3-10.嘘
今回はゴードンに助けられた形だね。
私としては照れ臭くって、もぞもぞしちゃったけどね。
「ヒカリ殿、そしてお仲間の皆さま、我々親子を救出頂き大変感謝しております。また、娘の不躾な態度と失礼な行いに関して謝るだけでは済まないと感じておりますが、どうぞ、今日の所は謝罪の意だけでも汲んで頂けないでしょうか。」
「私は死ななかったから、いいよ。」
「姉さんがいいなら、いいよ。」
「ヒカリさんがいいなら、いいわ。」
「ヒカリが死んだら困るぞ。あのナイフは私が作ったからいいんだが。」
「私は領主に代わられると無職になります。それ以上に心の穴が埋まらなくなるのが困りますが。」
「ヒカリ、僕の注意が足りなかった。ごめん。」
「ワシも注意が足りず、申し訳ないのじゃ。」
「みんなありがとう。今後は気を付けるよ。で、ユッカちゃんは?」
「魔力切れかもしれない。ぐっすり寝てる。」
「そっか、無理させたね。今はゆっくり寝ててもらおう。みんなも色々心配かけてごめん。特にゴードンには悪い事したね。あの人は念話を使えないからね。
で、どうしよう?皆、ほとんど寝てないんだよね。朝ご飯を食べてから寝るのでいい?」「「「「「「ハイ」」」」」」
「あの、ヒカリ殿!」
「クロさん、なに?」
「我々の処遇はどのように・・・。」
「あれ?モリス、食事と部屋に空きは無いの?」
「ゴードンにはここに居る人数分の朝食を注文してあります。クロ殿の部屋は2人で寝られると思いますが。」
「そうらしいけど、いい?
あ、情報収集とウンディーネと話がしたかったんだっけ?ウンディーネが元気なら食事しながらでいいかな。情報の種類次第では、モリスさん他いろいろな人に声をかけてみるけど・・・。」
「ワシはかまわんのじゃ。」
「私も集めたい情報を私が伺って宜しければ、心当たりに手配をすすめますが。」
「姉さん、俺も手伝うよ。」
「私も時間がかかるかもしれませんが、エルフの伝手を使って協力させていただきますわ。」
「クロさんが必要な情報が何か判らないけど、僕も手伝うよ。もう、僕の探し物は見つかったしね。」
「私もドワーフ関連なら、それなりに伝手があるぞ。」
「クロさん、それでいい?」
「ヒカリ殿!」
「え?なに?ご飯食べながらじゃ駄目?」
「私は貴方に何をして報いればいいのですか?」
「ご飯食べながら考えよう。みんなお腹空いてるし。美味しいもの食べると気持ちが楽になるよ。」
「はい・・・。」
ーーーー
「ゴードン、ごめん!」
「ヒカリ殿、酷過ぎます!味方に作戦は伝えてください!モリス殿から話を聞かなければ荷物をまとめて家出するところでした!!」
「間に合ってよかったよ。あそこで死んだ振りしないと、本気で殺されるところだったんだよ。妖精相手に生身の人間が勝てないって判るでしょ?」
「そ、それは、まぁ・・・。」
「うん。だからごめんなさい。今後も頑張るから、美味しいお食事よろしくね。」
「はい。喜んで!今日はいつも通りの朝食ですが、また機会があれば腕を振るわせて頂きます。」
「みんな、味はいつも通り?」
「「「「「「ハイ」」」」」」
「ヒカリ殿はいつもこのような物を召し上がっているので?」
「たぶん。外出したら食べられないけど。」
「さようですか・・・。」
「ライトさんは?」
「・・・。」
「じゃ、クロさん、欲しい情報とか、ウンディーネと話したかったこととか。」
「ここに全部ありました。新しく出来たことと言えば、ナイトメアの討伐に向かいたいぐらいでしょうか。」
「え?今まで何が欲しかったの?」
「ライトが閉じ込められたペンダントとその行方、そこからの救出方法、ライトの婚約者のシルフの行方。全てここにありました。」
「なんか、偶然が重なってて良かったね。」
「偶然なのですか?」
「あ、ここに居るみんなの努力のおかげ。私の部分は偶然だけど。」
「ヒカリだぞ。」
「姉さんだろ。」
「ヒカリさんですね。」
「ヒカリさんですわ。」
「ヒカリさんや、お主のおかげじゃ。」
「僕もヒカリだとおもう。」
「お~い~~!
