2-59.決戦
相手との駆け引きは終わってるから、
あとは前夜祭を楽しんだり、婚約発表の準備だね。
ただ、待つだけってのも、返って緊張するね。
「ただいま~。みんなお疲れ様。こっちの作戦に乗ってくれることになったね。国庫封ししてきて分かったことが2つあるんだ。」
「姉さん、それは大きなこと?」
「今日の王室で、お妃様の質問に答えた通りになりそう。ベニス卿が借金を背負って破綻すれば、ロメリア王国もその借金を負う形になる。ロメリア王国から、本当の意味での独立が勝ち取れるチャンスかも。」
「姉さん、大きな発見だけど、ベニス卿の借金をロメリアが肩代わりする必要は無いよ。切り捨てればいいだけだ。もし、自国の令嬢を支援するために金貨を積み上げることであれば、ロメリア王国の通貨を使うだろうし、あくまで自分の責任の範囲だ。」
「うん、それがね?ベニス卿は奴隷印をつけられてるらしいんだ。」
「ま、まさか?」
「うん。誰も自国の大臣が他国から奴隷印を押されてるとは思わないし、勝負に夢中でその心配事の整理を他人に読まれてるとは思わない。」
「サクリファイの件は?」
「今日、魔石の鑑定をしていた人がサクリファイ当人でいいみたい。ただ、ロメリア王国に所属の魔術師らしいけどね。」
「あれって、弟子の一人じゃないの?」
「本人でいいみたい。いけそう?」
「姉さんは俺が守るよ。他の誰もが姉さんを守る。安心していいよ。」
「みんな、ありがとね。」
「ヒカリさん、では、私も金貨を集める準備にかかりたいと思いますので、席を外しても宜しいでしょうか?」
「うん?私は何かお願いしたっけ?」
「かき集めれば金貨5000枚ぐらいにはなるかと思うので、勝負の足しにと。」
「え?ここにある魔石と追加で生成する分で勝負するよ。全部並べれば勝てると思うんだけど。
それに、提示した物は全部国庫に入っちゃうから、私がベッセルさんに借金を返せなくなる。」
「魔石は、金貨が足りなくなってから出すのでは?」
「もったいないじゃん。」
「でも、設定では<一族の秘宝>になっておるのですが。」
「今回の支援のために、倉庫整理したら、いろいろ出てきちゃったってことで。」
「そんなこといいだしますか。」
「うん。」
「私にはヒカリさんをお手伝いできることが無いので?」
「あ。魔石を入れる袋、6人が乗れる馬車と荷馬車、今日からの食事をお願いします。」
「分かりました。すぐに準備を始めさせます。湯浴みは如何いたしましょうか?」
「私たちは大丈夫かな。ご飯だけお願いします。」
「分かりました。」
ーーーー
今日が前夜祭。明日が本番。
もう、準備終わって、待つだけなんだよね。
緊張を解すためにも皆で前夜祭のパーティーに出席して楽しもう。
「おねえちゃん、前夜祭だよ!晩餐会だよ!貴族のパーティーだよ!」
「うん。なんだかドキドキだね。パーティードレスが動きにくいのが気になるけどね。」
「おねえちゃん、綺麗だよ。貴族みたいにみえるよ。」
「ありがとう。ユッカちゃんとシルフも二人の天使みたいで可愛いよ。」
「おねえちゃん、あれは何?食べてもいいの?」
「立食パーティー形式だから好きなのとって貰ってね。前夜祭だから好きなだけ居て、顔見せだけ終わったら帰っていいんだと思うよ。」
「最後まで居てもいいの?」
「眠くならなければいいと思う。」
「ふ~ん・・。シルフ行こう!」
なんか、二人の衣装のザインが本当に素敵にできてる。天使の羽とか、ああいう衣装が似合う年齢ってのもあるんだろうけどね。
さて、私もクロークに毛皮を預けて・・・。って、あれ?なんか注目されてる?まだ、入り口なんだけど。昨日の事件だって、王国の大臣しかしらないはずだし、まだ婚約者になったわけでもないし。何か田舎娘丸出しの変なことしちゃってるかな?
