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第五話 開戦準備

更新がだいぶ遅れてしまいました。 

 海上護衛総司令部。海上護衛総隊参謀長、大井篤少将は差し込む夕日に照らされた太平洋地図を見ていた。彼らの守護すべき日本商船隊の航路が赤で書きこまれている。今や6個の護衛艦隊、そして8個航空隊を有する海上護衛総隊だが、航路の目の前にはフィリピンがあった。合衆国陸海軍が日本輸送船団を壊滅せんとすれば同地から潜水艦ないし爆撃隊を発進せしめるのは間違いない。

 「できるならば開戦後すぐにフィリピンを攻略してもらいたいが」


 しかしそうなっては侵略戦争と非難されるかもしれないのである。大井はううむ、とうなった。どちらを取るべきか。どちらに転んでもリスクが発生するではないか。

 

 国会では徴兵制復活が決議されていた。また陸海軍の予算はさらに増額され、陸軍の総兵力は歩兵43個師団+αで100万人を目指すこととなった。中東からの油槽船団はシンガポールまでは英国の船団に同行、英海軍の護衛を受け、シンガポールから同地で待機していた海上護衛総隊の護衛艦隊に伴われて本土へと向かう。

 陸軍の主力を為す定数を満たしていた近衛師団および第一~第九師団は師団戦車隊をはじめとする支援部隊を増強され戦時編成に改編、海軍にも出師準備が発令されていた。


 そんな中、大本営の陸海軍合同会議では開戦時の米軍主攻方面はどこであるか、そしてどのように対処すべきかについて協議が行われていた。

 「フィリピンです。フィリピンば叩くべきでごわす」

 軍令部第一部長の神重徳少将は力説した。シンガポールより本土へ向かう油槽船団を襲撃する拠点となるのは間違いなく比島です。そいを真っ先に潰すべきでありもす。

 神の主張にも一理あった。大井の懸念と全く同じ理由である。

 「フィリピンには少なくとも10万の在比米軍がいる。それを叩くには攻守三倍の原則を適用して30万、少なくとも三個軍を投入せにゃならんぞ。それだけの戦力を一挙に海上輸送するのはとてもじゃないが無理だ」

 陸軍参謀次長の片倉衷中将がダメだダメだと言わんばかりに手をひらひらさせる。陸海軍の輸送船、並びに徴用船舶を投入したとしても30万の大軍を短期間に海上輸送するほどの力はなかった。

 「海軍の戦艦を出してもらったらどうだ、戦艦一隻の破壊力は4個ないし5個師団に匹敵するはずだから、米軍を湧出撃滅すれば」

 「それを考えないほど向こうも馬鹿じゃない。きっと内陸部に逃げ込まれてゲリラ戦になる!」

 参謀たちは次々と持論を展開し、それにケンカを吹っ掛ける参謀が現れ、会議は泥沼化し始めていた。その時、連合艦隊の主席参謀として参加していた男が口を開いた。


 「先手は敵に取らせましょう」

 片倉はほう、と息を漏らした。攻勢防御案ばかりが出ている中で守勢防御案を出す奴がいるとはね。

 「君は」

 「GFの三島です。自分は守勢防御案、すなわち敵の開戦第一撃を粉砕して攻撃を鈍化させ、しかる後に比島攻略を行うべきと愚考いたします」

 連合艦隊参謀長の兄部勇二中将も黙ったまま頷いた。どうやら彼も三島案に同意しているらしい。 

 「かねてより研究されておりました米国対日戦プラン、通称オレンジ計画ですが、我々はそれに対抗して南洋群島並びにマリアナ諸島の全面要塞化を行っております。また、漸減邀撃のために連合艦隊は長年錬成を重ねてきました」

 「それは知っている。結論を急ぎたまえ」

 山下奉文陸軍大臣が先を促した。三島は彼に軽く頭を下げると、「爆弾」を投下した。

 「しかしながら合衆国は国民の民意を重視する傾向にあります。特に戦争に対してです。1,000機になんなんとする作戦機を配備され、難攻不落の要塞と化した南洋群島に新興した場合、攻略はできないこともないでしょうが彼らの犠牲も膨大なものになると予測されております。これはかねてより収集されておりました合衆国海兵隊のシュミレーション結果であります。海兵隊3個師団を持ってマーシャル諸島に侵攻した場合、1個師団全損、2個師団は戦力3割を失って戦闘力激減。防御側のわが軍も壊滅しておりますが、戦争の『過程』にしては損害が大きすぎると彼らは考えたようです」

 「開戦第一撃で海兵3個師団が壊滅したとすれば渡洋侵攻に支障が出てしまうしな」

 伊集院少将がペン先で資料の紙を叩きながらうなづいた。

 「そこまでいうのなら、三島。おはんの作戦案ば聞かしてもらわんと」

 神が物凄い剣幕で三島をにらんでいた。まったくこの御仁、ほんとに困った人だよ。彼はそう思いながらも一気に畳み掛けた。

 「敵さんは我々の継戦意志を挫かんとして呉、ないし横須賀を奇襲するでしょう。彼らは新鋭大型空母『ゲティスバーグ』級を投入すると思われます。しかしながらハワイから日本までは遠い。補給拠点もないまま太平洋を突っ切ってくる敵は孤立状態です。それを捕捉し、撃滅するのです」

 「そいはそうかもしれんが」

 神が食い下がった。戦艦がまだ残っとるじゃないか。合衆国海軍は我々よりも多数の戦艦を保有しているのだぞ、忘れたとは言わせん。

 「問題ありません」

 三島は人の悪い笑みを浮かべた。

 「エアカバーを欠いた米戦艦部隊は、わがGFの海空立体攻撃で押しつぶしてしまえばよろしい」

 一同はあっけにとられていた。面白いプランではある。だが、リスクも大きい。成功した場合、この戦争は「ずっと日本のターン」も不可能ではない…。

 

 数時間後、会議は終了した。退室した三島の顔には相変わらず人の悪い笑みが浮かんだままだった。それを一部の参謀は、苦々しく見ていたのであった。

作戦会議の描写が難しい…。

それにしてもフィリピン攻略の方が戦略的に見て正しいように見えますね…。

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