王宮での戦争も、クロさんの救出も、ライトさんの救出も、みんなのおかげじゃん!」
「「「「「「ヒカリを手伝っただけだね」」」」」」
「分かったよ。皆に感謝してるよ。ご飯終わったら寝よう。それでいい?」
「「「「「「ハイ」」」」」」
「あ、いえ、ヒカリ殿!我らはどの様に報いれば良いのか・・・。」
「あ、二人でナイトメア探しに行くから急ぐんだっけ?闇の属性石でも転がしていってくれれば、ニーニャが上手く魔道具つくってくれるかな・・・。」
「闇、風、水の属性石があれば、冷蔵庫はできると思うぞ。」
「そ、それは、早く我らに出て行けと?」
「え?急がないなら、いつまででも。モリス、客間空いてるんだよね?」
「はい。いざとなればレイ殿の倉庫を改造したり、我々が開拓者用の住居に引っ越すなどの手があります。」
「クロさん、そういうことで。」
「ウンディーネ殿、私は人間と話をしてるのだろうか?」
「ヒカリさんだからじゃ。」
「どういう人物なのだ?」
「見て、感じた通りじゃ。ワシはここの生活を楽しませてもらっておる。」
「みんな!嘘よ!騙されないで!ヒカリは異世界から来た魔女よ!信じて!」
「「「「「「それが?」」」」」」
「ライト、異国であろうと、異世界であろうと、私はヒカリ殿とその仲間達のお陰で救われた。ヒカリ殿が出身を気にしているとしたら、そこは言及しない配慮があって、然るべきだ。」
「クロさん、みんな、ありがとうね。私はこの世の全ての人と仲良くできるとは思ってない。けれど、縁があって出会った人との思いは大事にしたいと思ってる。ライトさんは、私の何が不満なのか分かる人いる?」
「ヒカリに猜疑心を抱いているんじゃないかな?」
「シルフ、どういうこと?」
「僕もウンディーネもステラもニーニャもヒカリの奴隷だろ?普通の人間なら、奴隷に出来てるってことで、妖精や種族の族長の支配者になった気なる。人当たりがよさそうに振舞ったり、美味しい食事で皆を騙してるようにライトに見えるんだよ。」
「それは困った。」
「ほら!嘘がばれたのよ!私の言った通りでしょ!」
「嘘が無いから、説明も弁解のしようが無くて困るんだよ。」
「ナイトメアでも無いのに、私の封印を解いた時点でおかしいわ!」
「クロさんに説明したとおり、みんなが凄いの。私は偶々居ただけ。
ライトさんが正しいなら、私以外の全員がナイトメアだ。それは私としてもちょっと困る。嘘であって欲しい。
というか、皆の実力は本物だからナイトメアより上ってことになると思うよ。そもそも、私はナイトメアのことをしらないんだけど、ナイトメアってそんなに凄いの?」
「<孤立の封印>を大人数で用いて、私を封印したわ」
「フウマ、<孤立の封印>とか<孤独の封印>ってナイトメアしか使えないの?」
「いいや。俺が知ってる話だと、人数さえいれば、時間をかけて死体を変性するだけだと思うよ。ユッカちゃんみたいな短時間でできるかは知らないけど。」
「ライトさん、ナイトメアでなくても出来るって。その分、人数をかけてやる作業らしいけど。」
「ナイトメアは金の輪っかで封印が解けないようにクリスタルを囲ったわ。」
「ニーニャ、クリスタルとか宝石を金属に嵌めるって、ナイトメアじゃないと無理なの?」
「いいや。人族でも器用な人なら出来るだろうし、ドワーフならほとんど誰でも出来るぞ?」
「ライトさん、ナイトメアでなくても出来るって。」
「ナイトメアはその輪が外れないように暗号化した呪文で封印をしたわ。」
「モリス、あの暗号は非常に特殊な物なの?」
「いいえ。私が若かりし頃、博士論文として投稿したものです。王立図書館への入館許可さえ得られれば誰でも確認して使用可能な内容です。ただ、逆変換の解読は私ぐらいしかできないかもしれませんが。」
「ライトさん、その暗号はここに居るモリスが作って、それをナイトメアが利用しただけだって。暗号を解くのはナイトメアでも出来ないって。」
「ナイトメアは彫り込んだ呪文を同じ金属で埋めて、見えないように細工したわ。」
「ニーニャ、あの細工は難しいの?」
「人族の細工師では難しいかもしれないぞ。ロマノフ家でも一部の者にしかあの技は伝授されていないぞ。読めない暗号を<埋めて欲しい>とだけ依頼があったなら、一族の誰かが埋めた可能性があるぞ。逆にそこらの魔術師があの細工は出来ないし、文字を残したまま埋めた物を除去なんか、ロマノフ家でも私ぐらいしかできんぞ。」
「ナイトメアじゃ、あの細工はできないし、ドワーフでもごく一部しか使えない技なんだって。掘り出すことはニーニャ以外多分出来ないんだって。」
「さらに、傷つけられないように魔道コーティングで仕上げてあったはずよ。」
「ステラ、お願い。」
「ヒカリさん、すみません。あのコーティングは私の師匠が発表した方法です。便利な保護膜でしたので、あっというまに広まったと聞いてますわ。ただ、あのコーティングのみを解除することが出来るのは、師匠か私ぐらいしかできないかと・・・。」
