア王国に金貨200万枚相当の借金を負わせることに成功しました。
3.今回の勝負で、神器3つ、メルマの自治権を手に入れました。
神器の剣と指輪はヒカリ殿預りで、ニーニャが自由に使う権利を持っています。
メルマの自治権は城下町に住むベッセル殿に管理を委託しました。
4.これら勝利の結果として、ヒカリ殿が王子の婚約者候補として確定しましたが、公式発表は後日になります。
尚、勝負の方法は、
<エスティア王国への寄付金額が多かった陣営候補を正式に婚約者とする>というルールの<オマケルール>として、<偽物を寄付したら10倍の支払いとする>というルールにより、相手が寄付した20万枚の金貨の10倍の借金を背負わせることに成功しました。一方、こちらは、シルフ殿他の協力により、魔石や属性石を対価として並べることで相手に勝利したため、金銭的、人的、物的な損害はありませんでした。
以上です。」
「では、私は地下迷宮でクロさんを救出した要点を報告させていただきますわ。
基本的に地下迷宮は宝箱や強敵は無く、あくまでメンテナンス通路を偽装したレベルの内容で、迷宮としての面白みは無いものでした。
一方で、ヒカリさんが最深部まで調査をすること主張されていましたので、最深部にて、クロさんを発見し、救出しました。」
「二人ともありがとうね。シルフとユッカちゃんは何か追加である?」
「お妃様が冷蔵庫と空飛ぶ馬車を欲しがっていたよ。その代わりに神器とメルマの権利を貰えたの。」
「ヒカリなら分かると思うけど、次はロメリア王国との武力衝突が想定されるね。相手が金貨200万枚の要求を呑むわけがないだろ?」
「あ。そうだ。お妃様の神器は借り物だから、お妃様の望みを実現できないと返さなくちゃいけないんだ。不味いね。本気でニーニャと一緒に考えよう。
シルフの話は想定してる。2か月の猶予があれば、食料自給率を上げて、武力衝突に耐えうる状況になってると思う。その他の交戦手段は今のところ情報不足だ。
他に皆への報告とか共有したい事、困っていることと、ある人いる?」
「よし!これで報告も終わったし、妖精さん達の家族の問題は解決したね。
あ、モリスって、家族はどうなってるの?聞いてもいい話?」
「ええ、構いません。妻は若い時に亡くしました。まだ幼かったので、働きながら子守をすることは叶いませんでした。そのため、子供はそのタイミングで2人を里子に出しました。メルマの裕福な商人に引き取っていただきました。」
「う~ん。聞いちゃったから、敢えて聞くけど、子供と会ったり、引き取ったり出来ないのかね?」
「20年近くの生活費を考えると、1人金貨100枚でも厳しいでしょう。本人たちもこの関所と父の元に戻りたいか判りません。」
「メルマの商人なら、今回の騒動で自治権がエスティア王国に移ったんだよね。ベッセルさんに当たって貰おうか。」
「いえ、そんな、私のために・・・。」
「嫌なの?」
「諦めていますので、夢や期待は・・・。」
「子供たちの名前と引き取り手を教えて。」
「アルバートが18歳の男性、アリアが17歳の女性、引き取り手はランドルさんです。」
「分かった。先ずは本人たちの生存確認と意思確認から入ろうと思う。金銭的な問題だけだったら解決する方向で行くから。」
「大事な時期ですので、あまり時間を割かれるのはどうかと・・・。」
「信頼できる人材が必要なのさぁ。それもお父さんに似た優秀な人材がね。」
「いや、あの、その・・・。判りました。お願いします。」
「うん。フウマ、明日の朝から動けるかな?
ベッセルさんに表向きはメルマの自治権はロメリアが所有してる風を装って欲しいと伝えておいて。そのついでに、ランドルさんの話もしておいて。
あと、ロメリアとの戦争に備えて、とにかくたくさん情報収集が必要なの。その情報集めの人も必要ならどんどん雇って。特にメルマ、ロメリアの地図、情勢など徹底的にね。」
「分かった。この時間ならベッセルさんも起きてるかもしれない。今から動くよ。」
「いや、今日は休もうか。連日連夜働き過ぎだ。」
「地下迷宮は俺にとっては散歩みたいなもんだったよ。大分休養になったから大丈夫だよ。」
「わかった。ありがとうね。ゴードンさんのところに寄って、食料一式をお土産に持って行っていいから。」
「おねえちゃん、私もフウマにいちゃんと一緒にいくよ。カバンがあるから荷物も運べるし。」
「ユッカちゃん、魔力切れの回復は大丈夫?」
「うん。げんき。」
「わかった。じゃ、フウマとユッカちゃん食事が終わったらお願いね。」
「「了解」」
「モリス、明日からベイスリーさんを加えた3人で都市計画とか開拓移住者の斡旋策を練り始めたい。ベイスリーさんの時間を押さえてくれるかな。」
「はい。」
「ヒカリさん、私も何かお手伝いできることは無いかしら?」
「この領地でできる産業を推進したいんだよね・・・。
天然酵母の培養、ハーブ類の世話、ハーブオイルなどのハーブ製品の調合、ステラの革作成技術、ゼラチンの作成、あと、出来ればお酒の作り方とか。そんなことをこの領地で誰でもできるようにしたいな。」
「エルフの子達なら、私が教えれば出来ると思いますわ。」
「お酒もできるの?」
「どこか調子が悪いのですか?」
「え?なんで?」
「エルフのハーブ酒が必要なのでしょうか?」
「ううん。それは、また今度別の機会で。これまで2回ぐらいパーティーで飲んだ樽に入っていた、食事を楽しむために飲むお酒の話。」
「ああ、食事を楽しみながら酩酊状態になるものですね。」
「そうそう。そっちの話。」
「私は作ったことが無いですわ。きっと、あの子達もお酒と聞くと薬用のハーブ酒の事だと考えますわ。」
「そっか。考えておく。革の作成みたいにやり方が判れば、お願いするかもしれないけど、いいかな?」
「はい。手伝えるなら協力させて頂きますわ。」
「あー。モリス、長老との話に入る前に、デザートを食べよう。私は<ミルクテロン>3人前。他の人のは適当で。」
「承知しました。他の方は<プリン>、<ミルクテロン>どちらが宜しいですか?」
「「「「「「「「両方」」」」」」」」
「畏まりました。」
いつも読んでいただいている皆様には感謝しています。
今後とも頑張って続けたいとおもいます。




