第六話 ストライク・パッケージ
なんだかますます御大の「パシフィックストーム」に近づいてきてしまいました。
…というかこの戦記、佐藤御大や横山先生の影響を受け過ぎてます。どーしよ。
でも三木原先生の「太平洋の覇者」もはっきり言ってパシストの(ry
1951年 12月8日 小笠原諸島近海
「ランチ・エアクラフト」
空母「ゲティスバーグ」の艦首カタパルトを蹴ってグラマンF9F-4「パンサー」が発艦を開始した。既にF8F「ベアキャット」、ダグラスAD1「スカイレーダー」が上空を旋回しつつ隊形を編成しつつある。
アーレイ・バークはそれを艦橋から見上げながらうむ、と頷いた。サイは投げられた。我々はルビコンを渡ったのだ。はたして我々はカエサルとなれるのだろうか、それともポンペイウスとなるのだろうか。
(大丈夫だ)
彼は強引に自分に言い聞かせた。まだ東京は寝静まっている。夜明けとともに横須賀の空はメイドインアメリカの大編隊に覆われる。その包囲網から彼らの艦艇が抜けだすことはできぬ。
「サー、攻撃隊、空中集合完了。進撃を開始します」
デビッド・マッキャンベル参謀長の声に彼は我に返った。
「よし。攻撃隊全機に打電。『合衆国の興廃、この一戦にあり。各員奮励努力せよ』、以上だ」
バークは忘れていた。カエサルは確かにポンペイウスを破った。だが、彼の命を奪ったのは全く予想だにしない敵であった。
約一時間後 横須賀上空
「菅野一番より全機。狩りの時間だ。全機喰らい尽くせ!」
菅野直少佐は三菱A9M「征風」を降下させながら無線機にどなった。ドイツのハインケル・ヒルトエンジンをライセンスしたネー450ジェットエンジンは快調に機体を推進せしめている。
「馬鹿野郎め、のこのこ日本の空に入ってきやがって。一匹たりとも逃がしはしないぞ」
そうはいっても彼が率いている征風は30機程度、とても全機落とすわけにはいかない。それでも彼の率いる戦闘301飛行隊は妨害を図るF9Fとの格闘戦に突入していった。
菅野隊が敵戦闘機をひきつけている間にスカイレーダーを蹴散らしにかかったのは若松幸禧中佐率いる陸軍飛行85戦隊だった。彼の部隊はいまだジェットから転換しておらず、陸軍究極のレシプロ重戦「疾風改」に乗っている。
「海軍さんは相変わらず格闘戦好きだな」
若松はふっと笑ったが、すぐに表情を引き締めた。陸軍航空隊には陸軍航空隊ならではの戦い方がある。彼は続く35機の部下に指示した。
「全機一撃離脱に徹する。逃げる奴は追うなとの指示だ」
「いいんですか隊長、それじゃあ海軍のフネがやられちまいますぜ」
「いいんだよ、それで。全機突撃!」
3100馬力を誇る「撃」発動機が唸りをあげ、疾風改の編隊はスカイレーダーに次々と突っ込んでいった。
「上からかぶられた!くそ、助けてくれ!」
「なんだあの赤いフランクは。他のフランクの三倍の機動力だ」
「情報部は何をしていたのだ。万全の迎撃じゃないか!」
バタバタと落されるスカイレーダー。それでも300機を超える大編隊だ、いくらかうち減らされたがそれでも十分すぎる戦力である。
「全機アタックポジション。雷撃進路につけ」
攻撃隊長がそう告げ、眼下の軍港を見下ろした、そこには。
「なにもいないじゃないか!」
彼はその後しばらくありとあらゆるものを口汚くののしったのだが、そのすべてを記すことは不可能である。そして攻撃隊長はある可能性に行き当たった。
「いかん、母艦が危ない。奴らは、奴らは…畜生!」
空母「ゲティスバーグ」。
「攻撃隊がもどってきたのか?レーダ反応がある」
輪形陣外縁部に配備されていた駆逐艦からの報告を受け取ったバークは眉をピクリと動かした。
「そんな馬鹿な。早すぎるぞ」
「敵味方不明編隊、さらに近づく」
バークの脳内の何かが警鐘を鳴らしていた。違う。違うぞ、これは。
「全艦対空戦闘配置」
「アイ・サー。総員対空戦闘配置につけ!CAP全力発艦急げ」
だが、この時アメリカ海軍はらしくない失敗をしていた。空母三十隻を投入したこの第71任務部隊は通常、いくつかの任務群に分けておくべきである。しかし今回は戦力の集中投入のために「ゲティスバーグ」が全空母の指揮を行っていた。一応通信能力の強化も行われていたが、さすがにこれには無茶があった。30隻の空母、さらに巡洋戦隊、駆逐戦隊の旗艦、司令駆逐艦から次々と情報が送られてきてパンク寸前になっていた。攻撃一点張りの編成が、防御にはきわめて弱いことを露呈した瞬間だった。
「アラート。全周囲から所属不明機接近。数は300、400、まだまだ増えますっ!」
「一部のF9F、燃料不足によりCAP任務に限界が出ています」
「低空より近づく大型爆撃機編隊を確認。プルートです。ナカジマの六発重爆です」
「ジーザス…」
バークは茫然として指揮官席に座りこんだ。我々は、罠にかかったのか?あの南洋要塞は一体なんだったのだ?
第721航空隊指揮官機
「野郎ども、行くぞ、討ち入りだ!」
「合点承知!」
721航空隊司令の野中五郎大佐は舌なめずりをした。本来なら彼は飛行隊長に指揮を任せ、基地にいるべきなのだが、今回は司令自らの出陣であった。さすがに自ら操縦桿は握っていなかったが。
「大したもんだぜ、この『富嶽』は。1060㎏の四式魚雷を20本も懸吊できるんだからよ」
富嶽の化け物じみた搭載能力だけではない。その低空での運動性が良好であることも、この6発の巨人機が低空雷撃をすることを可能にした。
「司令、派手に行きます。つかまっててください」
操縦桿を握る男、飛行隊長・帆足正音少佐が大声を張り上げた。富嶽のハー54エンジンはとてつもなくうるさく、スロットル全開にした場合叫ばないと何を言っているのか聞こえないのだ。
「てめえにすべて任せた。あの空母のキタネエ尻に叩きこんでやれ!」
小笠原西方海上、第一機動艦隊旗艦「葛城」
司令長官の柳本柳作中将は時計をちらっと見た。甲板にはすでに川西A8K3「陣風」、愛知D4Y5「彗星改」、愛知B7A3「流星改」等がすでに魚雷や爆弾を装備して待機している。
時計の針が午前十時を指した。頃はよし。柳本は臍下丹田に力をこめ叫んだ。
「攻撃隊、発艦出撃はじめ」
罠は閉じた。太平洋を地に染める今戦争発の海戦が始まろうとしていた。
若松隊長の機体が一部赤く塗ってあったのは史実です。
オリジナリティを出そうとしたら、やっぱりフルボッコに…。
今後どこかで苦戦しないといけないな。