「お嬢様、失礼します。こちらの毛皮でございますが、どちらで手に入れたのか知りたいと仰るご婦人が多数いらっしゃるのですが・・・。そして、大変失礼ながら、こちらのハンガーに掛けて見学できるようにしても構いませんか?」
「ステラ、どうしよう?私より毛皮が大人気だよ。」
「ヒカリさんに差し上げた物ですわ。好きにして頂いて結構です。帰りに無いと多少冷えるかもしれませんが。」
「売ることは出来ないし、入手元も今日は言えない。だけど、着て帰るまでは展示していいよ。」
「譲歩いただきありがとうございます。また内密の件かしこまりました。」
なんか、パーティー会場に入ると、ユッカちゃんとシルフが台に乗せられてるの。あ、背が低くて、料理が見えないのか。なんか、周りから晒し者レベルの注目を浴びてる。あそこに近づくと、余計な注目を浴びそうで・・・。迂回して、ちょこちょこっとご飯を食べて帰ろうかな・・・。
「あの、失礼ですが、ステラ・アルシウス様でいらっしゃいませんか?」
ざわざわざわ・・・。
「あ、はい。そうですが、何か?」
「御高名は伺っております。最年少でエルフ族の族長になられた天才魔術師ですよね。ぜひお話を伺いたいのですが・・・。」
「ステラ、私のせいじゃないから、自分でなんとかして。」
「ヒカリさんとご飯を一緒したいのですが・・・。」
「この人だかりでは、私がご飯をえらべない。がんばって。」
ふぅ~~。
ステラ凄いんだねぇ~。
その名声は過去のステラのおかげなんだから、堂々とお披露目してね。
今のステラは皆の知ってるステラよりも、もっと化け物になっちゃってるけどね。
でもって、私は自分のご飯を食べてていいよね。
「おや、そこに居るのはベッセル様では?パーティー嫌いの貴方が来られるとは珍しい。是非、こちらの輪にお入りください」
「え。あ。ヒカリさん、失礼してよろしいでしょうか。」
「うん。楽しんできて~。」
「フウマ、二人だけだ。人気無いね。」
「ご飯がゆっくり食べられていいだろ?」
「そだね。何が美味しい?」
「姉さんがそういうこと言うか?」
「だって、貴族のパーティーって、豪華で美味しい物が並ぶっていうイメージが。」
「姉さん、そのイメージは正しいよ。ただ、姉さんと関所で一緒に食事をしていると、見た目より素材が大事だって分かるんだ。調理方法も重要だね。」
「どういうこと?」
「食べれば判るよ」
しまった。冷蔵庫が無い世界なんだよね。
肉はカチカチになるまで火を通すか干物。魚も干物。カルパッチョなんてある訳がない。ローストビーフなんてある訳が無い。ソーセージとかミートローフみたいのはあるんだけど、血生臭い。狩りの仕方なのか内臓の処理なのか判らないけどとても臭いの。野趣豊かではなくて、内臓そのものが傷んで来てるような臭い。これは辛い・・・。
「フウマ、帰りたい。」
「どこへ」
「関所かな?」
「だからいっただろ?」
「うん。」
「カチカチのパンとかジュースを飲んで我慢するしかないよ。調理場に乗り込む格好じゃないし、毒見役を通せないしね。」
「明日もこうなの?」
「明日、勝負に負ければ帰れるよ」
「勝負に勝ったら?」
「注目の的で、ご飯は食べられない」
「どっちも嫌」
「王子に頼めば?<美味しい物だせ>って。」
「私が王子にそんなこと言える訳ないじゃん!」
「おれがどうしたって?」
「え。なんでここへ?」
「なんか、人だかりが分散して出来てて、空いてるところを探したらヒカリが居た。人気無いね?」
「王子も人気ないじゃん。」
「姉さんは誰に対しても負けず嫌いなんだね?」
「ち、ちがうし。」
「明日は勝ってくれないと、みんなで夜逃げだ。」
「大丈夫。貴方の想像を超えて見せるよ。」
「楽しみだね。料理はどう?」
「フウマ、どうなの?」
「関所に帰りたいと申しております」
「明日の夜まで我慢してもらえないかな。流石に素材からして準備ができない。」
「山に入って、取ってくる。」
「フウマ、こういうとき、どうしてるんだ?」
「森に入って、取ってくる。」
「山も森もこの時間は無理だろ。」
「あ、ユッカちゃんのカバンに肉とパンが入ってる」
