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第3話 剣の道の始まり


「君にいいバイトを紹介しよう」


「バイトですか」


この学校では夏休み期間にしかバイトは許されてないはずだが。それも人前に出ることは許されない裏方だけのバイト。皆お小遣い稼ぎが目的で夏休み期間は先生に許可を取りに行く。まだ俺は入学したばかりの一年生だからバイトの経験はないが。


「ああ、冒険者なんてのはどうだと思ってな?」


「冒険者って、あの冒険者ですか?」


冒険者とは一般社会じゃあまり知られてない職業だ。なにせ危険が伴う。迷子の子猫探しや土木作業員などの簡単な軽作業のものもあるが、基本的に冒険者は魔物と命を懸けて戦い、戦利品として魔物の消失のあとに残される魔名を持ち帰り、冒険者ギルドで魔名を現金に換金してもらい生計を立てていく。単純に言えば、強い奴がその業界で生き残り、弱い奴はすぐに退場していく世界だ。


「俺に命を懸けて戦えって言うんですか。何のために?」


俺は確かに貧乏だがお金がどうしても必要と言うわけでもない。無理して冒険者の世界に入る必要性を感じない。


「いや、何のためにと言われてもな。なんというか、君は向いてると思ったんだよ」


「なにを見てそんなことを思ったんですか? 俺は弱いですよ」


「いや、キミ、強いだろ」


……いきなり何だろうか。すごく図星を突かれた気になった。


「わたしは君の剣の腕を知ってる、そのどちらかと言えば人に見せるための剣ではなく、実戦向きの君の剣を」


「俺が剣道してたの知ってるんですか」


「ああ、知ってるとも。あと、キミのは剣道じゃなくて剣術だろ。なにせ君、強すぎて師範に大会への出場を禁止されていただろう」


そこまで知っているのか。まあ、実を言うとあの一件。天川も俺と同じ師範に剣を習っていたらしいが。みな、天川が剣道の大会で優勝して校長に表彰式をしてもらっていたから俺のほうが剣の腕が上であることは知られてなかった。まあ、自分より弱い人間が強いと錯覚して弱者が天川に群がる。そんな光景を見て俺は少しだけ友人たちに失望してしまったのだ。


「あと、ここだけの話、わたしが君の担当顧問になってボーナスを貰いたいという下世話な欲望を叶えてくれると嬉しいのだが」


「ほんと下世話ですね。俺一人で部活を開設できるんですか?」


「いま、冒険部に参加する生徒を整理している。もちろん無理強いはするつもりはない。ただ、チャンスを逃したくないのは君も一緒なんじゃないか?」


「なんのチャンスがあるんですか」


「そりゃ、君自身が輝くためだよ。君はこんな狭い学校生活で腐っていい人間じゃない。なにかしら結果を残せれば君の自信にも繋がるだろう」


確かに、俺はあまり自分に自信がないのかもしれない。それで困ったことはないけど。自信って必要なんだろうか? なにかしらどこかの分野で結果を残せれば自信がつくものなんだろう。俺は一体どうなりたいんだろうか。同級生をみかいしてやりたい気持ちはちっともないけど……。


「じゃあ、やってみます」


俺は一人目の冒険部の部員になった。

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