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殲滅公爵と恐れられた夫が、私の限界オタクだった件  作者: よし はるか


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39-最後の引き金sideユリウス

 レティシアへの召喚状は一番安い馬車便を利用した。今は支出を引き締めなければならない。エマーレへの伝書鳩も費用はかかっていたが、距離が短いので大した金額ではなかった。

 しかし、レティシアが今住んでいるというダグラーゼ領は辺境の地。距離が長ければ、それだけ伝書鳩を制御するための魔石も必要になる。


「おのれ、無駄な金を使わせるとは……」


 わざわざ遠いところに嫁いだのも腹立たしい。だいたい辺境へ行くのが早すぎる。婚姻準備など俺とのときは年単位でかけていたのに。

 王都内にいれば、もっと安く済んだし早くレティシアを呼び出すことができた。

 やはり、俺を困らせるためにやっているに違いない。

 仕事もどんどん滞ってきている。できないことはない。

 レティシアが作ったという引き継ぎ書なるものを渡されたこともあるが、明らかに俺がやらなくてもいい内容まで記載してあり、必要な箇所を見つけづらい。これは引き継ぎ書としては認められない。

 考えることが多くなり疲れるだけだった。エマーレに会う時間も捻出できない。

 手紙はやり取りしているが、エマーレからの手紙には王太子妃教育が辛いとばかり書かれている。

 教師からは、エマーレの教育がなかなか進まないと報告書が届いた。俺が十二で習った内容が書かれていた。エマーレが躓く理由が理解できない。


「殿下、ダグラーゼ領より回答書が届いております」


 侍従が瀟洒な装飾がされたトレイに手紙を載せてきた。

 俺は早速封を切り、中身を確認する。

 レティシアめ、召喚状を確認してすぐに王都へ戻ってくると思ったのに。

 苛立ちながら確認した内容は、さらに腹立たしいものだった。


『正式な召喚状の様式ではありません』


 レティシアの字は読みやすいが、可愛げも何もない教本のような字だ。その字で、つらつらと俺の召喚状の不備を挙げ連ね、呼び出しを拒否する文言で締められていた。

 レティシアの名にセルシア・ダグラーゼという苗字が続く。その下に同じ苗字の公爵の名が書き添えられ承認印が押されていた。

 夫の名を出してどうするというのだ。力のない貴族に何ができる。

 だいたい、これはレティシアの問題だというのに公爵の背中に隠れようとするとは……。

 俺はあまりに苛立ち、手紙を握り潰した。そのまま屑箱に投げ捨てる。

 レティシアは駄目だ。国のことを考えぬなど許されない。

 俺がわざわざ仕事が滞っているのはレティシアのせいだと教えてやっているのに。自分の罪も考えず、親切に呼び出してやったのに従いもしない。

 王太子である俺の仕事を滞らせ挽回もしないなど、もはやただの不敬罪では済まない。

 国を混乱に陥れる、国家反逆罪だ。

 そう気づいた俺は、すぐさま父上に謁見を申し入れた。

 罪人を捕らえる許可を得ねば。


「……本気で言っておるのか?」


 父上が玉座に座りながら、腹を押さえていた。腹の調子でも悪いのだろうか。


「本気です。レティシアは国を混乱に陥れている! ダグラーゼ領から引きずり出さねばなりません」


「……聞かなかったことにするから、もう一度よく考えろ」


 そう言うと父上は玉座から立ち上がり、去っていった。

 理由がわからない。

 傍らに控えていた宰相は感情を見せない表情で俺を見ている。お前の娘の問題だぞ。


「この発言は、国王陛下がお聞きにならなかったことにしたとしても、一言一句記録されております。ゆめゆめお忘れなきよう」


 臣下の礼をとり、宰相も去っていった。一人残された俺は、ますます苛立つ。

 すべてがレティシアの策略のような気がしてくる。とんでもない悪女だ。



※



「ダグラーゼ夫人が?」


 通路を歩いていると、アルベルトの声が聞こえてきた。

 俺は侍従と共に物陰に隠れる。


「そうなのです。レティシア様が王都に来られるという連絡があって。私と都合が合えば、我が家にいらしてくれるというのです」


 アルベルトの婚約者であるフェリシア嬢が弾んだ声を上げていた。

 盗み見れば、嬉しそうに頬を染める姿が見える。


「へえ、君は夫人と仲が良かったからね。仕事は調整するから遠慮なく言ってくれ」


「うふふ、アルベルト様、ありがとうございます」


 レティシアが王都に帰ってくる? 俺の命令には従わないのに?

 アルベルトとフェリシア嬢が去っていくのを確認して通路に出る。

 ……いいことを思いついた。

 レティシアが帰ってきたときに捕らえてやろう。そのまま牢獄へ放り込み、そこで仕事をさせるのだ。

 自然に笑みが浮かぶ。

 さあ、レティシア。早く帰ってこい。俺に従わなかったことを後悔させてやろう。


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