「どれどれ、貰ってこよう。どこにいる?」
「あそこの人だかりだけど、私が入りたくない。我慢する」
「我がお姫様、我慢頂きありがとうございます。もう少々の辛抱です。」
「うん。明日勝つからね。楽しみにしててね。」
ーーーー
勝負の当日。
王族と御三家:国王、王妃、王子、ガウス卿、バイロン卿
ベニス卿側6名:婚約者候補の令嬢、ベニス卿、魔術師、ロメリア財務大臣、付き人2人
ヒカリ側6名:ヒカリ、ベッセル、フウマ、ステラ、ユッカ、シルフ
あとは、国王の執事や宮廷魔術師が何人かいるだけ。それでも結構な人数になったね。
他の派閥の参加者は無しと。
「では、これから勝負を始める。
勝負を開始する前に、ここに居る全員に箝口令をしく。国庫は国有財産である故、この機密情報を漏らす訳には行かない。万が一にも漏洩が発覚した場合には、即刻打ち首とし、一族全ても同罪とする。よろしいか。
次に、勝負の方法は2日前に取り決めたとおりに行う。質問などあれば今確認するように。」
「ベニス陣営は問題ありません。」
「ハミルトン陣営も問題ありません。よろしくお願いします。」
「では、時間短縮のためだ。金貨2万枚相当を寄付して頂こう」
「「ハイ」」
向こうは金貨500枚入りを40袋を積みあげる。
こっちは、金貨3000枚相当の魔石を7個並べる。
「この大きさは宮廷魔術師で金貨3000枚と評価されている。ヒカリ陣営が金貨2万1千枚だ。勝負を続けても宜しいか?」
「「ハイ」」
「つぎ、もう2万枚寄付頂けるか?」
「「ハイ」」
流石に、80袋ともなると、付き人が疲れてきてるね。だって、重いもん。
ベニス卿は平然としている。サクリファイの動揺が漂ってるね。
まだまだ余裕っと。今度は風の属性石を追加で7個並べる。
「ベニス卿4万枚、ヒカリ4.2万枚。双方続けるか?」
「「ハイ」」
「次、合計10万枚いけるか?」
「「ハイ」」
と、こちらが魔石を34個並べ終わったところで、
ベニス卿がロメリアの財務大臣に何か話をしているのが判る。
「ちょっと宜しいか。この度、婚約者候補の令嬢を連れてきたロメリア王国の財務大臣を務めるスニフと申す。ベニス卿の婚約者候補は私の家族である故、私も支援に周れる立場であると考えているが、よろしいか?」
「ヒカリ殿、ベニス卿陣営の申し出を受けても良いか?」
「あの、ちょっと考えさせてください。」
こっちで作戦会議をする。全然余裕なんだよね。いざとなれば、シルフにどんどこ出してもらえばいいから。でも、安易に受けると向こうも罠を警戒をしてくるはずで、駆け引きとして、ここが重要な局面であるかのような雰囲気を醸し出す。
「あの、ロメリア王国からの方とお伺いしますが、まず、ルールは事前にご確認頂いているということでよろしいでしょうか?2日前に決まったルールですが。」
「ああ。ベニス卿から今日の話は聞いている。」
「今日、エスティア王国の国庫への寄付になりますが、どういった資産での計上をされるのでしょうか。」
「基本はエスティア王国で流通している金貨を持参した。足りなければロメリア王国内の通貨も考えているが、そちらはさほど量は無い。」
「国王の裁量で問題がなく、2日前のルールに従って頂けるのであれば私どもの陣営は問題なしと判断しました。」
「他、何か意見のある者はおるか?」
「私もちょっとよろしいかしら?」
「王妃なんだ?」
「この勝負の提示額は国庫への寄付になるので、ベニス卿とロメリア王国財務大臣では、別々の寄付として計上頂いた方が今後の2国間の友好関係に良い影響を与えると考えますの。当然勝負としては、それぞれの陣営の合計額で構わないわ。」
「ふむ。ベニス卿、スニフ殿、如何かな?」
「私どもはそれで構いません。」
「分かった、では続ける。」
「追加で5万枚を計上してもらおう。」
13万枚でベニス卿の準備した金貨が頭打ちした。
当初は数万枚の予想だったけど、一人で13万枚持ってきたか。
これって、単純に蓄財しただけでなく、<贋金>で金含有量を水増しできてるせいもあるんだろうね。それ、全部エスティア王国の元に回収してあげるからね!
