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殲滅公爵と恐れられた夫が、私の限界オタクだった件  作者: よし はるか


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46-モルゲンレート侯爵邸

 モルゲンレート侯爵邸へ、ダグラーゼ公爵家の馬車で向かう。

 十八年も住んでいた場所なのに、不思議と新鮮な気持ちになった。隣にジーク様がいるからかもしれない。

 モルゲンレート侯爵邸はダグラーゼ王都邸の二倍ほどの敷地面積がある。

 華やかな花々が咲き誇る庭園は、よく見ればエルデンライヒ王国では流通していない品種も多い。父のツテと母の趣味が掛け合わさった結果、王都内でも類を見ない庭園ができあがっていた。

 馬車を降りると、意外な人物が出迎えてくれた。


「やあ、レティ。久しぶりだね」


 私と同じ銀の髪と紫の瞳。人好きのする笑顔と垂れ気味の目は人懐っこい印象を与える。


「まあ、お義兄(にい)様。こちらに出てきていたのですね」


 私は義兄と家族としての抱擁を交わす。後ろからピリと重い空気が流れてきた。

 振り返るとジーク様の眼差しが鋭い。私はすぐに紹介をした。


「ジーク様、こちらは従兄弟で、モルゲンレート侯爵家の養子でもあります。次期当主のフレッド・エーデル・モルゲンレートです。

 お義兄様、私の夫のジークヴァルト・セルシア・ダグラーゼ様ですわ」


「お初にお目にかかります、フレッドです。ダグラーゼ公爵にお会いできて光栄です」


「ジークヴァルトだ。私も妻の家族に会えて嬉しい」


 二人は握手を交わすと、義兄が屋敷に入ることを促した。


「両親も二人の到着を心待ちにしていました。さあ、行きましょう」


 私はジーク様のエスコートを受けて歩き出す。ジーク様が私を見ている。私もジーク様を見上げて微笑んだ。

 屋敷のホールで両親が出迎えてくれた。父の目の下には隈がある。しかし、表情は晴れやかだ。


「お父様、昨日は本当にありがとうございました。お母様、お久しぶりです」


 両親に挨拶をして、内向きの応接室に向かう。全員が席に着き、用意された紅茶を飲むと一心地ついた気がした。


「レティ、昨日は大変だったんだって? 話を聞いて驚いたよ」


「ええ、実は……」


 かいつまんで説明をすると、義兄は苦笑いを浮かべた。


「ああ、アレ(・・)が勘違いしたのもわかるよ。義父上も困っていらしたからね。レティはアレのことはこき下ろしていたのに、仕事は生き生きとこなすから」


 義兄は父の真似なのか、渋面を作る。


「案外楽しんでいるのかもしれない、どう聞けばいいかわからないって」


 父はそれを見て苦笑した。


「そうだな……。特に夜会準備のころなど鬼気迫る様子なのに、やたらと笑顔でな」


「レティの仕事好きはそのころからなのか……」


 あ、ジーク様まで呆れている。しかし、そのとおりなのだから言い訳はできない。


「あ、あと趣味と称して、仕事の資料を読みだすことがあるから気をつけて」


「……手遅れだ」


 ジーク様の返答に、義兄は貴族らしからぬ笑い声を上げた。


「義父上からレティはずいぶんと変わったと聞いたけれど、行動は全然変わらないんだねぇ」


「変わった?」


 私が首を傾げると、義兄は悪戯っ子のように笑う。


「表情が柔らかくなったし、愛しい旦那様を見たら思わず走っちゃうらしいし?」


「ちょ、お父様!!」


 思わず叫ぶと、また義兄が笑った。父は素知らぬ顔で紅茶を飲んでいるし、母は母でなぜか慈愛の微笑みを浮かべている。

 ジーク様を見た。大変麗しい優しい笑顔でこちらを見ていた。一気に頬に熱が集まる。


「いや、本当に安心したよ。ダグラーゼ公爵、義妹をよろしくお願いいたします。少し変わっていますが、優しい子です」


「フレッド、さりげなく私が言うべきことを取るでない。改めて、ジークヴァルト殿に嫁げたことは、娘にとって幸いなことです。どうかよろしくお願いいたします。まあ、仕事狂なところはありますが、なんとか手綱を握っていただきたい」


 義兄と父が頭を下げた。どうしてだろう、感動するべきところなのに、感動できない。

 なぜ二人とも余計なことを言うのか。まるで私が変人みたいではないか。


「フレッド殿、どうかジークヴァルト、と。縁を繋いだのだから親しくしたい」


 ジーク様の言葉に、義兄が顔をほころばせて頷いた。次に、ジーク様が父に向き直る。


「お義父上、私の方こそ、彼女を妻にできたことは至福の喜びです。

 レティシアが無茶をすることがないよう努め、幸せにすると約束します」


 ジーク様の返事に、涙腺が緩む。父も満足そうに頷く。


「レティ、良い御縁を繋げたわね」


 母が嬉しそうに目を細めた。私は素直に頷く。自然に笑顔になった。

 その後は両親と私たち夫婦で結婚式の日取りを調整した。特に問題が出ることもなく決まり、安心する。

 日取りが決まったあとは、義兄がひたすらジーク様に私の昔話、それも失敗談などを話すので妨害するのに苦労した。ジーク様まで私の妨害を邪魔しながら楽しそうに聞いていた。

 なんだかこの二人をセットにしたら駄目な気がする。そう思ってがんばったけど、二人はひょいひょい私の妨害を避けてしまった。

 結局、時間が来るまで私の黒歴史は暴露され続けた。


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