「あのコーティングはステラの師匠が作ったんだって。ナイトメアじゃ解除できないって。」
「そ、そんなの偶々ですわ!」
「だから、私はみんなの努力以外、たまたまだって言ったよ!嘘言ってないよ!」
「ヒカリさんが異世界から来た魔女は本当ですわ!」
「そ、それは・・・。本当だけど、嘘は言ってない・・・。みんなだって、こういうときじゃなかったら、自分の過去の成果とか、特技をわざわざ披露したくなかったと思うんだよ。今の状況を解決するために、<個人の特別なスキル>のことを説明してくれたんだよ・・・。」
「ヒカリの奴隷だから、皆が嘘を言って、私を騙してるのよ!」
「モリス、フウマ、私の奴隷の印ついてないよね?」
「私にはついておりません。」
「俺も無いよ。」
「私は人族のことは言ってないわ。妖精とドワーフとエルフのことよ!」
「ウンディーネはどうしたんだっけ?」
「奴隷として売られるときに、船が座礁して海人達と一緒に放置されておった。そのとき、ヒカリ達に助けて貰ったのじゃ。救出されたとき既に奴隷の印は付けられておったのじゃ。ヒカリの領地で世話になるので、そこに居るモリスに所有者をヒカリに変えて貰ったのじゃ。」
「シルフは私じゃなくて、ステラだよね?」
「そうだよ。僕はステラに買い取って貰ったんだ。」
「ニーニャは、私の前の領主からだよね。」
「そうだぞ。ヒカリが神器を貸してくれるから一緒にいるだけだぞ。」
「嘘よ。異世界から来た魔女が神器なんか簡単に手に入れられるはずがないわ。」
「ニーニャ、今、神器何個ぐらいある?」
「斧だろ、剣だろ、未鑑定の指輪があるぞ。」
「ステラも前の領主からだよね。」
「そうですわ。ヒカリさんに魔術勝負で負けましたの。尊敬してるわ。」
「嘘よ!ステラはエルフ族の族長でしょ!人族の魔術師ごときが足元にも及ぶはずがないわ。」
「う~ん。勝負したとき、ステラは魔術ランク3だったからねぇ・・・。」
「そうでしたわ。何もできなかった頃が懐かしいですわ。」
「ほう!ヒカリ殿は魔術ランク3ですか?」
「6くらいかな?」
「ま、まさか。ウンディーネかシルフの力で解放されたのですか?」
「ワシはなにもしておらんのじゃ。」
「僕も何もしてないよ。」
「っていうか、ここの人たちはみんな魔術ランク6あるから<念話>使えるよね。」
「「「「ハイ」」」」
<<嘘よ!嘘よ!人間が<念話>なんか使えないわ!貴方が異世界の魔女だからよ!>>
<<ライト殿、ちゃんと聞こえております。今後ともよろしくお願いします。>>
<<ライトさん、俺も聞こえてるよ。安心して。>>
<<ライトさん、私も聞こえてます。何かあったら念話でも通話できますわ。>>
<<ライトさん、私は念話があまり好きじゃなんだぞ。でも必要ならいいぞ。>>
「ライトさん、どう?」
「お父様!ここは何かおかしいわ。普通の人間が住むところじゃないの。」
「ヒカリ殿とその仲間の方達が凄いのだろう。先ほどからの話を伺うと、ナイトメアですら解呪できない一方行の封印を解いてくれたのだ。ライトが救出されたのは奇跡だな。」
「お父様、私はどうしたらいいの?」
「先ず、皆に謝れ。そして、感謝の意を示せ。」
「・・・。」
「どうした!」
「ご、ごめんなさい・・・。」
「つぎ!」
「助けてくれてありがとう・・・。」
「世間知らずの娘で皆様にご迷惑をおかけして申し訳ない。また、過去や出身の秘め事を仲間内とはいえ暴露するに至り、詫びて済む話では無い事は重々承知しておりますが、そこをなんとか、今一度ご容赦頂けないでしょうか。」
「そうだねぇ・・・。私たちの仲間は仲間を大事に思うし、ここの食堂で話されるような内容は一切口外しないってことが守られてるんだよ。だから、今日のことも、この食堂の外には持ち出されない。当然、闇の妖精や光の妖精は救出されてないし、4人の妖精がこの領地で暮らしていることは誰も知らない。お手伝いで働いている一部の人を除いてね。他の人に漏れたら暗殺部隊が仕向けられるかもしれないし、国家間の戦争にもなるだろうね。
わかるかな?」
「闇の妖精の長<クロ>の名にかけて、秘密を守ることを誓います」
「光の妖精の長<ライト>の名にかけて、秘密を守ることを誓います」
「ありがとう。みんな、これでいいかな?」
「「「「「「ハイ」」」」」」
「じゃ、ごちそうさま。おやすみなさい。」
「ヒカリ殿!」
「暇なら領地内を好きに散歩してて。レイさんの所でもいいよ。先ず寝る。」
「はい。」
うん。考えずに寝よう。
ユッカちゃんがちょっと心配だけど大丈夫かな・・・?
おやすみなさい。
いつも読んでいただいている皆様には感謝しています。
今後とも頑張って続けたいとおもいます。