追加の2万枚はロメリア代表が寄付を積み上げた。
こっちは、ゴロゴロと袋から17個の魔石を取り出す。段々と革袋が萎んできたね。相手にもそれをわざとみせてるんだけどさ。
「追加で5万枚、合計20万枚になるが、よろしいか?」
「「ハイ」」
魔石68個、コロコロと魔石が数個残ってて、袋がペタペタ。
相手も脂汗が滲み始めた。
「どうだ、次は2万枚でいいか?」
「はい。多分。」
「確認をさせて欲しい。」
こちらは大きな魔石を6個追加。これで合計74個。22万2千枚相当だ。
場に見えてる魔石は無くなった。
相手も大きな金貨の袋の500枚単位は無くなった。
そして、ロメリア王国の金貨袋らしきものが登場しはじめた。
「22万枚まではエスティア王国の通貨で積ませていただきます。残りはロメリア王国の通貨での寄付とさせてください」
「うむ。ヒカリ陣営は22万2千枚ある。2千枚を積み上げられるか?」
「はい。まず、3千枚ほど。」
「ヒカリ、1千枚上乗せだ。できるか?」
「はい。小さなサイズになりますが、金貨20枚相当と聞いております。こちらを50個寄付いたします。」
と、これまでの革袋とは別の革袋から中玉をゴロゴロと転がす。本当にあとちょっと感が出てきたね。
「よし、ここから刻もう。ロメリア代表次は何枚だ?」
「2000枚いけます。」
「では、私は中型を100個」
がさがさと集計が終わる。
「次、ヒカリ陣営、何枚いけるか?」
「1000枚分、50個ほど。」
「こ、こちらも可能です。」
これで、ロメリア金貨が6千枚。多分細工なしの金貨だからほぼ全力で準備してきたんだろうね。こっちも2つ目の革袋がなくなって、残りの中型がころころ残るだけだ。
「つぎ、1000枚か?500枚で刻むか?」
「できれば、500枚でお願いします。」
「あ、はい・・・。」
向こうは、最後の一袋らしい。ドンと机に置いた。
こっちは魔石が数個しかないからね。
最後の止めを刺しに来たつもりなんだろう。
「あの、すみません・・・。大変申し上げにくいのですが・・・。」
「なんだ?負けを認めるのか?」
「いえ、あの、・・・。この大型の魔石でも良いでしょうか?残ってた様で・・。」
「うむ。大型の魔石の数を確認しろ。それがヒカリ陣営の物であればよいぞ。」
慌てて宮廷魔術師と補助員達での魔石の数の確認がおわる。そして、残りの1個が私の新たなものが残っていたと確認が取れた。
「ヒカリ陣営は金貨3000枚の上乗せだ。ベニス卿どうだろう?」
「あ、あのちょっとお待ちください。」
なんか、いろいろ話を始めてる。
さて、どういった手にでてくるか?な
「魔石の数は良いと思われます。念のため、本当に魔石であるのか、再度ご確認願えないでしょうか」
「控えている宮廷魔術師たち、全てが中まで本物の魔石であるか、今すぐ確認をしろ。確認が取れたものから再集計しろ。」
「それで、足りない2500枚はどうするつもりだ?」
「そ、その・・。申し上げにくいのですが・・・。」
「なんだ?」
「この騎士が所持する<神器>をどなたかにお買い上げいただけないでしょうか?今、クロークに預けております。金貨3000枚で。<神器>故に、金貨での取引は通常できませんが・・。」
「その<神器>が本物であるならば、私が買いとりましょう。ヒカリ陣営にとって、問題がある行為かしら?」
「いいえ。私どもの陣営としては、<勝負の外で行われている商売>との認識です。<御三家>の皆さまの判断に従います。」
「そう<勝負のルールの範囲外>なのね。では、ヒカリ陣営の魔石の再鑑定と、その<神器>の鑑定も行ってくださいね。私は金貨3000枚を用意してきます。」
魔石も神器も確認が終わり、偽物でないことが確認されたので、王女は新型金貨3000枚をベニス卿に支払った。
「(貴方に期待してるわ。売れるものがあれば、どんどん買い取るわよ)」
「(御意に)」
「これで、ベニス卿陣営が金貨500枚のリードだ。ヒカリ殿、何か売るものや計上できるものはあるのか?」
「ひょっとすると、この子のカバンの中に・・・。」
「あ、僕が取り出すよ」
と、シルフが大型の風属性石を2個も取り出す。
「では、この属性石2個を計上させていただきます。」
「うむ。直ぐに追加鑑定をさせる。ヒカリ陣営が5500枚のリードだ。どうする?」
「あ、あの!メルマの貿易共同組合の運営権利書を金貨1万枚で購入頂けないでしょうか?」
「スニフ殿、それはメルマの自治権を譲渡頂けるという意味かしら?」
「その通りでございます。」
「ベニス卿、貴方、メルマの利権を持っていたはずだけど、それはどうなるのかしら?」
「がっ。くっ。は、はい。そちらの権利書は単なる税金の徴収のみならず、実質的な支配権と同等の価値があるモノになります。」
「ベニス卿とスニフ殿、ここに提示頂いている権利書は個人で購入しても良いのか?この権利書が個人所有になり、自治権も個人預りとなるが。」
「「ハイ」」
「ふむ。ヒカリ陣営、この取引も<ルール外での個人的な取引>と見なせる行為だろうか?」
「はい。構いません。」
「今回も私が金貨1万枚を私が用意するわ。」
「ヒカリ殿、これで運営権利書の譲渡が完了すると、ベニス卿が金貨4500枚のリードだ。どうする?」
「それでは、私がヒカリさん代わりに魔石を提供しますわ。」
と、今度はステラが大型の魔石3個を荷物の中からとりだす。
「ふむ。エルフの方からの寄付を確認しました。これでヒカリ陣営が4500枚のリードになりましたな。ベニス卿陣営はどうする?」
「私の領地や屋敷を売りたいのですが。」
「いま、この場で権利の譲渡ができないのであれば、金貨は支払えないであろう?それに財務大臣として与えられた土地や権利は個人の私有財産とは認められないだろう。」
「エスティア国王。ロメリア王国に伝わる神器になりますが、こちらの<指輪>と<ペンダント>のセットをどなたかに購入頂けないでしょうか?できれば2点で金貨6000枚で。」
「初めまして、挨拶が遅れましたがバイロン卿と申します。私が金貨5000枚で良ければ買いましょう。何分持ち合わせが無いものでして。ただし、ヒカリ陣営として、これを<勝負のルールの範囲外の取引>と認めてくれればですが。」
「問題ありません。」
「スニフ殿、鑑定後に神器と確定できたなら金貨5000枚で引き取ろうと思うが、如何かな?」
「は、はい。お願いします。」
「割り込んでごめんなさい。それも私が金貨6000枚で買うわ。いいでしょ?」
「バイロン卿、すみませんが、お妃様にお譲りすることをお許しください。」
「ああ。構わない。」
「よし、取引が終わったので寄付額を一度集計をするぞ。
ベニス卿陣営:24.55万枚
ベニス卿:金貨13万枚+神器売却3000枚=13.3万枚
ロメリア大臣:金貨9万枚+ロメリア6500枚、権利書売却1万枚、神器売却6000枚
合計金貨10.6万枚+ロメリア金貨6500枚
ヒカリ陣営:24.4万枚
魔石大型:80個で24万枚(エルフ族より3個)
魔石中型:200個で4000枚
ヒカリ陣営が金貨1500枚の負けだが宜しいか?」
「では、ヒカリ殿の代わりに、珍しくも無くなりましたが一族に伝わる秘宝2個を寄付させて頂きます。」
「ヒカリ殿は良い仲間をお持ちだのう。追加で金貨6000枚相当か。ベニス陣営が4500枚の負けとなるが?」
<<<ピーピーピー>>>
<<サクリファイが動きます。危険です>>
<<ユッカちゃん、フウマ、あの魔術師を止めて。何かする!>>
<<ステラ、シルフ、闇魔術への防御行動。魔術の防御壁、換気用の風の対流など>>
「ま、負けを認めます。」
と、ベニス卿が負けを認めようとした瞬間にサクリファイがベニス卿の殺害に動いた。
そこをフウマとユッカちゃんが物理阻止に入り、並行して会場全体はシルフの浄化対流とステラの対魔法防御の膜が施された。
会場は一時騒然となったが、レナードさんや周りの宮廷魔術師らによって、ベニス卿陣営が個別に完全に拘束された。あらゆる意味で勝負が決着したことが浸透していった瞬間だね。
よし、ここで追撃だ!
「エスティア国王!その金貨を国庫に入れる前に、今一度ご確認頂きたいことがございます!」
「ヒカリ殿、勝負はそちらの勝利だ。なにかあるのか?」
「私どもの魔石のみの真贋鑑定を受けるのは不公平です。念のため彼らが持参した金貨の真贋をご確認頂けないでしょうか?」
「そなたのその発言は王族も<贋金>を使用しているとの疑義を申しておることになるのだが?」
「<ルールの範囲外の取引>について私は言及しているつもりはございません。あくまでそこに<寄付された金貨の真贋>についてです。」
「レナード、そこに寄付された金貨を2-3枚切ってみろ」
「お安い御用で。」
って、この人、金貨を裏表の真っ二つに切ったよ。意味が分からない。
で、表が金貨、裏が灰色の鉛板が2枚ずつ現れる。
「ベニス卿、スニフ殿。これはどういうことかな?エスティア国内の通貨が<贋金>にすり替わっているようなのだが。また、今回の勝負で、<偽物は提示額の10倍のペナルティー>であったな?支払いは可能か?」
「チャールズ国王、臣下の責任はその管理者たる国王が取るべき事柄です。ベニス卿の罪はエスティア王国の国王の管理責任となります。ロメリア王国の財務大臣殿におかれましては、外交ルートを通じて、本国へ賠償金の請求手続きが必要となります。」
「ガウス法務大臣、痛いところを突くな。ワシが部下をちゃんと見ておらなかったとな。まぁ、今回の件はワシの目を覚ましてくれる良いきっかけだったと思う。責任を取ってでもベニス卿の借金を返済しなければなるまいな。」
「エスティア国王!その法律は正当な大臣が職務に就いていた場合です。もし、他国の奴隷印が押されている場合には、その責任は奴隷印の所有者の責任になることが国際法による取り決めとなります。」
「ガハハハ。ヒカリ殿、法律も良く勉強されているようだな。私を庇ってくれるのか。他国の奴隷を私が大臣に就かせている訳がなかろう。私の管理不足は私が負う。想像を超えるような吟遊詩人のサーガはこの勝負の決着までで十分だ。」
「こちらのベニス卿ですが、奴隷印がございます。所有者はロメリア国王の登録となっております。」
「そこな宮廷魔術師、それはまことか!」
「ここで虚偽を申し上げても仕方ありません!」
もう、この後は大混乱。
そりゃそうだよね。
自国の通貨の贋金事件が、他国の奴隷を財務大臣にしてたからってのはさ。
まぁ、任命後でも管理責任はでてくるけど、国際法が優先されるだろうしね。
さぁ、おわった~~~!
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